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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
350/385

謳え唱え歌え、その御心のままに その3

 美少女親衛隊と化したハイテンション集団と機械人形の波が衝突する。

 互いに初撃は遠距離砲火。機械人形達は各々の装備を展開し、山なりの砲撃を以て会場を含めた周囲一体を焼け野原にせんとする。

 対して護衛隊側からはお得意のシールドによる迎撃の合間を縫って無数の砲弾とドローンと鋸刃が飛んでいく。

 「オラオラオラァ! 万能ドローン軍団のお通りだァ!!」

 全身黒タイツ改め、会場の護衛という事で警備服(もちろん下には黒タイツ着用)姿の警備隊の中から怒声と共にドローンが飛び、機械人形の頭上から雨のように砂鉄と弾丸を振り撒いていく。


 砂鉄をばら撒く理由なんて簡単、機械人形の関節に挟まれば御の字という思惑と、地に落ちた砂鉄を黒雷と雷瞳ミカヅチがいい様に扱ってくれるからである。

 「砂鉄ホールド!」

 ノアやミソラが撒かれた砂鉄を磁力で掌握し、機械人形達をまとめて拘束、身動きの取れなくなった機械人形に飛行する鋸刃が迫り甲高い音と共に四肢を両断する。

 徹底的にバラバラにされた機械人形は文字通りの鉄くずとなり、砂鉄と鋸刃は次の獲物を探して飛び去っていく。

 また、もがれた機械人形の四肢もまた文字通り同族の足を引っ張る為に四方へと散り、犠牲者を増やしてはまた次へ……。


 これが今回の決戦にてなるべく損耗を少なくするべく編み出された新戦法である。

 どうせ過激派の機械人形は大量生産品でスペックは劣る、ならば十把一絡げとして処理してしまおうというのがコンセプトだ。

 もちろん敵側だって馬鹿ではないだろう。

 ドローンと鋸刃さえ処理してしまえば被害は抑えられると踏んだのか、自ら進んでドローンや鋸刃の前に体を晒し、諸共自爆する機械人形が出始めたのだ。

 また残骸や砂鉄を吸引し己の内に溜め込んだまま戦線を離脱する人形や、ビルの屋上を陣取り遠距離狙撃をする人形など、幅広いバリエーションを揃え始めている。

 いずれこのドローン戦法も効かなくなるだろう。


 「まぁ、こんな玩具だけで全部片付くとは思ってなかったけどさ」

 初手はどちらも相手の出方を伺うような消極的な戦法だった。二手目三手目もおそらくは牽制のようなものだろう。

 きっと本命はその後だ。

 「いいかッ! 我らこそが最硬の砦であり最強の矛であるッ! 群がる有象無象を薙ぎ払い、『会場の外では何事も無かった』事にするのが我らの使命だ!! 総員気張れッッ!」

 『応ッ!!』


 敵は第一陣の残骸を踏み越え、大型の機械人形が複数体、前へと出る。対しコチラは、

 『重装隊、『ハンマーヘッド』は前へ!』

 大隊長の指示により、全身鎧を着込んだ筋肉部隊が先陣に立つ。

 彼らは右腕に大槌、左腕に大盾を装備したフルメタリックな歩兵部隊だ。

 脚部のローラーブーツと背部のジェットパックにより並外れた機動力を誇る、攻防一体を体現した精鋭達。

 彼らは一斉に統一規格のバイザーに赤いモノアイを点灯させ、

 『突撃ィ!』

 待ってましたとばかりに前線へと駆け出した。



 ◇



 「──ミラルル☆ルミクンさん、ありがとうございましたーっ! ……さて、それでは次の方に歌っていただきましょう! お次はこの御方! 芸歴40年歌手歴25年、最近では飼ってるオウムが自身の持ち歌を完コピしたとのウワサですっ!」

 コンサートは淀みなく進行し、数多の有名アーティスト達が持ち歌を披露しては控え席へと戻っていく。

 観客の誰もが熱中し、外の騒乱に気付くことはない。流石は全国のダークエルダー支部からエリートを集めた混合部隊と言ったところだろうか。


 「司さん、大丈夫かな? やっぱりボク達も行った方がいいんじゃ……」

 しかし心配性とはどこにでも居るもので。

 カレンと共に一等席に座る楓は先程からずっと、曲の合間を縫っては話し掛けてくるようになっていた。

 「心配しなくても大丈夫ですよ。むしろ指揮系統を外れた私達がいる方が邪魔になります」

 コンサートに興味のないダークヒーロー達の何人かは会場の防衛に参加しているが、彼らは最初から作戦に組み込まれているからこそだ。

 カレン達が出向いたところで追い返されるのがオチである。


 「でも気になっちゃうじゃん。あれだけの規模で攻めてきてた相手が、キャロルがドームに入った途端に大人しくなるわけないんだしさ」

 「そりゃまあ……」

 あの無尽蔵に湧いてくる機械人形が大人しく引き下がることはないだろうが、この《栄光のドリーム・ラウンド号》も大概おかしいスペックをしているので、あまりカレンは心配していない。

 カレンだって最初の頃は心配していたのだ。会場を取り囲まれて人質を取られたりしたら最終的にはキャロルさんを引き渡すことにならないかと。

 なのでカレンが調べられる範囲でこの船について調べてみたのだが……真っ先に己の目を疑う事になるとは思わなかった。


 どうして全体を覆うシールドの耐久試験と称して轟雷(巨大パイルバンカー)を受け止められるか実験してしまったのか。

 そしてどの場所で受けても“一発は”確実に弾く事ができると立証できたのも頭がおかしい。

 あのパイルバンカーはデブリヘイム『マザー』に対する切札だった筈だ。カレンとて後日映像で確認した程度だが、轟雷は大抵の装甲であれば軽々と貫通できるだけの威力を秘めているハズ。

 本命が打ち込んだ杭による爆破だからとはいえ、だ。


 「多分大丈夫ですよ。むしろ会場内で怪しい動きをしている人を捕まえる方が私達の仕事になるかと」

 これだけヒーローをコンサートに招き入れた理由の半分はそれの筈だ。

 いくらラミィ・エーミルさんが全体を監視しているとはいえ人の目は多い方がいい。

 「それに外で戦っているのは本気のに……黒雷さんです。負けるはずがないでしょう」

 兄の強さは既に並外れている。北海道で見せたあの戦闘力でさえまだ本気ではなかったというのだから、本気になったらどうなる事やら。


 ……しかし、本当の予定外とはどこにでも転がっているもので。

 「………」

 今のカレンの言葉をたまたま聞き取って、無言で席を立った者がいる。

 その人物は曲の真っ最中だというのに、それよりも優先しなくてはならない事があるとばかりに早足で通路へと消えていく。

 「美月……?」

 その様子に何かただならぬ物を感じたのは、隣に座っていた日向 陽だけだった。

 特殊装甲部隊『ハンマーヘッド』

 見た目は某アース・ディフェ〇ス・フ〇ースのところのフェ〇サーとリック・〇ムの中間辺り。

 短時間ならホバー移動も可能で、大跳躍と称して50m位なら垂直跳びもできる。

 必殺技も多様に持っているが、一番派手なのは大槌と盾を合体させた状態から発生させる巨大エネルギーブレードによる斬撃。

 もちろんエネルギーはバカ食いするので長時間の運用は不可能。

 そんなのが今回は30体ほどいる。

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― 新着の感想 ―
黒雷は、、、司さんは場に応じた範囲でしか力をださないならなぁ。めったに見れない全力、見逃すわけにはいかないよね。
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