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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
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ダークエルダー幹部会 その2

 ダークエルダー首領、コードネーム:シンイチロウ。

 その見た目は余りにも普通のサラリーマンであり、マジでどこにでも居るようなおっさんにしか見えない。

 そんな人が会議室の上座に陣取り、ひらひらと手を振っているのである。

 言っちゃなんだが、威厳は……ない。

 「おうカシワギ、お前の席はそっちから見て右側。お前は……黒雷でいいんだな? ならこっち側だ」

 ツカサがどうしたらいいのか迷っていると、そう声が掛かった。そちらを見れば、筋骨隆々の大男が空席を指さし、手招きをしている。


 「ああ、彼奴は六星大将のひとり、不動の男坂じゃな。大将の中でも古参じゃ、指示に従っておけば間違いないわい」

 カシワギ博士はそれだけ言うと、さっさと自分の指定された席へと座ってノートPCを起動し始めた。

 どうやら戦闘系と技術系の幹部で分けているらしく、それならばとツカサも充てられた席へと移動する。

 「ああ待て、座る前に黒雷へと姿を変えておけ。お前は今回、“六星大将の黒雷”としての参加であって、素顔での参加はオススメしない。録画も残るからな」

 不動の男坂さんの言う通り、戦闘職側は皆、怪人スーツの姿での参加のようだ。

 郷に入っては郷に従えと言うので、ツカサも大人しく黒雷へと姿を変えて着席した。



 ◇



 会議の開始にはまだ時間があるようなので、黒雷は挙動不審にならないように注意しながら周囲を見回す。

 まずは会議室。これがまた異様というか、面白い作りになっているようだ。

 内装は悪の組織感を出す為なのかちょっぴり薄暗く見える様になっているが、間接照明が多いだけで目への負担はそれほど大きくない。

 入口はひとつで部屋の奥が壁となっており、外壁側には窓があるが通路側にはない。


 これは防音の為なのか襲撃に備えてなのかは分からないが、とにかく首領の所に行こうとするならば、入口から下っ端を掻き分けて進むか、壁か窓をぶち破るしかないようになっている。

 ダークエルダーが設備投資をケチるとは思えない為、ここを襲う気ならば戦闘機に乗って体当たりを敢行した方が手っ取り早いかもしれない。


 次に机だ。これは何故か円卓となっており、広い会議室の中心に鎮座している。

 複数の長机を繋いだ方が小回りが利くと思うのだが、そこはやはり浪漫を取ったのだろうか。円卓の中心部には3Dプロジェクターみたいな装置も備えられているみたいだし、実用性はある様子。

 掃除や片付けの手間は考えたくない。


 次に今いる面子。

 互いの自己紹介の時間は会議が始まってから作ってもらえるそうなので、今は確認だけだ。

 入口正面の上座に座するのが、我らが悪の組織ダークエルダーの首領であるコードネーム:シンイチロウ。

 時計で言えば12時の場所。というか円卓で席が12席あるのならばこっちの例えの方がわかりやすい。


 改めて、1時の席。

 技術系幹部側の先頭は、ピッチリとしたビジネススーツに身を包んだ、黒髪長髪のメガネ美人。

 コードネームは分からないが、彼女が指先をタクトのように振るうだけで手元の資料が各々の席へと配られたり、冷蔵庫から勝手にペットボトルが飛んできたりしているので、おそらくは念動力者なのだろう。

 確証は持てないが、ジャスティス白井の下にも同じような能力者が大量に居たらしいので、ツカサの知らないところでは超能力者という者はありふれているのかもしれない。


 次に2時の席。

 こちらはカシワギ博士だ。開発部門の最上位だと言っていたので、妥当な席順なのだろう。

 席順がそのまま序列に関わっているかは分からないけど。

 当の本人は撮影用にと持ち込んだ義体のセッティングを終えたのか、その中へと入り込んで八頭身の美魔女へと姿を変えている。流石に幼女のままではコンプライアンス的に問題があったらしい。


 そして3時の席。

 ここに座っていたのはなんとブロッサム中佐だった。

 ビジュアル的にてっきり戦闘職側かと思っていたのだが、この人の主な活動は戦闘指揮や軍略の方面であったと思い出した。

 デブリヘイム事変の時から度々お世話になっているので、後ほど挨拶せねばならない。


 次は5時の席。

 4時、6時の席は未だ空席の為、現状の技術系幹部の中では最後の()()()となる。

 ……正確には一人ではなかった。

 「コラコラ黒雷はん、そんな穴が空くほどにワイの事を見んといてぇな。いくらワイが可愛らしい三毛猫ゆーてもなぁ。……ふあ………うなぁ~ぉ……」

 退屈そうに欠伸を咬み殺すのは、化粧箱の上に鎮座した猫。

 春風という名を持つ、瀧宮 帝の友であるお猫様であった。


 「春風師匠……幹部だったんですか………?」

 あまりの驚愕に、思わず黒雷の身体がカタカタと震えだす。

 かつて、あの春風師匠の率いたアニマル部隊には何度も助けられ、癒されてきたのだ。

 人語を介するお猫様は珍しい存在だとは思っていたが、まさか幹部クラスだったとは。

 過去一番の衝撃かもしれない。


 閑話休題。


 7時の席からは戦闘職側となる。

 そこに座っているのは、なんというか……ロボだ。

 辛うじて人型をしているが、どう見ても中に人間が入っていないだろうという動きをしながら、何故か己の左胸を鷲掴みにして引っ張り出し、右手小指を電動歯ブラシへと変形させて磨いている。

 ……あれ、おっぱいミサイルだよな?

 伝説のおっぱいミサイルが目の前で電動歯ブラシにより磨かれているんだが?

 ──これ以上眺めていると余計に混乱しそうになるので、断念した。


 8時の席は未だ空席。

 しかし資料は配られているので、到着が遅れているだけなのだろう。


 9時の席は黒雷だ。

 語る事はない。


 10時の席。こちらにはライオンの姿を模した怪人スーツを着た人物が座っている。

 この人だけは黒雷も覚えがある。

 全国各地のヒーローと戦い、多くの勝利を収めてきたダークエルダー戦闘部隊のエースオブエース。

 その名も『キング・オブ・リオンハート』。

 六星大将のひとりにして、この人の特集が載っている雑誌は爆売れすると言われている超有名人である。


 そして11時の席は、先程の不動の男坂さん。

 ひとりだけ作画担当が違うレベルで線が濃い人だ。

 一昔前の学ランにボロボロの帽子を被り、何科なのかも分からない草を咥えながら熱心に編みぐるみを編んでいる姿はなんというか……今触れると面倒になりそうなのでスルーした方が良さそうだと思わせる。



 ◇



 なんというか全てが『濃い』状況の中、そろそろという所でシンイチロウが立ち上がり、角張った眼鏡を光らせつつ、言う。


 「……さて、それではそろそろ始めましょうか」


 黒雷にとっての初めての幹部会が、始まる──。

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