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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第二章 『悪の組織と宇宙からの来訪者、デブリヘイムとニューヒーロー』
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続々 夕焼けと、赤・青・黒 その1

 トウマやカシワギ博士達が喫茶店から出た後少しして、ツカサもまた喫茶店を出た。急に休みを言い渡されてどうしようかなんて、すぐに答えが出るものでもなく。今日のところはとりあえず夕暮れ時が近いからと、気の向くままに丘の上の公園を目指していた。


 「おっ、最近はよく来るな」

 公園までやってくれば、既に先客が二人。一人は短い茶髪を揺らし、一人は長い黒髪を風のまま靡かせる。

 「そりゃね。秘密の多い仕事をしていると、こういう息抜きも大事になるって事さ」

 ツカサはボヤくように言うと、二人と並ぶように夕陽のよく見える場所の手摺へと体重を預ける。後はコンビニのビニール袋から先ほど買ってきた缶ジュースを取り出して二人に渡し、自分はポケットから温かい缶コーヒーを取り出してプルタブを開ければいつもの夕陽鑑賞会の体制だ。


 茶髪の少女の特撮好きが知れてから、ツカサは何度もここを訪れていた。もちろん特撮談義に花を咲かせたいが為である。

 この二人も頻繁に訪れているのか、ツカサが公園に来る日数の内、3回に2回は出会う。そして夕陽を眺めながら、アレは名作だった、昨日の放送は見たか、次回の展開はどうなるのか、等を話すのだ。

 残念ながら黒髪の子はあまり特撮に興味はないのか全然話には入ってきてくれないが、話題が現実にいるヒーローと悪の組織の話となると、今度はこの子が積極的に話すようになる。

 流石のツカサも女子校生を相手にしていたって機密漏洩には気を使って話すので、一般に出回る最先端の情報についてどう考えるか、程度の話になるのだが。

 ちなみに缶ジュースを買ってきているのはツカサの善意である。パシらされているわけではない。歳若い美少女とオタクの道を歩む自分なんかが話してていいのか、なんて卑屈の入った考えはあるだろうが。


 まぁそんな事を何度か繰り返している内に、この夕陽鑑賞会はこの形で落ち着いたのだ。未だにツカサは二人から一人分の距離を離しているが。チキンである。

 「そういや、明日から劇場版が公開になるんだったよな?」

 夕陽を眺めつつ特撮談義をしている内に、茶髪の少女からツカサへと質問がきた。最初はなんの事だが分からなかったツカサも、数秒後には思い至る。ニチアサの現行ヒーロー、ソレの劇場版の公開がもうすぐ始まるという情報が確かに流れていたはず。

 「そっか、そういえば明日だったか……」

 ツカサにとっては好都合だ。ちょうど休みももらって暇を持て余していた身。一緒に特撮映画を見に行ってくれる友人などいなかったため、一人映画には慣れている。


 「合ってたか。いつも初日は平日公開だもんな。司さんはレイトショーで見るのかい?」

 「いや、ちょうど明日は暇というか休みをもらっていてね、ネタバレを見るのも嫌だし朝一番に見に行くとするよ」

 思い出させてくれてありがとう、と言いつつ缶コーヒーを飲み干す。ちょうど夕陽も沈んだところで、今日の夕陽鑑賞会はお開きだろう。夕飯は何にしようか、どこかへ寄ろうかどうか考えながら手摺を離れると、何故か茶髪の少女がツカサの前へと仁王立つ。

 「……えっと……?」

 普段ならこんな感じで解散になっているはず。今日に限って何か気に触ることでも言っただろうかと、記憶を遡ってみても仁王立ちされる原因が分からない。

 「あのさ、司さん……」

 茶髪の少女が口を開く。しかしその表情は怒っているというよりも、どこかいたずらっ子のような雰囲気で。ツカサがチラッと黒髪の少女の方を見ても、そちらは何かを諦めてくれと言うようにように緩く首を振るばかり。そして……



 「明日、オレとデートしようぜ」



 ツカサの思考回路はショート寸前。今すぐログを遡って何がフラグだったのかを探りたいよ。

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