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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
360/385

戦場に響くは歌姫の祈り その1

 キャロルの言い分はこうである。


 ・私、王位継承権を放棄したのにまだ生命を狙われているのは超不服ですわ!

 ・兄様達のこれまでの事や他国に散々迷惑を掛けた件をこの場で謝罪と共に公にしてやりましたわ!

 ・今後は王女の権限を用いて日本への親善大使として派遣された事にして大使館で暮らしますわ!

 再三に渡って言いますが、王位にはもう関わらないので殺そうとしないでくださいまし!

 ・次に変な動きを見せたら、日本が遺憾の意を表明しますわ!

 ・ちなみに私、既に()()()()と仲が良いんですの。聡明な兄様達ならこの意味、分かりますわよね?(多数のヒーローと知己を得たの。次にやったら、“こう”ですわよ?(国家転覆の意))

 ・それはそれとして私、裏の顔として歌手をやっているのでそのまま私のターンを続行しますわ!

 ・私の歌を聴けェー!!


 ……と、いうのが今の現状であり、世界に向けて生中継された情報である。

 このコンサート・フェスティバルの映像は世界各国に向けて発信され、配信サイト等でも高精度翻訳AIの通訳付きで配信されているはずなので、もはやこの火種を消すことは困難だろう。

 もしかしたらキャロルの祖国が大きく傾く可能性もあるが、その辺はもう自業自得だと割り切ってもらうしかない。

 ダークエルダーを敵に回したのが運の尽きだ。


 「しかし、まさかキャロルがあのオリヴィエ・琴里だったとはな……」

 いくら芸能人に疎い黒雷と言えど、オリヴィエ・琴里の事は知っている。

 何せ最近話題になるアニメのオープニング曲の半分程は彼女が歌ってるものなのだから、オタクを自称する者としては無視できない存在なのである。

 まさか誰も、一国の王女様が身分どころか姿形すらも偽って歌手として活動していたなどとは夢にも思うまい。


 「くっくっくっ……。いやー、面白い話だ」

 キャロルがどういう思いで歌手として活動を始めたのかは分からないが、彼女の能力を思えばとても理にかなった方法とも言える。

 問題はキャロルがどこまでを想定しているかだが……。

 「いや、きっと『やりたいからやってるだけ』なんだろうな」

 キャロルがそこまで大それた事を考えるならば、最初から祖国を手に入れてしまえば問題ないのだ。

 彼女が本気にさえなれば、それすらも容易いのだから。


 【空に瞬く星々よ どうか私の想いを彼に届けて】


 前奏が終わり、キャロルの……オリヴィエ・琴里の歌声が戦場に響く。

 美しく、儚く、繊細で……そして何よりも力強いその歌声は、周囲の建物に反響しながらどこまでも蒼穹へと伸びていく。


 【無限に広がる愛(i) 彼だけを掴みたいの】


 それはとある女性がたった一人の男性に向けるラブソング。

 この曲が主題歌として使われているアニメのヒロインが主人公に向けた秘めたる感情の歌、らしい。

 オリヴィエ・琴里が原作を読み込んでから書き上げた歌詞らしく、原作派からもアニメ派からも高評価を得ている。

 アニメではこの曲をBGMに、主人公と敵幹部が壮絶なバトルを繰り広げたのだが、その状況がなんというか今の黒雷達の状況に割と似ており……。

 まぁつまり、

 「テンション上がってきた」

 オタクの血が騒ぎ立てるのである。


 【笑みを零すキミの 優しい瞳に恋をした】


 「いっくぜぇぇぇ!!」

 会場を守る戦い方から一転、黒雷はトンファーを手に一直線にキジへと向かって翔ぶ。

 キジは空中で旋回し、黒雷を迎撃する為に蛇腹剣となっている尾を振った。

 その刃の一枚一枚が自販機程のサイズで、回転鋸刃として黒雷を切り刻もうと迫るが、

 「ンなもん効くかァァァァァ!!」

