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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第三章 『悪の組織ととある抗争』
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対魔砲少女戦線 その2

遅れました(一日遅れ)。

決戦全てとは行きませんでしたが、まぁキリのいいところまで。

戦闘シーンを長く書くのが苦手なので(というか今までの文章も多分脳内補完多めでないと読みにくい部分も多かったと思いますが)、タンパクというかサクサク進めていますので、物足りない方はご勘弁を。


本日3本同時投稿し、これが一本目です。

 ヤクザが戦力を分散させ、それぞれ好き放題の黒タイツへと攻撃を開始し始める頃。

 黒雷はただひとり、まっすぐ春日井夜一郎忠文の……いや、椎名の下へと向かっていた。

 その歩みは一歩一歩を踏み締めるように。助けを求める事すらできなくなった少女の下へと。

 「ハッ! 馬鹿かコイツ、一人で向かってきやがった!」

 「フクロにされりゃご自慢のスーツも守りきれねぇだろうに。お前ら殺っちまえ!」

 その姿を見ていたヤクザ共は、日本では明らかに過剰であろうロケットランチャーや対物ライフルを取り出す。

 マフィアの出迎えにそんなモノを持参するのはどうなのかとも思わないでもないが、護衛としての任務ならやり過ぎという事もない。

 現にこうして、悪の組織に狙われているのだから、むしろ正解だったという事だろう。


 ただひとつ、問題があったとしたら、それは。

 「邪魔をするな」

 その黒雷の一言で、この場のありとあらゆる火薬が暴発した事くらいだろうか。

 「「ぎゃああああああああああああぁぁぁ!!」」

 ある者はロケットランチャーを構える直前に暴発した事でその半身を爆煙に晒し、ある者は手にした拳銃の弾倉が弾け飛び、その手首から先が消失し、またある者はまともに強力な磁気を浴び、あらゆる鉄製品を寄せ集める磁石となって文字通りの針のむしろとなった。

 全てがヴォルト様のおかげである。

 「あの子の歌声は貴重なのよ。なのにあんな風にするなんて、赦されるわけがないわよね?」

 ヴォルト、キレていた!


 今の一撃で大半の雑魚は負傷し、残っているのは銃器等で武装していなかった幹部やらのみ。

 それでも春日井は微動だにせず、相変わらず椅子に座ったまま船を待つ。

 「椎名、やれ」

 「………」

 その一声と同時に椎名が空へと飛び上がり、口を開いた。

 「させるかァ!」

 黒雷が駆け出すと同時に、港まで乗ってきたトラックがその背後へとドリフト停車し、椎名達に対して側面を向ける形で停車する。

 そして荷台が開き、中から現れたのは……。

 「聞いたわよ。アナタ、私の歌を歌うって? なら、私が合わせて乱してあげる!」

 赤黒く不気味なステージと、ヴァーチャルアイドル裏見恋歌と、黒タイツで構成された即席バンドメンバーであった。


 「私の歌に、合わせろォー!」

 椎名が歌い始めるよりも早く、バンドメンバーが大音量で曲を奏で始める。

 それは、裏見恋歌のデビューソング。

 いくら神様に奉納できそうな程の美声を持つ椎名とはいえ、心身共にボロボロの状態で、爆音で流される聞き慣れた曲に抗って歌う事はできない。

 考える力すらも失った彼女は、特に長いこの曲のイントロに対して抵抗できず、口を開いたまま歌い出せずにいた。

 「よおし、大人しくしていてくれよ……!」

 これで歌い出しまで時間を稼げた。今の内に彼女を確保できればベストなのだが。

 「……やっぱ、強そうなのいるよなぁ」

 黒雷の進行を阻むようにして立ち塞がったのは、五人の漢達。

 彼らはどれも霧崎並に屈強そうで、生身であっても問題ない程の強者揃いなのだろう。


 「ワシんとこの兵隊に、思いっきしぶちかましてくれたじゃねェかよォ?」

 「ちょいとツラ貸せ。ボロ雑巾にしてから沈めてやんよ……」

 五人は完全にターゲットを黒雷に絞り、一斉に叩き潰すつもりなのだろう。

 確かに、今回の作戦には戦闘員以上の役職者は動員していないので、黒雷が戦力として最重要だと思われるのも無理はないだろうが。

 「俺達を忘れてもらっちゃあ困るよなぁ?」

 そんな声と同時に、黒雷の隣に並ぶ四人の影。

 今回の作戦へと動員された怪人スーツのシルエット。


 「拙者は、時計サムライ岱武乃介(たいむのすけ)。義によって助太刀致す」

 彼は時計×侍という謎の発想から生まれた怪人スーツ。長針と短針をモチーフにした二刀流で戦う、誇り高き侍。

 「俺はキーボード怪人キボクラ! 一人は俺に任せろ!」

 彼はキーボードをクラッシュする動画を見てしまった博士が勢いで作った怪人スーツ。顔がキーボードなのに、何かを打ち込んでも意味は無いという罠みたいな奴だ。

 「私は怪人コーチャッパ。ふふ、腕がなりますな」

 彼はダージリンか何かのティーパックの精霊。

 「デュワワァァァァァァァン!!」

 彼は……なんだろう。なんであんな鳴き声なんだろう。そもそもなんで宇宙人みたいなスーツなんだろう。……深く追求するのはやめよう。


 「我ら、5人揃って!」

 ティーパックの精霊がなんか叫び出したので、慌ててみんなして整列。

 それぞれが適当なポージングをし、

 『笑うんジャー!!』

 「ふざけてんのかおどれらァ!!」

 戦闘員達で休憩中に考えた謎のポージングをしたらキレられた。いやそりゃキレるか。

 真面目な場面である。


 「ったく増えよってからに。一人一匹じゃあ、とっとと片付けるぞ」

 漢達からしたら、ふざけている大道芸人を張り倒すだけのつもりなのだろう。

 黒雷達からすれば、油断してもらえるのは大変助かる。

 「笑うんジャー、レディ……!」

 「おいコーチャッパ、それは駄目だ。リスペクトはいいがこの面子でやるのは危険過ぎる」

 「……黒雷氏、細かいですなぁ。では適当に……笑うんジャー、戦闘開始!」

 「……そも、何故コーチャッパがリーダーポジションなので御座ろうか……」

 「デュワワァァン……」

 そんなグッダグダの五人が、五人の漢の下へと走った。

 一応真面目な場面である。一応。

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