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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第三章 『悪の組織ととある抗争』
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悪の組織に暇はない その1

 デブリヘイム『マザー』との決戦の後、ツカサは病院のベッドの上でかれこれ二週間ほど寝転んでいた。

 理由は言わずもがな、決戦時の怪我とヴォルトの超加速による反動である。

 ダークエルダーからは全て有給として処理してくれると言われ、更に多額の手当も出してもらえた。まさに至れり尽くせり。


 途中でお見舞いやら筋トレ男やらが病室に来たりもしたが、前回の入院生活の時と描写は変わらないので、そこは割愛するとして。

 そうこうしている間に、変わり映えのしない入院生活は着々と過ぎていき、ツカサが退院する頃には季節はすでに初夏。何をするにも汗をかくような、そんな時期であった。



 ◇



 「あっちぃ~……」

 退院してから数日後。ツカサは普段活動している町とは別の、“元々はダークエルダーの支配域”であった町へとやってきていた。

 格好はヨレヨレの半袖にジーパン、後は肩下げのカバンに身の回りで必要な持ち物と、その辺のコンビニで買った飲み物のみ。ラフを通り越してちょっとそこのコンビニに程度の軽装であるが、決して観光やらフラっと遊びに立ち寄ったという訳ではない。


 デブリヘイム事変の間に他の組織により奪還された地域の調査、それが今のツカサに課せられた任務である。

 とはいえいきなり抗争を仕掛ける訳ではない為、今はまだダークエルダーの構成員を一般人として数人、町の数ヶ所に配置し情報を集める程度の軽い話だ。

 この町にも小さいながらダークエルダーの支部があったのだが、()()()()()()()()()()()()()()()に何者かに占拠され、現在に至る。

 わざとらしい餌に食い付いた程度の組織ならリハビリに丁度いいと、退院してすぐのツカサに声がかかったのである。


 とはいえ町自体は平和そのもの。デブリヘイムの脅威が過ぎてからまだ間もないからか、大通りですら人通りは少ないが、それもじきに解消されるだろう。

 ただひとつ問題があるとすれば……、

 (どう見てもカタギじゃない、厳つい顔したおっさんばかりが出歩いている事かねぇ……)

 ツカサはこの町に到着して間もないが、町を歩いていて10分かそこら毎に同じようなおっさん達とエンカウントするのはどう見ても異常だろう。

 

 自警団か、地元密着の組の方々が対デブリヘイムの為に出張っているのであればまだ分かる。

 ただ、そういったマトモな組織の動きなら、まず間違いなくダークエルダーは把握しているはずなのだ。

 あらゆる場所から人材を取り込む事に長けた組織であるだけに、ある程度の大きさの組織に情報を横流ししてくれる人材を潜ませておく事なんて造作もない。

 それでもダークエルダーが把握していない動きがあるなら、それが意味する答えはひとつ。

 ダークエルダーが介入するリスクを避けるような組織や、外部に情報を漏らさず作られた新興組織。つまりはダークエルダーの敵。


 (分かりやすくて助かるっちゃ助かるんだけど、一体何の為にこんだけの数のおっさんを出しているのかねぇ……)

 ダークエルダーに本気で対抗したいなら、支部を占拠しそこから更なる方針を決める必要があるはずだ。少なくともこんな小規模の抵抗では簡単に潰されると、彼らも分かっているだろう。

 それか何かしらの秘密兵器があり、それさえあれば勝算があると、そう踏んでいるのか。

 (まぁ、今日は情報を持ち帰るだけって事で)

 その後もツカサは町中を練り歩き、あらゆる場所でおっさん集団と遭遇しながらも、その日は何をするでもなく町を離れた。



 ◇



 「おいあんちゃん。一日中町を練り歩いていたようだが、何か目当ての物でもあったのか?」


 しらなかったのか。 おっさんからは 逃げられない!


 とまぁそんな感じで人気のないところでおっさんズに囲まれているツカサ。あまり怪しまれぬようウィンドウショッピングやら昼食やらを挟んだりもしたのだが、どうやらずっとマークされていたらしい。

 「いや別に、暇だから散歩していただけなんですけど。どうして囲まれなきゃならないんです?」

 強面のおっさんに囲まれて実際は滅茶苦茶怖いのだが、ダークエルダーに入社してから培ってきた演技力で余裕を演じる。

 逆にその余裕が怪しい事も承知の上で、だ。


 「平日昼間に、暇だからってこの暑い中を散歩する阿呆が怪しくないワケねぇだろうが、アァ!?」

 おっさんズの中でも一際若いのが噛み付くかのようにガンを飛ばして来るが、無視。囲まれた時点で分かっていた事だが、これはいくらうまい言い訳を重ねても素直に帰してはくれないだろう。

 「何とか言えゴルァ!?いてこますぞゴルァ!!」

 「必殺先手必勝斬り!」

 「ぎゃあああああああああ!」

 何とか言えと言われたから言った。一緒に剣を振ったのはきっと事故だよ事故。


 「この野郎カタギじゃねぇぞ!?」

 ()()()()()()()()()()を見て、おっさん達が身構える。他にもツッコミどころ満載だろうに、咄嗟に身構えられるというのは流石だと思うが。こういう時は問答無用で襲わねば遅い場合もあるのだ。

 例えば、今みたいに。

 「白狐剣装!」

 おっさんズが懐から出した拳銃やらナイフやらを構える間に、ツカサは手にした剣を天へと掲げ、変身ワードを叫ぶ。


 瞬間、ツカサの手にしていた剣が弾けた。

 ゴテゴテとした、不釣り合いなほどデカい鞘を付けたまま持っていたそれは、今こそ真の姿を現す。

 剣は純白の直剣に。弾けた鞘はツカサを護る鎧に。

 一部の人達には、アムドと言った方が通じるかもしれない。

 そうして出来上がったのは、白狐をモチーフとした鎧姿の剣士。

 「……てめぇ、何モンだ?」

 「残念ながら名は無い。……そうだな、(ハク)とでも呼んでもらおうか」

 そう言ってツカサ……ハクは、手に持った剣を軽く振るう。

 「()()()()()、のだろう?早くかかってこい」


 組織的なおっさんズによる個人への囲い込みが、ヒーロースーツのワンマンアーミーによる暴力へと変わってしまったのである。

 果たして、おっさんズの明日はどっちだ──

デブリヘイム事変で有耶無耶になっていたダークヒーロープロジェクト、その第一弾。

イメージは白狐型の牙〇でしょうか。

他所様からネタをパ……参考にしないと何も書けない自分の想像力と語彙力の無さが恨めしい限りです。

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