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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第三章 『悪の組織ととある抗争』
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傭兵業務と思わぬ再会 その2

 「ねぇ君ィ。待ってったらー!」

 ツカサが昼休憩に入ろうと公園へと足を踏み入れた瞬間、どこかで見たことがあるようなナンパ男達と遭遇した。

 男達の数は五人。それがたった一人の女の子を囲おうとしている。

 女の子の方は後ろ姿しか見えないが、恐らくヘッドホンを付けて両手で耳を塞ぐように押さえている事から、ほぼ間違いなく迷惑がっているのだろう。

 女の子は走らない程度に早足ではあるのだが、ナンパ男共はお構い無しに走って追いつき、取り囲む。


 「この後ちょーっとお茶に付き合ってくれるだけでいいからさー!なぁいいだろーう!?」

 ヘッドホンをしてても聞こえるようにか、男達の一人が正面に回って叫ぶようにしている。

 それは最早ナンパではなく恫喝(どうかつ)ではないかと思わないでもないが、彼らはそこまで気が回らないような愚か者共なのだろう。

 初手で好印象を与えられない程度なら初めからナンパなんてしなければいいのに。その辺の機微やらはナンパの経験のないツカサには分からない事であるが、少なくとも間違っているのだけは分かる。


 「()るの?」

 「いや殺しはしないけど。お灸を据えるだけ」

 ギアからヴォルトが頭だけを出して問うてくる。テンションが高いからか普段より言動が物騒だった。

 「そう。頑張ってね」

 「まあ、腹ごなし程度にはね」

 別に見逃してもツカサにとって不利益があるわけでもないし、困っている女の子を助けようだなんて正義感が強いワケでもない。

 しかし、彼らには前科がある。別に犯罪という訳でもないが、彼らがこれから取るであろう手段は、多分ツカサの知る物だという確信がある。


 「いいのかいお嬢さん。俺達は泣く子も黙るダークえんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 「「いやぁぁぁぁぁぁかっちゃぁぁぁぁぁん!?」」

 男が言い切る前に、ツカサは常備している特殊スタン警棒を使い、遠距離から端子を飛ばして電撃を与える。

 今回はマスクもサングラスもしていないが、ヴォルト・ギアに認識阻害機能が付いているので問題ない。

 というかコイツらノリがいいな。


 「だっ誰だこんなマネをするヤツは!?」

 「そうだぞ!かっちゃんは前回隣町であれこれあってトラウマになり掛けているんだ!可哀想だと思わないのか!?」

 「いや、前回と同じくダークエルダーを名乗ろうとしたんだから、やられて当然だという考えに至れよ」

 伸ばした端子を巻き取りつつツカサは言う。

 隣街だから大丈夫だとでも思ったのだろうか。

 確かに普段は管轄外だし、こんなタイミング良く現れる事もないはずだが……コイツらはよほど運が悪いのだろうか?


 「今回はここで引くなら見逃してやってもいい。だがプライドが許さないとでも言うのなら、かかってこい」

 「くっ……覚えていろよ!」

 男達はあっさりと引き、かっちゃんと呼ばれた男を数人で担いで逃げ去っていく。

 まぁ元々そこまで追い詰める気もない。というかダークエルダーの矯正施設から出てきてなお、ナンパにダークエルダーの名を騙ろうとする彼らの熱意はどこから来るのか聞きたいくらいだ。

 もう出会う事もないだろうが。


 「さて……君は大丈夫? ケガとかしてない?」

 ナンパ男達を追い払った後、状況についていけていないのかすっかり立ち止まってしまった少女に声を掛ける。

 恐怖で動けなくなったとか、そういう理由があるならば放っておくのも可哀想だろう。

 ゴタゴタしている内に逃げてくれれば楽だったのに、とも思わないでもないが、状況の把握ができなければ立ち止まってしまうのも致し方ないかもしれない。


 「……えっと……大丈夫?」

 「………」

 さりとて少女は、変わらずヘッドホンを付けたままぼぉっとツカサの方を向いているだけ。

 ツカサの見た感じ、衣服の乱れもないし痛みに表情を歪める様子もない。この分なら問題ないのではないかと思うが、黙って歩き去るタイミングを逸してしまったのは確かだ。

 どうしたもんかと、未だに警棒を握っている手で頭をかこうとした瞬間、不意にツカサの背後から影が落ちる。


 「……!」

 ツカサは咄嗟の判断で警棒から薄いシールドを呼び出し、少女を守るように構える。が、その影は構う事なく拳を振り抜き、シールドを貫通してツカサを殴り飛ばした。

 「ぐがっ……!」

 幸いにも少女の方向には飛ばされずに済んだ。

 だが影の狙いが少女だった場合、こうして距離を離されてしまうのは大変にマズい。

 「伸びろ!」

 受け身を諦め、牽制するように警棒の端子を飛ばす。不安定な体制からの攻撃だったが、未だ定まらぬ視界から見えたのは、幸いにも影の腕に巻き付く端子の姿だ。少女に当たらないかヒヤヒヤが、上手くいったようで何より。


 「痺れろッ」

 直接浴びせれば成人男性を1秒以下で失神させられる電流、それを容赦なく垂れ流す。

 薄いとはいえ、アサルトライフルの銃弾程度なら防ぐシールドを素手で破壊する奴が相手なら遠慮する気は無い。だが……

 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……んだよ、痺れるじゃねぇか」

 影は失神するどころか、端子を繋ぐワイヤーを素手で引きちぎり投げ返してきた。

 「痛てぇ……にゃろォ……!」

 受け身もとれず、投げ返された端子が額に当たり散々のツカサ。

 それでも立ち上がって警棒を構える事をやめない。


 そして、ようやく影の姿を目に捉える。

 それはついこの間、ツカサが黒雷の姿で相対した者。

 流石に今回は上裸ではないが、一目でカタギとは違うと察する事のできる、漢。

 「ウチの娘をそんな棒っきれで脅そうなんていう、どうしようもねぇ小童かと思っていたが……なかなか根性あるじゃねぇか」


 霧崎 龍馬(きりさき りょうま)がそこに居た。


 ……というか、娘……?

 

リアルで転勤騒動があり、ちょっとゴタゴタするので来週はもしかしたら普段通りに上げられないかもしれませんが、御容赦ください。

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