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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第二章 『悪の組織と宇宙からの来訪者、デブリヘイムとニューヒーロー』
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ツカサの初デート その3

 平和だったショッピングモール内に突如、悲鳴と叫び声が響いた。

 化物だ、怪物が出た、等の叫び声をあげながら、人の波は徐々にツカサ達に迫ってくる。

 「怪物?ダークエルダーじゃなくてか?」

 ツカサの隣にいる日向はさっきから困惑顔。それもそうだろうとツカサは思う。何せこの町の住民は今まで、ダークエルダーとブレイヴ・エレメンツの小競り合いしか知らないのだ。

 人為的になのかはまだ分からないが、この町の住民は皆町の外の情報をほとんど仕入れようとしない。その為、ダークエルダー以外の脅威を知らないし知ろうともしなかった。

 そこへ唐突にデブリヘイムという外敵の出現。話の通じぬ、一方的な暴力を振るう相手に住民は為す術もないだろう。


 「日向さん、このまま周りの人と一緒に避難してくれ」

 「司さんは?」

 「ヒーローが来るまで時間を稼ぐ」

 ツカサの取り出したるは簡易変装セット。と言っても見た目は普通のマスクとサングラスなのだが、これは前回の反省を踏まえてカシワギ博士に特注した、認識阻害装置付きの高性能品なのだ。

 日向は何かを探すようにキョロキョロと辺りを見渡した後、軽く頷いてくれる。ここで着いてきたり引き留められたりすると面倒だなとは思っていたが、すんなり納得してもらえるのもそれはそれで何だか拍子抜けだったりする。

 「大丈夫、ヒーローはすぐに来るから。だから気をつけて」

 それだけ言うと日向はすぐに人の波に紛れて見えなくなるが、心配はしてもらえているようでとりあえず安堵する。ツカサもなるべくなら人に嫌われたくない。


 「さて、と」

 素早く変装セットを身につけ、スタンロッドを手に持てば準備は完了。ついでに支部への通報と非常ベルを押すのもやっておく。

 騒ぎに気付いてか、次第に勢いを増して流れてくる人の波に、ツカサは逆らうようにして前へと進む。現場は思っていたよりも近かったようで、すぐに人の波を抜けて視界が開けた。

 そこには昆虫のような姿をした二匹の怪物。多関節の脚、キチキチと音を鳴らす口、どこを見ているのか分からない複眼。これだけの要素を前に、ツカサは相手が本物の外敵、デブリヘイムであると本能的に理解させられる。


 思わず気圧されそうになり、ツカサは慌てて荒く息を吐く。目の前で人を襲う化物が暴れているというのに自分が怯えていては、ミイラ取りがミイラになりかねない。

 あまりにも目撃者が多いため、変身するワケにいかないのが難儀だが、そこは技量でカバーするしかない。


 「大杉8番より各位!」

 あらん限りの大声で、ツカサは叫ぶ。それはダークエルダーの全組員に周知されている隠語。普段は社会に紛れている組員にも徹底して覚えされられる緊急時の連絡手段。

 「非常時プランA!」

 分かる人間が居ればよし。いなければ仕方がない。

 「返事はどうした!?」

 ここまでをワンセット。そして一拍を置いて、


 『応ッ!!』


 先程まで逃げ惑うだけだった人の波の中から、多くの声が届いた。

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