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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第二章 『悪の組織と宇宙からの来訪者、デブリヘイムとニューヒーロー』
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黒雷、復帰後のお仕事 その1

 ツカサが退院してより数日後。

 完全に傷も癒えたツカサは再び黒雷へと変身し、今日こそ打倒ブレイヴ・エレメンツを掲げ意気揚々と町へと進出し……ようとしたのだが、今日のところは事情が違った。

 黒雷へと変身し、町へと進出したのは本当である。きちんと怪人スーツを着たカゲトラと数名の黒タイツ達を引き連れたまではいつも通りだが、何故か人通りの多い駅前の商店街で通行の邪魔にならぬよう、隅っこの方でべーゴマバトルに興じていた。

 「また負けたかぁ!強いな爺ちゃん」

 「ふぉっふぉ、まだまだ若いもんには負けはせんよ。これでも昔は『べーゴマ荒らしの勘太郎』と言われていたんじゃ」

 「鎧とタイツの人達よえー!今度は俺がやるー!」

 地元の住人と楽しそうに遊んでいるが、それでいいのか悪の組織。


 「見つけたぞ、ダークエルダー!」

 しかし、遊んでいるだけでも正義の味方はやってくる。

 自然と開けた人混みの中から悠然と歩いてくる人影はふたつ。一般人に配慮してか、武器はまだ手元にないが。それでも特徴的なシルエットの、ブレイヴ・エレメンツのふたりは、ピリピリとした雰囲気を纏いながら黒雷達の目の前へとやってきた。

 「悪いが今日は名乗る気分じゃない。なんなら今すぐ帰るって言うなら見逃してやるぞ?」

 「なんだ、ヒーローらしからぬセリフじゃないか。何か大事な用事でも控えているのかね?」

 一応悪役らしく挑発するが、黒雷達だって今日は戦いに来たわけではないのだ。やってしまったと思いつつも、態度に出さずに反応を見守る。

 「そうだ、大事な用があるんだよ。だから本当ならお前らに構ってやる余裕なんかないんだ」

 腕を組み不機嫌そうに黒雷達を見るサラマンダー。普段は冷静なイメージのあるウンディーネも、どこか苛立ちを隠しているようにも感じられる。そうまでしてもちゃんと倒しに出てくる辺りは流石ヒーローといったところか。


 「ふん、お前らの用事は分かっている。デブリヘイム探しだろう?」

 手持ちのべーゴマを弄びながら、事も無げに言い放つ。図星だったのか、若干驚いたように目を見開くふたり。無論当てずっぽうではない。数日前から……デブリヘイムの発表があったその日から、このふたりが度々町中を飛び回っているという報告があったからだ。

 「驚くことは無い。我々も同じ要件でお前達に接触するためにここで待っていたのだ」

 「何ィ……?」

 ますます不振がってはいるが、武器を出さないでいる内はまだ話を聞く気はあるのだろう。

 「単刀直入に言おう。君たち二人にはしばらくの間、我々との不戦協定を結んでもらいたい。そして叶うならば、デブリヘイムの……奴らの中心存在たる『マザー』の打倒までの協力を要請したいのだ」

 これこそが今回の要件。ダークエルダーの幹部達が出した、“デブリヘイム討伐におけるヒーローとの共闘作戦”の提案である。


 「……その話、詳しく聞きましょう」

 「お、おいウンディーネ!」

 思案顔であったウンディーネの発言に、思わずだろうが声を荒らげるサラマンダー。続けていい募ろうとしていたが、ウンディーネに手で制されて不満顔で黙り込んだ。

 「でも勘違いしないでください。まずは話を聞くだけです。話を聞いて私達のどちらかが気に食わなければ、容赦なく破談にしますが、構いませんね?」

 「問題ない。我々は至って真面目な考えを持って、今回の作戦を計画している」

 自信満々に頷く黒雷に対し、未だに警戒を緩めないブレイヴ・エレメンツ。しかしそれでも構わないのだ。悪の組織の言葉に簡単に乗せられるようではヒーローとしてはやっていけない。

 「では場所を変えて話をしようか。ここでは少々人通りがあり過ぎる」

 そういって黒雷達はブレイヴ・エレメンツに対し背を向けて歩きだす。無防備な背後を見せて、不意打ちされやしないかと内心ビクビクしながらも、ちゃんと着いてきてくれる二人を振り向きざまに確認して、そっと胸を撫で下ろす面々であった。

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