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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第三章 『悪の組織ととある抗争』
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楽しい交渉の場

帰省中暇なので書いてました。普段と違う周期の投稿となりますが、年末最後ということで許してください。

それでは皆さん、2019年もお疲れ様でした。

来年も『悪の組織とその美学』をよろしくお願いします。良いお年を!

 矯正施設の実力の前に陥落したおっさんズから得た情報により、ツカサと戦闘員部隊は現在、とっっても大きな御屋敷へと足を踏み入れていた。

 これより戦闘……ではなく、交渉役の護衛としてである。

 木製のデカい正門を抜けて屋敷を正面に望めば、嫌でも道の両脇を固めるように並ぶ黒服達の姿が目に入る。

 厳ついおっさんにより構成された黒服達は、ただ黙ってツカサ達が通るのを見送る。しかし誰も彼もが眼をギラギラと光らせており、「こっから先でヘタなマネしたら生かしちゃ帰さん」という思念を隠そうともしない。


 「ははは、大丈夫だミスター黒雷。あくまでこの交渉は対等であり、アポイントも取ってある。ただお互いが裏の組織だからね、少しでも威嚇したいのだろうさ」

 そう言って黒雷へと変身しているツカサの肩を叩くのは、本部より交渉役として派遣されてきたという男。短めの黒髪にサングラス、黒のスーツと黒の手袋に革靴と、病的にまで全身を黒に固めたこの男は、自らをネゴシエーター、メジャー・スミスと名乗った。


 「黒の鎧を身に纏う君にはとても親近感が湧く。普段以上に交渉には気合いを入れるとも。……もちろん荒事も得意だからね、有事の際も任せてくれたまえ」

 もはや名前からして荒事しか起きない気もしているが、実績は確かなのだし、他に交渉役ができる人材は支部に居ないため全面的に任せる他ない。

 「信用しますよ、ミスターメジャー」

 絶対この人のコードネームはあのアニメの影響だろうな、なんて事を考えつつ、黒雷達はヤケに広い庭を抜けて、ガチガチのセキュリティで守られた屋敷の中へと歩を進めるのであった。



 ◇



 「……さて、まずはわざわざ遠い所を御足労いただき感謝する。私が副長の桐生(きりゅう)。そしてこちらが我ら総会のトップ、風間会長である」

 「お初にお目にかかる、ミスター風間、ミスター桐生。私はダークエルダー所属のネゴシエーター、メジャー・スミス。この度は……」

 「ああいや、能書きはいい。我らも忙しく、あまり時間を割く事ができないのだ。単刀直入に話をさせていただきたい。……まずは、我らの傘下の組が暴走し、あなた達の支部を襲った件について、改めて謝罪させていただきたい」


 ここは屋敷の最奥。防犯のためか屋敷の中で一重二重にも遠回りさせられた先に辿り着いた、もっとも厳重な部屋である。

 ここでは初老の男性といかにもやり手なスーツの男性、それとSPであろう黒服が大量に待ち構えており、メジャー・スミスと警護として黒雷のみが入室を許され(もちろんボディチェック後である。警護役として黒雷の変身したままの入室は許可された)、他の黒タイツは別室での待機となった。


 挨拶を終え、互いに交渉と講和の話へと続いていくが、ここは割愛としよう。

 話の内容としては、支部を占拠されたダークエルダー側は人的被害もないため、支部の即時解放と多少の謝礼金を貰うのみで和解とする。

 後日にツカサを囲み襲いかかった件については、ツカサが完璧に返り討ちにした事と、所属や目的を聞き出す為に過度な尋問を繰り返した事を理由に、こちらが謝礼金を贈る事で和解となった。

 おっさんズ達はアポイントを取った日に解放し、所属している組の事務所へと送り届けている。オカマッサージと美味しいご飯のお陰で心身共に充実した状態で、5歳は若返ったように見えたとかなんとか。……変な性癖に目覚めていない事を祈るばかりである。


 またその後も、せっかくの(えにし)ならばとお互いに妥協点を探りながら、今後の協力関係に向けて手短ながらも実のある交渉を続けていたのだが。

 「……そういえば。我らの支部を襲い、あそこまで警戒していたのは、ダークエルダーの報復を恐れての事ではありませんね?聞いたところによれば、どこかの組と抗争中だとか」

 と、突然メジャーがぶっこむ。

 「我々の戦闘員スーツの横流し品まで手に入れて、随分と準備万端だった様ですが。逆を言えば、そこまで備えなければならない事態であったという事。……よければ話を聞かせてもらえますか?」

 「ふむ……いいでしょう。話は少し前に遡りますが……」


 副長さんの話を要約すると。

 デブリヘイム事変の際、どこの組織も自衛の為に戦力を割く必要があった。その戦力として、今彼らと敵対しているという組織がとある強力な戦力を登用したというのだ。そしてデブリヘイムの脅威が去った今、その力がシマの近い彼らに向いたとの事。

 その戦力はあまりにも強大で、まるでヒーローのようだと最後にボヤいた。


 「なるほど。そして普段からヒーロー達と対抗している我らの戦力を参考にしようと、こういった暴挙に出たわけですか」

 「何度も言わせてもらうが、今回の一件は我々の総意では無いことをご理解頂きたい」

 「それはもちろん。……それでですね、此度はこちらがご入用のようなので、これからの協力体制の為に手土産として、お渡ししたいと思います」

 そう言ってメジャーが預けていたアタッシュケースを持ってこさせる。届いたそれを開ければ、中には普段ツカサ達が着用しているような、正規品の戦闘用の黒タイツが5着分入っていた。


 「最新版、とはいきませんが。どれも前線での採用経歴がある型です。そしてこちらメンテナンスや、今後の購入についての契約を我々と結んでもらえれば、と」

 「……なるほど。本来の目的はそちらですかミスターメジャー。契約の方は改めて検討させていただくとして、こちらは有難く受け取らせていただきましょう」

 そう、長々と話し込んだが、結局の所はダークエルダー製品の訪問販売が目的であったのだ。

 ダークエルダーはいずれ全日本を支配するとはいえ、その全てを管理する労力は並々ならない。ならば、元よりその地域を治める者達を味方に引き入れればいい。

 そういう理屈で、ダークエルダーの掲げる悪の組織の美学に反しない組織を選び、こうして交渉やら交易やらを結んで回っているのである。


 そうして無事に交渉を終え、場の雰囲気が一瞬和んだ所で、

 「たっ大変だ桐生さん!アイツらが遂にここに攻め込んできやがった!」

 警備に当たっていた黒服の一人が慌てて部屋へと飛び込んできたのだった。

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