続々 夕焼けと、赤・青・黒 その2
明日、オレとデートしようぜ──
突如美少女からそんな事を言われ、さっぱり状況が掴めずフリーズするしかないツカサ。脳内ではオヤジ狩りだの罰ゲームだのといった単語がぐるぐると回っていて取り留めもない。
「ほら陽、やっぱり司さんが理解できずに止まってるじゃない」
「単刀直入の方が分かりやすいって言ったのは美月じゃないか!」
わいのわいのと二人が話している内に、ようやくツカサの頭の整理がつく。
「……つまりアレか、映画を見に行く相方が欲しいって事かな?」
「そうそう、そういう事」
我が意を得たり、と笑う茶髪の……陽と呼ばれた少女を横目に、黒髪の少女美月がツカサへと向き直る。
「陽が言葉足らずでごめんなさい。私達の学校は明日がちょうど創立記念日でおやすみなんです。それで陽は最初私を誘ってくれていたんですけど、私は明日に外せない用事があって……」
「オレ、まだ映画を一人で見に行ったこと無かったからさ。美月がダメなら公開初日は諦めようって思ってたんだ」
「そこで俺がちょうど暇だし見に行くかーって話をしてるから、どうせなら一緒に行こうぜと。それを単刀直入に言った結果が……」
デートの話というわけだ。モテない男の純情ハートには少々手厳しい冗談というか、日本語の使い方よ。
「都合が悪いなら無理強いはしないぜ?ただ、いつもこういう映画に興味のない美月に付き合ってもらってばかりいるのも申し訳ないと思ってたし、同じ趣味の人と映画を見てすぐに感想を言い合えるってどんな感じなんだろーって興味があったって理由もあるけども」
一息。
「オレが、一度司さんとじっくり話してみたいって思ったのもあるんだ」
……ああ、モテない男の悲しい性よ。こうまで言われて断れようか──
「分かった。明日は一緒に映画を見に行こう」
というかどの道断る理由もないのだ。一人で子供向け映画を見に行くと周囲の視線がそのまま苦行となるからなるべく避けたいというのもあるが、、同じ趣味を持つ者同士と映画を見に行くという行為自体に憧れていたのもある。
そして何より美少女から申し入れてきたデートを断れるほどツカサは悟っていない。
「やった!……っと、そういえば」
喜んだかと思えば、彼女はすぐ様ツカサへと向き直る。
「そういえば自己紹介がまだだったなって。オレは日向 陽。そしてこっちが……」
「私は水鏡 美月。司さんが本名を言えないのは分かっていますので、今まで通り司さんと呼ばせてもらいますね」
今日になって初めて、ツカサは二人の本名を聞いた。この公園でしか出会わない関係だったので、ツカサはずっと名前も知らずに過ごしていたのだ。ツカサから聞くのもセクハラっぽくて嫌だったというのもあるが。
「ああ、こう言うのもなんか変な感じがするけど、二人ともよろしく」
こうしてツカサは、夕陽の公園で出会った少女達と連絡先を交換し、翌日にデート(?)をする約束まで取り付け、その日は意気揚々と帰宅したのであった。
ようやく二人の名前を出せました。
二人はツカサの事を司さんと呼びますが、これは身分証代わりに見せた手帳に漢字で書いてあったためです。コードネームとしてのツカサ呼びと区別をつけたいだけなので、読みも一緒ですし深い意味はありません。