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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
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半神VS半龍の決着

 太鼓の(バチ)を両手に持ち、黒雷は怯えた様子を見せる半龍を見やる。

 当人としてはそこまで変化した覚えなぞないのだが、人の心の力を糧に戦う半龍からすると劇的に変化したように見えるのかもしれない。

 「……まぁ、俺も振り返りたくないんだけどさぁ」

 黒雷はそう呟きつつ、己の背後へと目を向ける。

 一番目立つというか、視界の端に映るのは緑光を放つ光輪だ。それが黒雷の背中へと追従し、控えめな後光を放っている。

 今黒雷が翼をはためかせずとも空を飛べているのはコイツの影響だろう。


 “心配しなくても、慣れてくれば勝手に消えるし自力で出し入れできるようになるわ”

 「……ご心配どうも」

 つまり半神と成った黒雷……いやさツカサは、飛竜鎧装に頼らなくても空を飛べるようになってしまったということ。

 人間離れもここに極まれり、だ。そもそも半分は神様らしいけど。

 “今まではアナタという珈琲にルミナスエネルギーというミルクを入れないように私が蓋をしていた状態だったけれど、今はもうドバドバ入れ込んでカフェオレ状態よ”

 「うーん、ブラックが苦手な俺としたらカフェオレの方が好きなのがなんともだなぁ」


 例えが悪い気がするが、もう元には戻らないのはよく分かった。

 困った事があったら先達である瀧宮 帝を頼ろうと、黒雷は決意を新たに撥を構える。

 その瞬間にビクリと半龍が震えたことから、どうやら最大限に黒雷を警戒してくれているらしい。

 「男児10秒会わざれば刮目して見よ、ってか?」

 たった10秒で何が変わるものか。そう油断して突っ込んできてくれれば楽なものをと黒雷は独りごちて、

 「変わっちゃうんだなぁこれが!」

 半龍が聖光を放った動作に合わせて前へと出た。


 迫る聖光は乱射。黒雷が近寄るのを拒むように、二十三十もの斬撃が飛ぶ。

 本来であればこの聖光乱舞の中を突っ切るのは愚の骨頂。いくら黒雷スーツを着用し“気功”で肉体を強化していようとも、半龍に辿り着く前にみじん切りにされるのがオチだろう。

