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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
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ダークエルダー幹部会 その3

 「これより、第17回ダークエルダー幹部会を行いたいと思います」

 そうシンイチロウが声を上げると同時、その身を黒い霧へと包む。数秒の後に現れたのは、かつて全国へ投写されたダークエルダー首領の黒い姿。

 誰もが一度は見たことがあるであろう姿であると同時に、人によっては恐怖すら覚えるかもしれない、そんな禍々しさを感じる姿である。

 ……あと、もう第17回なんだぁという不思議な感覚もある。これまで平社員として勤めていた黒雷は、当然のように会議の資料や録画等を見ておらず、自身に必要な情報だけを掻い摘んでいたので幹部会の実態なぞ今の今まで知る由もなかったのだ。


 「……はい、ではこれより放送を開始します。皆様はくれぐれも自身のキャラクターを崩さぬよう、かつ居眠りしそうな時は座席に備えられた『居眠りボタン』を長押ししてください。半透明なロボットアームがそれぞれの体を固定し、起きているように見せる事ができますので。それと……」

 その後も秘書(?)さんの細々とした機能説明があったあと、カウントダウン終了と共にカメラが起動する。

 これでようやく会議開始となるようだ。



 ◇



 「──諸君、お待たせしたな。これより悪の組織ダークエルダーの、第17回幹部会を執り行う。司会進行は彼女、コードネーム:セレナが勤める」

 首領がそう宣うのと同時、秘書(?)が立ち上がって一礼をする。

 「どうも皆さん。今回司会進行役を賜りました、秘書のセレナと申します。初対面の方もいらっしゃいますので、どうかお見知り置きを」

 どうやら首領の秘書さんで合っていたらしく、優雅な一礼の後に眼鏡の位置を直し、円卓の皆を見渡した。

 「さて……議題に入る前にですが、一度皆様に自己紹介をお願いしたいと思います。役職とコードネームのみで結構ですので、カシワギ博士から順にお願い致します」


 宣告の通りに自己紹介の時間を設けてくれるようなので、黒雷は有難く傾聴する。流石に幹部会に出ておいてコードネームを間違えるようなヘマをしたくはない。

 「まずはワシじゃな。ワシはダークエルダー開発部門総責任者、コードネーム:カシワギである。主な担当は兵器開発じゃ。よろしゅう」

 今は美魔女姿であるカシワギ博士は、『ブリンブリン』と擬音が着きそうな程に胸部と臀部を揺らしながら自己紹介を終え、着席する。

 揺らす必要はあったのかは疑問だが、多分ギャグで皆の緊張をほぐそうとしたのだろう。そうに違いない。


 「戦術総司令官、コードネーム:ブロッサム中佐だ」

 「アニマル部隊担当、コードネーム:春風やでぇ。にゃんにゃん♪」

 知っている顔はあっさりと終わり、お次は先刻におっぱいミサイルを磨いていたロボットさんだ。

 最初のインパクトが強過ぎる為に、どう挨拶をするのか気になり過ぎている。

 そんな黒雷の期待を知ってか知らぬか、ロボットさんはすっくと立ち上がり、スカート型スタビライザーの端をちょこっと摘んで英国淑女風の一礼。


 「──ワタクシは元・電子戦部門統括AIにして、今は偉大なるノア様の眷属たる雷の精霊の一体。……名を、鳳凰院カトリーヌと申しますわ」


 (オイオイオイ、ノア!? 俺は何も聞いてないぞ!?)

 黒雷は思わず叫んでしまいそうになる口を必死に噤み、代わりに黒雷の思考を盗聴しているであろうノアへと呼び掛ける。

 てっきりノアの眷属はラミィ・エーミルのみだと思っていたのだが、いつの間にもう一人を作ったというのだ。

 “貴方とは関係のない所で働いているから言う必要が無かっただけよ。ラミィの時にコツは掴んだし、やれるならやってくれと頼んできたのはあの子や組織の側なのだから、私が責められる謂れはないわ”

 報告する義務はないのだと言われたらそれまでだが、パートナーとして一言欲しかったというのが正直なところだ。

 なんだか少し寂しいではないか。


 閑話休題。


 コードネーム:カトリーヌの自己紹介が終わったので、おそらく遅刻しているだろう空席さんが間に合わなければ黒雷の番となる。

 そんなタイミングよく現れることも無いだろうと、黒雷が立ち上がろうとしたその時。空席だったはずの椅子が動き、見えないながらも何かが立ち上がる気配があった。

 心霊現象の類を疑った次の瞬間には、その空間に色が着くようにして一人分のシルエットが浮かび上がる。

 どうやら光学迷彩を使用しており、ずっとその場に居たらしい。

 「隠密部隊代表、コードネーム:イサミ。素顔を見せる事はできないので御容赦を」

 そう宣うコードネーム:イサミ。全身を覆うフードと、顔全体を覆う仮面のせいで性別が分からないが、まぁそれを隠す意味もあるのだろうし、気にしたってしょうがないのだろう。


 さて次だなと立ち上がろうとした所で、何故か同時に残りの御二方も立ち上がる。

 「我らは六星大将。同じ役職ゆえ、私からの挨拶にて纏めさせていただく。私は六星大将の長を務める不動の男坂、そしてこちらから順に、『キング・オブ・リオンハート』と『双竜の黒雷』だ。黒雷殿は先日、ジャスティス白井の乱の際に昇進したばかりである為に不慣れな部分も多い。今回も騒乱の渦中に、顔見せの為にと無理を言って来てもらっている。皆様もその辺りを慮って頂けると幸いである」

 そう、今思えば六星大将とは全員が幹部として扱われているが、ちゃんとまとめ役は設定されているのだ。

 不思議な組織図ではあるのだが、そういう物だと受け入れた方が手っ取り早い。


 不動の男坂の言葉の後にリオンハート共々一礼をし、黒雷は再び席に着く。

 出鼻を挫かれた感はあるが、わざわざ生放送中にボロを出す機会を増やす必要もない。感謝こそすれ、不満に思うことはないのだ。


 そうして挨拶が一巡すると、再びセレナが立ち上がる。

 「……では、最初の議題に入りたいと思います。資料の3ページをご確認ください」

 その言葉と同時、円卓中央部のプロジェクターが稼働し、多角投写による立体3D映像が浮かび上がる。

 どうやら最初はダークエルダーによる侵攻状況の確認から入るらしい。

 黒雷は速攻で落ちかける瞼を懸命に押し広げながらも、初体験となる幹部会の空気がどのような物かと、期待と不安が綯い交ぜになる感覚を味わっていた。


 ちなみに春風師匠は既に眠っていた。さすがお猫様である。

 会議の内容とか盛り上がりに欠けるのは承知しているので、次回からなるべく巻いていきます。


 ……多分、できれば、うん。

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