 雷刃一閃。

 黒雷がトンファーを振るう度に雷の刃が宙を裂き、蛇腹剣を次々に砕いていく。


 【ねぇ振り向いて 私だけを見ていて欲しいの】


 「■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!」

 「何言ってるか分からねぇよ!!」

 キジ型の巨大機械人形(もはや人型ではないが)が怒っているのか驚いているのか、そんなものは黒雷には分からない。

 だけども敵である以上、倒してしまえばそんなのは関係ない。

 「ルミナァァァスッ!! ビィィィィィッム!!」

 黒雷のテンションの高さに連動したのか、ナイトくんに向けた時よりも高出力の光線がキジの装甲を焼いた。

 残念ながらそれだけで撃破とはならなかったが、砲門を幾つか潰せたのは好都合だ。


 【何も見えないくらい(暗い) 寂しさくらい(Cry)】


 【私ひとりで 立ち向かってみせるわ】

 

 【だから見ていて 私のコト】


 【誰よりもすぐ側に居て】


 サビに突入し、黒雷のテンションも上がる。

 キジが慌てたように上空に逃げたので、黒雷はその軌跡を追うように飛翔。

 怪獣と戦闘機のようなサイズ差ではあるが、それでもドッグファイトが成立する程に戦闘力は互角……いや、黒雷の方が上をいっていた。

 「はっはっはっ! その図体で日本の空は狭かろう!」

 トンファーから何条もの雷を放ちつつ、キジの後ろにピッタリとくっ付く。

 ドッグファイトは基本的に相手の背後に付いた方が有利なのだ。いくら蛇腹剣や誘導ミサイルを向けようと、黒雷はその全てを迎撃した上で追い迫る。


 【まだ言葉にできないけれど 誰よりも愛してるわ】


 「『スタートアップ!』」

 黒雷とノアの声が重なる。

 黒雷の切り札である、自身を限界まで強化した状態での10秒間の超高速行動。

 全てがスローに見える中、黒雷へと延ばされた蛇腹剣を掴みロープのように手繰る事で、ものの3秒ほどでキジの背中へと辿り着く事ができた。

 あと7秒も時間がある中で、隙だらけの背を見せられたらやる事はひとつ。


 (このトンファー最新バージョンの実力、見せてやろうじゃないか!)

 今回のアップデートで、黒雷の得物たるトンファーはルミナスエネルギーの変換効率を格段にアップさせたらしい。

 詳しい内容までは黒雷もまだ理解できていないのだが、要するに雷と同じようにルミナスエネルギーを扱えるようになったとのこと。

 だからどうしたのだと言われると、例えば先程から何度も使っている雷を刃とする技、雷刃。これがルミナスエネルギーという強力無比なエネルギーに置換できるワケでして。


 (拡散するビームでは装甲を貫けなくても、エネルギーを凝縮した剣だったらどうかな?)

 そうしてトンファーの先に生成されるのは、緑光を放つ二本のエネルギーブレード。

手にしているだけでジリジリと装甲を焼かれるような、そんな圧を感じる双剣を手に、黒雷は自身の尾をキジの背中へと突き刺して仁王立ちし、身体を安定させる。


 【キ・ラ・メ・ケ !!】


 そこからは双剣による乱舞、乱舞、乱舞。

 伸縮自在のその剣は、振るわれる度にキジ両翼、尾、四肢、首を切り離し、トドメとばかりに胴体を等間隔で輪切りにする。

 そしてラストは、


 【スターレイニディ】(「スターレイニディ」)


 オリヴィエ・琴里に合わせて黒雷も声を出し、拡散高出力ルミナスビームによってバラバラとなったキジのパーツを全て焼き払う。

 雲ひとつない蒼穹の下、赤と緑の光が花火のように広がった。


 空に残ったのは、たった一人の飛竜のみ。

 普段と同じ締切の中で歌詞まで考えようというのがまず辛くてですね……

 でも楽しかったのでオッケーです!(まだ一番)(おそらく次回も歌詞あり)

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