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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第二章 『悪の組織と宇宙からの来訪者、デブリヘイムとニューヒーロー』
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作戦決行の前日 その2

 黒雷達の目の前で、素晴らしい名乗りを上げてくれたガンレンジャーの皆様。

 流石に変身してくれた後であれば黒雷でも知っている戦隊であったので、今度素顔を公開しているヒーロー達のデータを復習しようと思った黒雷である。


 ──引金戦隊ガンレンジャー。

 文字通りの見た通り、銃器をモチーフにした男女五人組の戦隊ヒーローである。全員が銃器のスペシャリストであり、特殊部隊顔負けの戦闘力を誇るとされているガチガチの戦闘集団だ。実際に彼らと敵対していた『マッジョウェル』と呼ばれる組織は、彼らの前に一年ももたずに敗走し、今は残った残党すら姿を見せなくなったという。

 最初期はダークエルダーとも敵対していたのだが、彼らの戦闘力を重くみた上層部は早々に懐柔策へと走り、長い話し合いの末いくつかの条件を付ける事により休戦協定を結んだのだ。

 つまり今は敵でもなければ味方でもない、こちらが監視されあちらが監視している、そんな関係。


 そんな彼らがわざわざ黒雷を名指しで話しかけてくる理由と言えば、そう多くはない。

 「明日の作戦、我々と共に行動するのは貴方達だったな」

 「そういうことだ。今の内に軽い挨拶と、作戦の打ち合わせをと思ってな」

 そう、今日の集会で黒雷達と共に進軍するメンバーに、彼らが加えられていたのだ。これで黒雷のグループには、ブレイヴ・エレメンツに流星装甲アベルにガンレンジャーと、計三組のヒーローがいる事になる。

 一応黒雷達にはブロッサム中佐から事前に説明があり、誰もが納得した上での変更だ。対集団戦に特化した彼らを加える事により、より『マザー』へと辿り着きやすくするための配慮である。


 「なるほど。私やブレイヴ・エレメンツなんかはタイマンの方が得意だから、心強い限りだ。できればサインをお願いしたい」

 トンファーや大槍や刀を扱う者よりも、銃器を使う彼らの方が集団戦に強いのは自明の理であろう。元々が一点突破しかできないチームだったとも言える。あと最後のは欲望が漏れ出た結果である。

 「え?……あ、ああ。いいとも」

 戸惑いながらも五人全員が黒雷の持参した色紙に書いてくれた。言ってみるものだ。

 「感謝する。それで、作戦の方だが……」

 そこで伝えたのは、事前にダークエルダー内で相談していた方針。未だに相手側の戦力が未知数なのが痛いが、これ以外に最善手が思い浮かばなかったのだ。


 「……つまり、敵の防衛網や強敵を相手にした場合に、適切な人数だけを残し他を前進させると言うのだな?」

 「そういう事だ」

 レッドの確認に、黒雷は肯定で返す。

 ここで言った方針とは、簡単に言えば『マザー』へと辿り着く事を優先して戦力を分散しようという話。

 元々は個人やバディで戦ってきた者達だ。所詮は寄せ集めで、土壇場の統率力なんて期待するだけ無駄なので、分散した方が戦いやすいだろうという考えもある。


 「バカな。それだと残った奴がやられた場合、挟み撃ちになるだろ。前線の戦力も低下するし、退路を確保できなきゃ全滅だ」

 「でもでも、『マザー』に逃げるヒマを与えないようにするにはそうするしかないんでしょ?そりゃあ、デブリヘイムがうじゃうじゃ~っているかもだけど、私達なら平気じゃない?」

 案の定、この方針を聞いて素直に納得できるものではないだろう。アニメや特撮なんかでよく見る「ここは任せて先に行け!」を繰り返しやり続けるようなものだ。本来なら、敵の戦力が未知数の時に取るべき手段ではないのは確かだ。

 「しかし、他のヒーロー達も同様に進軍しているのだ。ブロッサム中佐の指揮もあるから、退路は問題ないだろう。あとは個人の力量次第だと思うが、どうかね?」

 黒雷はわざと挑発するかのように、ガンレンジャーの五人を眺める。『あれあれ~?こんなに沢山のヒーローに囲まれているのに、それでも不満なのかなー?』とでも言いたそうな雰囲気を全力で醸し出し、反対する者のプライドを刺激するつもりなのだ。


 「……チッ!分かったよ。怪人に小馬鹿にされてたまるか。持ち場を全滅させて合流すりゃいいだけなんだろ!」

 そしてやすやすと挑発に乗ってくれたブルー。でもブルーと言えばクール枠なのに、そんなにチョロいと先が不安だぞ。

 「……分かった。我々もこの方針に従おう。では優先順位の話だが……」


 こうして着々と準備は整っていく。

 決戦は翌日。集まったヒーロー達と、巨大な悪の組織の力を持って天敵を粉砕する、人類にとって重要な日だ。

 デブリヘイムとの決戦が終われば、またヒーローとしのぎを削る日々に戻る事になるが、それはそれ。

 明日を生きて帰る為に、黒雷達は入念に打ち合わせを続けるのであった。

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