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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第二章 『悪の組織と宇宙からの来訪者、デブリヘイムとニューヒーロー』
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大勝利!『マザー』戦その後 その1

 ヘリから投げ出された黒雷はしっかりと仕事をこなし、『マザー』は轟雷(パイルバンカー)の一撃の下に粉砕された。

 体内からの爆圧で周囲には大小様々な肉塊が飛び散り、しかしそのほとんどが地面へと落ちる事無く巨大な火柱の前に焼けて炭へと変わっていく。

 唯一残っているのは蜘蛛の腹の部分だが、それもサラマンダー達が子蜘蛛共々焼き払い、こんがりウェルダンとなり始めている。

 「終わったぁぁぁ……」

 ワープ装置により爆風に巻き込まれる前にヘリへと戻った黒雷は、追加装甲を脱ぎ捨て変身を解除し、完全に脱力しシートに身を沈めている。


 全身を鎧越しとはいえ殴打され、その上神経と筋肉を盛大に酷使した後での大仕事である。疲労困憊もここに極まれり。もうしばらくは立ち上がることすら難儀するだろう。

 「いやいや、よくやってくれたの。取り込まれた少女も救出され、『マザー』も粉砕。負傷者は多いが幸いにも死者はおらん。無茶を承知の作戦ではあったが、皆よくやってくれたわい」


 黒雷……ツカサの前で、カシワギ博士が小さい手でパチパチと拍手をくれる。

 ダークエルダーの幹部として結果を見届けにきただけの彼女からすれば、この結果は上々なのだろう。

 実際に最前線へと出て戦闘していたツカサとしては、戦力を分散しながら前進し、幹部クラスの敵とタイマンを張らなければならない状況というのはもう二度と陥りたくないものであるが。


 「貴方はカッコつけすぎなのよ。打開策なんて他にもあったのに……」

 ツカサの周囲をぐるぐると回りながら、ヴォルトは不機嫌そうに呟く。

 カブトを倒してからヴォルトはずっとこの調子だ。何が気に入らないのか分からないでもないのだが、精霊心はツカサには理解できる範疇ではなさそうなので言われるがままにしている。

 「今度、手回し充電器で私にご馳走なさい。それで今回はそれで勘弁してあげるわ」

 「ありがとう、ヴォルト」

 「ふん……」

 最近会話できるようになってから、このヴォルトのツンデレ具合というかツンツン具合が癖になってきた。控えめに言って可愛い。


 ヘリは一足先に支部へと帰還する。完全ステルスとはいえ、バカ食いする燃料費は少しでも抑えておきたいのだろう。

 地上の作戦も一段落したようだし、戦力にもならないツカサを乗せているだけなので、無理に長居をする必要もないのだ。

 「これから忙しくなるのう……」

 今日の戦闘データやらをチェックしながら、カシワギ博士は気だるそうに嘆息する。

 「何故です?『マザー』も倒したし、デブリヘイムの残党狩りはそこまで忙しいってワケじゃないですよね?」


 それとは別件じゃな、とカシワギは言う。

 「いいか、今回の作戦にワシらダークエルダーと全国のヒーローの一部が注力したんじゃ。つまり、一時的にとはいえ全国的に手薄になったということ」

 博士はノートパソコンを操作すると画面をツカサに向け、見やすくまとめられたリストのような物を見せてくる。

 そこには、いかにも悪そうな名前の組織と大まかな活動地域がまとめられていて。


 「これは、ワシらダークエルダー以外の悪の組織をまとめたリストじゃ。これらはしばらく目立つ活動を控えていたのじゃが、今日この日を境に一斉に動き出すじゃろう」

 悪の組織はこういう時は鼻が効くからの、とカシワギ博士は笑う。

 それはつまり、『マザー』討伐作戦で戦力が秩父に集中した隙を狙って、全国各地の悪の組織達が勢力を盛り返そうと動き出すという事。

 彼らはヒーローの敵であるが、悪の組織同士で協力関係がある訳では無いので、ダークエルダーとも敵対する可能性がある。


 「人類全体の脅威の後は、人間同士の小競り合いじゃ。これはいつの時代になっても変わらんのぅ」

 せっかくデブリヘイムの活動を抑える事ができたのに、今度は人間が相手になるという。

 ツカサは窓から見える景色を呆然の眺めつつ、日常に戻れるのは当分先になりそうだな、と零しながら。

 深い深いため息を吐いて、より深くシートに身を沈めたのであった。

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