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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第二章 『悪の組織と宇宙からの来訪者、デブリヘイムとニューヒーロー』
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決戦!『マザー』を討伐せよ! その5

連続投稿3本目。

 黒雷達がカブトとクワガタを相手に死闘を繰り広げている頃、アベルとブレイヴ・エレメンツ達は異形の怪物でありデブリヘイムの親玉でもある『マザー』と戦い、苦戦を強いられていた。

 (どこだ……どこだ……どこだ……!)

 アベルの鎧には、デブリヘイム探知能力の他に動物の生体反応を嗅ぎ分ける能力がある。

 目で見える範囲でしか効果はないが、それでも瓦礫の中に埋まった人物を探し出したり、地面に潜って攻撃してくるような敵を見つけるような用途に使用できて何かと便利な能力だ。

 だが今は、その能力に全神経を集中させていても見つけられないでいる。


 (もしや、もう……)

 アベル達になる前の彼らが登山中に偶然『マザー』と出逢い、幼馴染を攫われてからもう数年も経っているのだ。

 「生きている」、という確信はいつしか「生きているかも」に変わり、今では「生きていて欲しい」という願望へと変わってしまった。

 そもそも奴らは人間を捕食する。『マザー』が何のためにアベルの幼馴染を攫ったのかは解らないが、用済みとなったなら既に養分とされているだろう。

 (もう、お前はそこに居ないのか……?)

 希望は絶望へ。『マザー』内部を何度も検査した結果、生体反応は『マザー』以外に検知できなかった。

 「おいまだかよアベル!キツいんだって!」

 サラマンダーが叫ぶ。彼女達にはたった二人で巨大な化け物を相手にしてもらっているのだ。

 生死不明の人間よりも、今目の前で生きている人間を優先すべきだろう。


 「悪かった、もう……」

 全て灰にしてくれ、と叫びたかった。だが

 《諦めるのはまだ早いぞ青年!》

 そうインカムに通信が入ると同時に、一台の大型トラックが広場へと乗り込んできた。それは華麗にドリフトをキメるとアベルのすぐ真横に停車する。

 そこから湧くわ湧くわの黒タイツ部隊。彼らはすぐさま機材をトラック周囲に設置し展開する。

 「ダークエルダーの部隊……?」

 《諜報班と戦闘部隊だ。君達のつけた道をまっすぐ突っ切ってきたのさ》

 そして黒タイツ部隊の後から、レッド以外のガンレンジャー達とアーミーΔも登場する。

 《黒雷とライフルレッドは負傷により離脱したが、十分な戦力だろう?》

 だからまだ諦めるな、と誰もが口々にアベルに声を掛ける。

 《我々の部隊でもあらゆる手段で探ってやる。だから、まだまだ粘れよヒーロー?》



 ◇



 決戦は続く。

 『マザー』はゴミ虫が増えたと、煩わしそうに鎌を振るう。だがヒーローにはもちろん、黒タイツ達だって黙ってやられる訳にはいかない。

 「大盾部隊!」

 「「はい喜んでー!」」

 黒タイツが複数人で盾を構える。いくら切れ味の鋭い大鎌だろうと、黒タイツに異常なまでの防御性能を持たせた組織が作った大盾が負けるわけがない。

 甲高い金属音。

 「ど根性ォォォ!」

 「「イィィィィヤァァァァッ!」」

 盾の表面に傷が付いたが、それでも防いだ。

 「槌部隊!」

 「「アラホラサー!!」」

 大槌を持った黒タイツが数人、タイミングを見計らい『マザー』の脚を数本打ち払う。

 硬い殻に傷は付かずとも、打撃による足払いは有効。

 狙い通り、『マザー』はバランスを崩し盛大な土煙を上げ横倒しとなった。

 「「斬撃耐性に打撃は有効、覚えとけぇ!」」


 「コイツら、掛け声は微妙なのにめっちゃ有能だから納得いかねぇ……」

 ずっと『マザー』と戦闘してきたサラマンダーとウンディーネは、現在トラックの後方で休憩中だ。

 『マザー』が逃げぬよう、苦戦しつつも戦況を維持するという難関をこなした為か、二人共目立つ怪我はないが疲労は大きい。

 「そうね。数と財力では、国の半分以上を支配下に置いたダークエルダーに勝てる組織なんてそうは居ないと思う」

 ウンディーネは一息ついたあと、身体の熱を冷まさぬように軽いストレッチを始める。

 最初にビジュアルを見た瞬間は、ダッサイ黒タイツを着て好き放題暴れ回るヘンタイ集団としか思っていなかったが、今となってはその評価も変わってきた。

 ダッサイ黒タイツを着て、有能なのにやってる事が頭おかしいヘンタイ集団、それが今の評価だ。

 ブレイヴ・エレメンツとして活動してからしばらく経つが、ダークエルダーという組織は、悪の組織なのに悪役らしい事をしてこないというか、チグハグな事をしているイメージが強い。

 「まぁそれで今回は助かっているのも事実だし」

 この一件が終われば、また元の敵対関係だ。ならばそう気にしなくてもいいかと、ウンディーネは思考を切り上げる。

 「早く幼馴染さんを見つけてくださいな。全力で戦えないって、結構ストレスなんですよ?」

 物騒な発言をしながら、ウンディーネの視線は常に『マザー』の大鎌を追っている。

 まるで、自身の刃とどちらが鋭いかを見定めるかのように。



 ◇



 アベルの心に、もう焦りはない。

 こんなにも大勢の人達が、アベルのワガママに近いものに協力してくれているのだ。ならば絶対に助けてみせると、先程よりも気力が(みなぎ)ってすらいる。

 (探せ、探せ、探せ。蜘蛛の腹にはいない。百足の胴体にもいない。ならば……!)

 「頭を、頭を集中的に探してみてください!」

 「頭だな、分かった!」

 自分の生体検知では見つからなくても、ダークエルダーの技術なら。

 ダークエルダーの技術では見つからなくても、自分の生命探知なら。

 そうやって全力を振り絞って、そして。

 「頭部に生体反応を見つけた!まだ生きてる!」

 そう黒タイツが叫ぶ。

 「切り落とせばいいんですね?」

 そういってブレイヴ・エレメンツの二人が駆ける。

 「ああ、やってくれ!」

 アベルが泣きそうになりながら、二人を援護するべく前へと出る。


 もしも単によく粘る餌だと思っていたモノが、途端に手のひらを返し自分を狩りにくる立場の者になったとしたら。

 もしもその狩人が、自分を簡単に害せるだけのキバを持っていたとしたら。

 自分が圧倒的強者であると()()()()()()()()()ものは、即座に対応できるだろうか。

 「我が研ぎ澄まされた水刃、受けて絶たれよ!」

 「我が燃え滾りし炎槍、受けて爆ぜろ!」

 ブレイヴ・エレメンツそれぞれの得物が輝き、長大な刃を生成する。

 それは一時的に精霊の力を高め、瞬発的な火力を上げたブレイヴ・エレメンツの必殺技。

 「「炎魔水天斬!!」」

 それは、『マザー』が防御の為に翳した大鎌を易々と切り裂き、一撃で頭部を切り離したのだった。

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