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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
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スイーツバイキング その5

 案の定、取り調べは早々に終わった。

 というか取り調べらしい事なぞせずに談笑していただけである。

 「いやー、あと30秒早く蹴散らしてくれたら賭けに勝てたのに。おかげで新人の昼飯だけが豪華になっちまったよ」

 そう言って笑う機動部隊の小隊長を小毬はよく知っている。

 彼はデブリヘイム『マザー』討伐作戦において、真っ先に前線へと走った黒タイツのひとりであり、ノア(当時はまだヴォルトだったが)による神経加速の負荷に耐えられず身動きが取れなくなっていたツカサを回収してくれた人物だからだ。

 支部は一緒だが戦闘員と機動部隊ではなかなか時間が合わず、たまに現場ですれ違っては会釈をする程度の仲となっている。


 「ははは、賭けの為に救援をわざと遅らせたんだから因果応報ってやつですよ」

 もうちょっと早く手助けしてもらえれば、おばちゃん達をあんなに虐めなくて済んだ……それはそれで小毬のフラストレーションが溜まっていたのでチンピラ共をギリギリまでいたぶっていたかもしれないが。

 まぁともかく、現場が混乱している状態で小毬が行っても交通整理の邪魔になるだけなので、しばらくは様子見をしようとなっているワケだ。


 「しかし、その声と姿は慣れんなぁ。事前に誰それだと言われてなければ信じられんのも無理はない」

 小隊長はそう言って隣を見る。そこには賭けに勝ったというコードネーム:ミモリがいて、彼女は何とも言えない顔をしつつ小毬の顔をじっと見つめたり、腕を取って触ったりしている。

 流石の小毬も、女装をしているとはいえ異性に触られるのは気恥しいので辞めてほしいのだが、仮の取り調べ室となっている車両の外には同じ疑問を持った人間が何人もいるらしいので、そちらに絡まれるよりはまだマシだろう。


 「……凄い、ホントに男の人だ。骨格や肉付き、筋肉のクセ、化粧のノリ方、話し方、香水と汗の混ざり方に至るまで……。見た目は完全に女性なのに触覚嗅覚聴覚が全て彼を男だと認識している……」


 「小隊長、この子なんか凄い特技発揮してない?」


 「面白い子だろ? 引き抜いて正解だったな」


 「どれ、後は味覚も……」


 「「すな!」」


 小毬と小隊長で同時ツッコミをしつつ、もうそろそろ人も掃けただろうと小毬は車両から外へと出る。

 「じゃあ、俺はこれから女子会に混ざらないといけないから行くよ」

 取り調べという名の雑談の時に大まかな事情は話であるから不審がられることはないだろうが、自身の女装に一番疑問を持っているのは小毬なので、どうしても言い訳をしたくなる。

 「おう、いつか呑みに行こう。出世頭の幹部さんよ」

 暗に奢れと言っているのだろうが、こういうのは持ちつ持たれつだ。小隊長他数人分程度なら、小毬にも若干の余裕があるだろう。


 「ええっ!? あの人幹部なんですか!? 女装してるのに!!?」

 そんな声を背中に受けつつ、小毬は急いで目的地へと走る。

 目指すはスイーツバイキング。小毬のせいで待たせている人達は多いのだから。



 ◇



 「遅いですよぉ、小毬ちゃん」

 小毬がバイキングの会場へとたどり着いた時、日向達は入口付近で暇そうに待ってくれていた。

 先に入ってくれとも言っておいたのだが、予約を取ったのは小毬なのだし支払いも小毬持ちだ。待つのが道理ではあるのだろう。

 「ごめんなさいね、おまたせしました」

 周囲に日向達をナンパしようかと待ち構えている男達もいたが、表で騒ぎを起こしたやべぇゴスロリが合流したのを察してか全員散らばってくれた。これで心置き無くスイーツバイキングを楽しむ事ができるだろう。


 「では、行きましょうか」

 予約していた名前を告げて、食券機で人数分の食券を購入する。それから簡単な説明を聞き、テーブルへと案内されたら後は自由だ。

 「それじゃあ最初は私が残ってるから、各々好きに動いてね。では解散!」

 その言葉と共に、少女達は好きなように会場に散っていく。

 小毬は先に持ってきていたルイボスティーを片手に席につき、ふぅとひと息ついた。



 ◇



 「ツカ……小毬さん、オジサン臭いですよ?」

 「喧しいわい。……土浦さんも行ってきていいのよ?」

 てっきり全員でワイワイと騒ぎながら一周してくるのかと思いきや、何故か土浦 楓だけは席に残っていた。

 席待ちは小毬だけで十分だというのに、妙な話である。

 「いやぁ……そう、アレですよ。勝手の分からない小毬さんの案内役をですね?」

 「ん~……。まぁ助かる、のかな?」

 スイーツバイキングに案内は必要ないとは思うのだが、好意で言ってくれているのは分かるのでここは素直に甘えよう。

 女装しているとはいえ、女性達の間に合い割って入る度胸は小毬にはない。一人より二人の方が安心感はある。


 「それであの、ちょっと聞きたいんですケド……」

 年下の女の子と話せる話題もなく、ぼーっとルイボスティーを飲んでいた小毬へと、意を決したような面持ちで土浦が話しかけてきた。

 キョロキョロと周りを気にしているので、小毬もなんとなく身を乗り出して耳をそばだてると。

 「つ……小毬さんって、キャロルちゃんの事をどう思ってるんですか……?」

 なんて、よく分からない質問が飛んできた。

 こういう質問は漫画やアニメだと大抵、どちらかに気がある時にするものだ。


 多分、公園でのあの大っぴらなセリフをそういう好意に解釈したのだろうが、小毬から見ればそういう感じでは無いように思う。

 「俺……私はあの子を『面白い護衛対象』としか見ておりませんわ。そもそもあの子の私の事を“王子様プリンス”というのも、命の恩人以上の意味が無いように思いますもの」

 小毬としてはだんだんと彼女に対して好意を抱き始めているのは確かなのだが、それは小毬に女性に対する耐性が無いだけだと思っているので大した誤差ではないだろう。


 「そう、ですか……」

 どこかしらホッとした様子の土浦の態度。もしかして彼女は小毬に対して好意を持っているのではないか、なんていう妄想も浮かんだが、すぐに打ち消す。

 妹の同級生に好かれるだなんて、美少女ゲームにしか有り得ないシチュエーションだろう。

 期待なんてしてはいけない。


 「小毬ちゃん、戻ったぜ」

 そんなタイミングで、会場を回ってきた日向達が戻ってきた。その手には色とりどりの甘味が並べられ、総カロリーなんて考えたくもなくなるような量が机の上に置かれていく。

 「それじゃ、私達も行きましょうか」

 「は~い」

 少しだけ機嫌が良くなった土浦を連れ、小毬もまた会場へと踏み出したのだった。

 しばらくはヒロイン達との会話パートが続きます。

 戦闘描写とかの方が楽しくて、なかなかヒロインとのイベントをこなさないのがこの作品の悪いところなので、稼げるところで稼ぎますよ。


 あとウラバナシの方も更新がありますので、よかったら読んでみてください。

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― 新着の感想 ―
[一言] ツカサさん、ヒロイン候補を増やすだけ増やして後は放置の人だからなぁ、、、こういうところでやっとかないと三十路までマジで結婚できなさそう。(そうなったらイオナさんがもらってくれるかな?)
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