 だがそれでもと前へと進むのは、己の新たなチカラを試したいが為だ。

 「なんで撥なんかを持っているのか、その理由を今から見せてやるよ!」

 黒雷の持つ撥は、一見するとただの握りやすい棒に過ぎない。

 何の飾り気もなく、ただうっすらと緑光に輝いているだけの棒切れで何が出来るのかと言うと……。


 「ドーン!」

 黒雷は手に持った撥を何も無い空間へと叩きつける。

 普通であれば撥は空を切り、何事も起きないはずなのだが……しかし黒雷の叩きつけた撥は、確かに『何か』を叩いた感触を黒雷へと伝えた。

 それと同時に落雷の音にも似た『ドォン』という音が周囲に響き、それと共に空気の震えが全方位へと広がっていく。

 その空気の波紋は黒雷を切り刻まんと迫る聖光と接触し、触れた先からどんどんと聖光を霧散させていった。

 【グァガ!?】

 「おおっ、凄いなこれっ!」


 その光景を見て驚いた者はふたり。半龍と黒雷である。

 半龍は己の攻撃が理解の及ばないものによって打ち消されたという事実に驚愕し、黒雷は簡単動作でシューティングゲームの『ボム』のような成果を出せた事に驚いていた。

 黒雷の起こした事象とは『物理的なエネルギー以外のエネルギー系攻撃の無力化』。

 早い話がビームや光線技、物理に寄らない炎や水などの属性攻撃すらも波紋によってエネルギーを相殺し、かき消してしまうというものである。

 詳しい原理は分からないが、これが緑光輪の女神様の加護だと言うのであればそういうものかと納得するしかあるまい。

 物理法則に基づいた攻撃に対しては無力である、という欠点はあるものの、破格の防御手段である事に変わりはない。


 「ははははっ! こんな優越感は初めてだ! もう何も怖くない!」

 今のセリフは負けフラグのような気がしつつも、黒雷は聖光を気にせず前へ前へと突き進む。

 半龍といえばその逆で、黒雷を恐れるように後ろへと下がりながら聖光を連打している。

 先程までの防戦一方とは打って変わっての一転攻勢。いかに聖光がノーリスク高リターンの撃ち放題兵器とはいえ、たったの一音で全て消されてはさもありなん。

 半龍は遂に聖光を放つ事を止め、逃亡しようと黒雷に背を向けたが、

 「よう、どこに行こうってんだ?」

 「逃がしませんよ?」

 完全に半龍のマークから外れていたミカヅチとシルフィがその前へと陣取り、とり餅ランチャーを連射しだしたので半龍は対処の為にその場へと留まった。


 留まってしまった。

 「よう、もう逃げられないぞ♪」

 ポンと、半龍の肩を黒雷が叩く。

 多少の距離なんてのは今の黒雷には誤差でしかない。そんな相手に背を向けたのだから、それを隙と言わずなんと言おう。

 半龍が振り向こうとするが、もう何もかもが遅い。

 既に黒雷の拳は半龍の背を叩き、その触れた箇所からパラソルのように広がった緑光が円形の……大きな太鼓の鼓面を描き出す。


 「さぁさ、待ちに待った音楽祭の大トリだ! 演目は太鼓とギターとトランペットの合奏(アンサンブル)! もちろん……」

 一息。

 「お前が太鼓になるんだよ!!」

 緑光を放つ鼓面に向けて黒雷が撥を振るうと、一際大きな音が世界へと轟いた。



 ◇



 ──黒浄雷鼓の型


 緑光輪の女神ルミナスティアーの加護により半神と化した黒雷の使うこの技は、悪しき心を浄化する儀式としての面が強調されている。

 緑光により生成された鼓面は、相手の動きを拘束しつつ大太鼓としての側面も持つ。この面を叩けば叩くほど、拘束された者の心から負の感情を打ち祓い、清らかな心を呼び戻す。

 「祭りだ祭りだ!!」

 その太鼓のリズムは合奏の屋台骨となり、後に続く者達への導き手ともなる。



 ──雷鳴漸・護虎電振


 「ギターを触るのなんてバンド時代以来だが……俺の筋肉なら引けて当たり前!」

 黒雷より貸与された緑光のエレキギター。

 雷瞳ミカヅチの掻き鳴らす旋律は、太鼓のリズムに合わせて浄化のチカラを倍加させる。

 その重苦しくも爽快感のある音が海面を揺らし、広く強く伝播する。



 ──風迅管・烈風吽閃


 「何を隠そう、転校前は吹奏楽部。……まぁ吹くのは久しぶりというだけですが」

 同じく黒雷より貸与された緑光のトランペット。

 奏者であるブレイヴ・シルフィの奏でる旋律は他二人の音よりも遥かに高音で、風の精霊シルフィのチカラも相まって反響・強振をひたすらに繰り返す。


 三者三音。

 どれも違う音なれど、浄化のチカラに相違無し。

 そしてその全てが、現状大太鼓として叩かれている半龍へと向けられたならば。

 【グラァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!?】

 叫べど止まず、力を込めても動けない。

 浄化の合奏、その中心地へと据えられた半龍は逃げる事も暴れる事も叶わずに、ただただ音に身を任せる事しかできない。

 邪気で汚染されていた黒い感情は全て霧散していき、鎧は徐々にだがアウル・ナイトとしての形状を取り戻していく。

 一音、また一音と重ねる度、半龍がもがき苦しむ。


 そして、しばらく続いた演奏の終わり。

 「邪気、退散!!」

 黒雷が曲の〆にと思いっきり強く叩き込んだその音によって、斉藤くんを蝕んでいた邪気は全て彼の身体から抜け落ちた。

 聖剣はその手を離れ、鎧は溶けるようにして消えていく。

 黒雷は慌てて聖剣を回収し、大太鼓の拘束を離れた斉藤くんを抱き上げて脈を確認した。

 少し弱っているようだが、ノアが言うには大事には至っていないらしい。

 「やれやれ……酷いアンコールもあったもんだ」

 この半龍戦は機会人形とは一切関係のない、本来ならば不要だった戦いだった。


 そのせいで人間を辞めさせられたのは業腹だが、どの道遅かれ早かれではあったのだろう。

 「帰りましょう、おふたりとも。皆が待っていますよ」

 夕焼けを背にするシルフィの顔は逆光で見えないが、彼女の頬に少しだけ光が反射したような気がした。

 Q:緑光輪状態ってどんな感じになってるの?

 A:ガン〇ムエク〇アの太〇炉みたいな感じ。


 Q:合奏は何を演奏してたの?

 A:仮面ラ〇ダーディケ〇ドの〇鬼回で化け蟹を倒したアレ。もうあのイメージしかなかったしツカサ好みというのもそういうところ。


 Q:なんで太鼓?

 A:雷神様って雷太鼓のイメージあるでしょう?

   元々太鼓の方はノアの権能によるものなので、半神化したツカサなら使いこなせるという確信の元で貸し出している、が正解。本来ならば攻撃力特化のえげつない武器だった。


 Q:このQ&Aいる?

 A:食玩のガムって美味しいよね。

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