表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第二章 『悪の組織と宇宙からの来訪者、デブリヘイムとニューヒーロー』
35/385

ツカサの初デート その2

 ツカサと日向陽は、デートと称して平日に特撮映画を朝一番に見に行くという素晴らしい行為を楽しみに映画館が併設されたショッピングモールへとやってきていた。とはいえ時刻はまだ朝8時。基本的にどこも開いてはおらず、通勤の為に行き交うサラリーマン達を横目に見ることしかできないため、二人は先に映画館でチケットを買った後、ファミレスへと直行する。

 ファミレスの中は割と混雑していて、スーツ姿の男性がコーヒーを啜っていたり、学生達が朝食セットを頼んでいたりと様々だ。誰もの表情に余裕が見て取れるのは、ダークエルダーが日々ブラック企業の粛清に勤しんでいるからだろう。

 誰もが日常に追われること無く過ごせる日本を、と目指してきたツカサ達の努力の一端が目に取れて、少し誇らしい気分で席につく。


 「オレはサンドイッチセットで。飲み物はアイスココアをお願いします」

 「俺はこの朝食セットを。飲み物はホットコーヒーで」

 「かしこまりました」

 ささっと注文をし、二人してパンフレットを読み込む。これも映画館へと見に行く醍醐味。まぁ二人して向かい合っておいてこれというのも少々味気ないが、初めてのデートで何をしていいのか分からないツカサにはこれくらいがちょうどいいのかもしれない。


 「……今回登場するレジェンド枠は非公開か」

 「まぁそのネタバレを見ないように初日の朝イチに見に来ているんだし、いいんじゃないかな?」

 会話といえばこの程度。ツカサは映画が楽しみでワクワクし過ぎてむず痒い思いをしているのだが、日向の方も妙にソワソワしているようなのでお互い様なのだろう。

 それから少しして届けられた食事も淡々と片付ければ、もう上映時間まで少し。

 「……行きますか」

 「待ってました」

 もはや会話すらマトモにしなくなった二人は、さっさと劇場へと移動し席につく。

 それから間もなくして上映開始時間となり、二人は黙って映画に魅入るのであった。デートとは?



 ◇



 「……っは~!面白かったー!」

 「平日なのに結構人がいたねぇ。流石に子供は少なかったけど」

 「……司さん。人がいつ何処で映画を観るのかはその人の勝手だ。でもオレ達の場合、何処で映画を観ると思う?」

 「劇場だ。俺達はネタバレをされる事を気にしているはずだ。だから二人が揃わなくても、一人で平日の朝一番に観に行くだろう」

 二人してテンションが上がり、謎の会話すら始める始末。それだけ見応えのある作品であり、長く続いた歴史の積み重ねが生み出す感動なのだ。

 同じ時間に同じ劇場で同じ映画を見ただけの同士達にも、今では奇妙な連帯感が生まれているのではないかと錯覚しそうなほどだ。子供の観るものだから大人が見てはいけない理由はないのだと、同士達の背中が雄弁と語ってくれている。

 ただ、初デートで特撮映画は普通じゃないとだけ追記しておく。間違いなく一般的ではない。


 閑話休題。


 しばらくモールの中を歩きながら、二人は映画の感想を語り合う。あの技は原作ではやらなかったとか、あそこであのBGMはずるいとか。妙なテンションに後押しされてか、ツカサも割と饒舌になっている。同士と直接語り合いたいという願いが叶って、二人して満足したデートである。しかし、

 「さて、昼飯には若干早いけど、司さんはどっか寄りたい所とかある?」

 当初の目的を早々と達成してしまった二人には、次の予定が存在していなかった。

 映画を観て語り合うのが目的であったため、以降の事を何も考えていなかったのだ。かといってこれでハイさようなら、というのも何となく寂しい感じもして、どうしようかとツカサが悩み出したその時。


 「キャーッ!!」

 日常では聞かないであろう大きな悲鳴と、

 「かっ、怪物だぁぁぁ!」

 という酷くテンプレートな叫びが届いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