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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第二章 『悪の組織と宇宙からの来訪者、デブリヘイムとニューヒーロー』
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二人の少女のお見舞い

 ツカサがデブリヘイムに一撃で伸され、カッコ悪く病院に搬送された後。

 目を覚ますと知らない天井で、横には筋トレ馬鹿がいた。筋トレ馬鹿が帰った直後になんと美少女が二人お見舞いへとやってきたのであった。

 以上が前回までのあらすじ。


 「えーっと、無事に逃げられたようで何より?」

 「「……はぁ~……」」

 最初にこの話を出したら、何故か二人同時に呆れたようなため息をつかれてしまった。

 「無事にって、司さんが無事じゃないじゃんか。一人で飛び出しておいて死にかけてるとか、こっちの心臓がもたないよ……」

 突然脱力したように近場の椅子へと座る日向。対する水鏡は、何故か日向の背後に回って優しく肩を揉んであげていた。とても絵になる光景である。

 「(ひなた)はずっと貴方の事を心配していたんですよ?私が連絡を受けた時には、すでに怪物……デブリヘイムでしたか、は倒されて貴方が救急車で運ばれた後でしたけど」

 「あー……うん、申し訳ない。もうちょっと時間を稼ぐつもりだったんだけどね。まさか安全装置を外したスタンロッドも効かないとは思わなかったんだよ」


 実際は目撃者がいなくなった段階で黒雷へと変身し、最高電力で焼き払うつもりでいた。今更言い訳にしかならないだろうが、勝てる算段ではあったのだ。

 「そうじゃないって……はぁ……」

 また再度、今度は何かを諦めたようにため息をつかれた。とはいえツカサにはなんで呆れられているのか分からない。負けは負けであり、死にかけたのは事実なのだから素直に認めて反省しろ、という事だろうか?

 「カッコつけておいて、結局ブレイヴ・エレメンツと流星装甲(メテオナイト)アベルに頼っちゃったもんな。いつか出会えたらお礼を言っておかないと」

 「私達も見かけたら伝えておきますよ。とにかく今は、ゆっくり休んでください」

 「悪いけどそうさせてもらうよ。また元気になったらあの公園へ夕陽を見に行くから」


 この子達とは公園で出会った事の他は数える程しか接点がないが、こうしてお見舞いに来てくれる程度には心配されていたようで、ツカサは嬉しく思う。本来ならきちんと役割をこなすべきだったのだろうが、被害はほとんど出ていないのであれば、このくらいの気持ちでもいいだろう。

 「そうだ、ツカサさん」

 先程までため息をついて俯いた体制のまま、水鏡にされるがままマッサージを受けていた日向が急に頭を上げる。その視線は『こっちが本題だ』と雄弁に語っていて、ツカサは無表情にならざるをえなかった。大体の予想はついているのだ。

 「デブリヘイムについて、聞きたいんだろう?」

 そうツカサが言えば、二人は隠す様子もなく大きく頷く。結局必要とされているのはツカサの持つ情報だったようで、ツカサはぬか喜びした自分を大いに恥じるしかない。


 「そうは言っても、いずれどこかで一般市民向けに情報が出されるだろう。今の俺から君達に伝えられる事は何もないよ」

 「そこをなんとか!オレ達、どうしてもアイツらの話を聞きたいんだ!」

 「私からもお願いします。一度巻き込まれた以上、ずっと無関係でいられるとは思えません。また巻き込まれる前に、少しでも情報を集めたいんです」

 ツカサが無下に断ったのに、二人は何故か異様に食い下がってくる。とはいえ、一般人がデブリヘイムの情報を聞いた所でどうにかできるとは思えない。公式情報として発信するべき内容の取捨選択をするのはツカサではなく、組織のお偉方なのだ。迂闊に広げていいものではない。

 「悪いけどダメだ。俺は下っ端でなんの権限も持っていないし、第一君達に話す理由がない。大人しく公式情報が出るまで待ってくれ」


 美少女に詰め寄られようと、これだけは譲れない。

 今の時代はSNSで一瞬で情報が拡散するのだ。ツカサの持つ情報のどれかひとつだけでも、混乱を招く切っ掛けになりかねない。

 「……じゃあ、これだけは教えてくれ。デブリヘイムってのと、ダークエルダーに繋がりはあるのか?」

 「それはない。ダークエルダーとデブリヘイムは敵対に近い関係にある」

 これだけは教えても問題ないだろう。というか反射的に否定してしまった。

 「ありがとうございます司さん。私達はもう行きますので、どうかお大事に」

 もうこれ以上は聞けないと悟ったか、水鏡が日向を連れ出すようにして病室から出ていく。もちろん丁寧に一礼をしてから、扉もきちんと音を立てずに閉めていったので悪い印象はないのだが。


 「……便利な情報屋か、好奇心旺盛な女学生の話題のネタかねぇ……」

 ずっとそう思われていたように思えてきて、ちょっとナイーヴになってしまうツカサであった。

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