表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
311/385

突然のお泊まり会 その3

 お泊まり会初日は、なんとも賑やかな開始となった。

 「誰だよ初日は安泰って言ったの!」

 「ひぃぃ~っ! ごめんなさ~いっ」

 ツカサがハクへと変身しブチギレる傍らで、半泣きになりながらも何やら楽しそうに『メイド流抜刀術』なる怪しげな技を試しているラミィ・エーミルが叫んだ。

 そう、現在時刻は護衛任務初日の夜。

 夕刻に公園での暗殺が失敗したというのに、敵さんは懲りずに道場を襲ってきたのだ。


 しかも初撃に四方からのロケットランチャーと迫撃砲弾による絨毯爆撃を行い、シールドで防がれたのを確認するや否や戦闘ヘリや爆撃機による対地戦闘に切り替える徹底っぷりである。

 もはや国家予算が動いているのを隠そうとすらしない、軍事行動レベルの大盤振る舞いに、ツカサ達も大慌てで迎撃に出たのだが。

 「どんだけ人形持ってんだよ!! リアルドールハウスでも作ろうってのかぁ!?」

 そう思わず叫んでしまうほど、正門前は機械人形でギッチギチ。討ち入りにしたってここまでやらんだろという大盤振る舞いであった。


 「ひぃ~んっ! この人形全部スタンドアローンですぅ! これだけのAIを情報共有なしに独立させてるとか狂気の沙汰ですよぉ!」

 何体斬って捨てようが後から湧いて出てくるようなレベルの機械人形を前に、お得意の回線ジャックが使えず、泣く泣く高圧電流を流して壊す事しかできないラミィ。そんな精霊を尻目に、ツカサは死んだ目をしつつ人形達を斬ってゆく。

 この白狐剣、北海道弾丸旅行前に強化をしたらしいのだが、今のところこの人形共をバターのように斬れる事位しか実感がないのだ。


 斬れるならばそれ以上の火力は必要なく、黙々と斬っているだけで敵側のアクションも変わらないため、気分は完全に無限補充されるインベ〇ダーゲ〇ム。

 つまりは作業ゲーである。

 流石の敵さんも量産型に夕方倒した燕尾服ほどの高性能AIは積めなかったらしく、どいつもこいつも猪突猛進に突っ込んでくるばかり。

 「くそっ、こんな事なら俺もボス討伐の方に行けばよかった……」

 そんな泣き言を漏らしながら、ツカサは他の場所で同じく機械人形達を対処している戦闘狂達を呪った。



 ◇



 ところ変わって修練場。こちらでは現在、貂蝉アンコウと水鏡 真人、そして霧崎の三人が中心となって戦闘を行っていた。

 戦闘とは言っても、相手にしているのは専ら空軍戦力だ。

 一撃離脱を主とした爆撃機は帰還したが、代わりに戦闘ヘリが四機と輸送ヘリが三機が道場上空を陣取り、それぞれ対地ミサイルや自爆ドローンをばら撒きながらすり鉢飛行を続けている。

 彼らの攻撃のほとんどは道場や周囲の家々に設置したシールドにより無効化できているが、断続的な攻撃に対しての継続防御となると、シールド発生装置がオーバーヒートを起こす可能性もある。早めにケリを付けてくれと、ツカサも彼らに頼み込む程に危ういものなのだ。


 ただ、今の彼らに対空攻撃用の設備はなく、単独で飛行を可能とするヒーローでもない。そんな翼を持たないただの人間と魚人が、天空の支配者に勝負を挑もうなど片腹痛い……と、そう思うかもしれないが。

 彼らには彼らのやりようというものがある。

 「奥義! 水竜翔波弾!!」

 まず最初に、真人が動いた。

 真人が思いっきり剣を振るうと、そこから放たれるのは大瀑布を内包した水竜。空を昇る滝。

 その体躯をくねらせ、天空の支配者を一直線に喰らいに行くが、当然の如くヘリは避ける。

 だが、


【あはっ♡ これ楽しいー!】

 お生憎様と、滝の中に居たのは水さえあれば大抵の事を武力で解決できる貂蝉アンコウ。

 彼女が滝の中で身を回す事で得られる結果は、空に対しての全方位散弾攻撃である。

 飛び散る水滴の全てが鋼鉄を貫通する水弾となり、その場に有った戦闘ヘリは、その身に無数の風穴を空けて爆発四散する他ない。

 高度を高く取っており、運良く逃れられた機体も存在したが、

 「けっ! マジで人形が載ってるだけかよ。駆け引きも何もありゃしねぇ」

 そう呟く、水竜に便乗して空へと打ち上げられた霧崎によって爆散させられた。



 ◇



 「たーまーやー!」

 そう呑気に呟く真人は、久しぶりの我が家の危機に内心小躍りしながら、次の獲物はいないかと周囲を見渡す。

 しかし残念な事に、視界に映るのはもはや残骸と成り果てたヘリと無限組手状態の正門前のみ。ゾンビのように群がるだけの人形を斬り続ける趣味はないので、つまりは一段落と同義ということだ。

 「初日から薮をつつくとは見所があるなとは思いましたが……。やはりこちらの戦力が過剰過ぎましたか……?」

 娘に謎の美少女を匿いたいと言われた時にはどうなるものかと思っていたが、この分ならば何度攻められても問題なく処理できるだろう。


 ご近所迷惑なのは間違いないのだが、そこは司さんが謎の権力と財源を振りかざして何とかしてしまったので、周囲の民家に人は残っていない。

 つまりこの辺り一帯は全て、対機械人形用の陣地として運用してしまえているのである。

 「初日がこれで、夜が明けたらあと四日。いやはや、楽しくなりそうですねぇ♪」

 今からでも門下生の数人を正門前の援護に行かせようかとか、そんな事を考えつつ。

 真人は、高高度から難なく降りてきた貂蝉アンコウと霧崎に対して微笑みかけつつ、次なる戦はどのようになるかを想像してワクワクしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