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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
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突然のお泊まり会 その2

 「こんばんはー」

 お泊まり会の初日の夜。ツカサは集められだけの人員を集め、水鏡の両親が経営する剣術道場へと足を運んでいた。

 「いらっしゃいま、せ……?」

 表門から顔を覗かせた水鏡 美月の顔は、歓迎の笑みから驚きと戸惑いの表情へと切り替わる。

 何せ、ツカサの後ろには今までにない大所帯が並んでいるのだから、さもありなん。

 「やっ、お邪魔するよ」

 と、にこやかに笑うツカサを先頭に。カレン、メイド服姿のラミィ・エーミル、カゲトラ、霧崎 龍馬、椎名、スズ、枢 環、三國 久美、トウマ、貂蝉鮟鱇(アンコウ)、その他護衛役のスーツにサングラスのマッチョ達。

 ツカサ個人のツテで集められる最大限の戦力と、何故か途中で合流してきた幾人が門前に勢揃いしているのである。


 なんで貂蝉アンコウとか三國が丁度いいタイミングで近くに居たのかは分からないし、数日分のお泊まりセットを持参していたのかも分からない。分かりたくない。

 強者の気配に誘われたのか、道場の中から水鏡 真人や泉 星矢まで飛び出してきたので、もはやこれでオールスターだと言わんばかりの戦力が集結した事になる。

 誇張なしに、この戦力が本気を出せばデブリヘイムの巣のひとつくらいは簡単に潰せるだろう。おそろしや。

 「これはこれは、随分とまぁ……。さぁさ、皆さん。立ち話もなんですし、上がってください」

 いち早く正気に戻った(目は何故か笑ってない)真人が中へと誘ってくれたので、一行はぞろぞろと門を潜っていく。


 愉快なお泊まり会の始まりである。



 ◇



 人数が人数なので全員の自己紹介は飛ばすとして。

 最初はツカサが音頭を取り、全員が一箇所に集まっている間に事件のあらましと、今回の合宿の目的であるキャロルの護衛についての話をした。

 王位継承権等々の話はややこしくなるので省いているが、『キャロルがフェスに参加する事を快く思わない連中が敵』であり、『敵からキャロルを守りきる、又は敵組織の壊滅』を目標と設定している。


 期間はフェス当日である五日後まで。それまではこの場に集まった面子の、戦闘要員の内何名かがキャロルの傍に付いて護衛をするという形になる。

 基本的にはツカサやカゲトラといった業務として命じられているメンバーが中心となり、必要に応じて周りのサポートを受けつつ臨機応変に、と言ったところだろうか。


 霧崎は単純な戦力として声を掛けたが、椎名は戦力というよりも女性メンバーへの面通しの意味合いが強い。

 日向達とは同じ学校の生徒とはいえ、椎名本人は保健室登校みたいなものだから接点や面識はなかった。だからこそ、こういう場で縁ができればと思ったのだ。

 年長者の余計なお世話かもしれないが、霧崎だけを誘って椎名を放ったらかしにしておくのも可哀想だったというのもある。

 まぁ、ブレイヴ・エレメンツとしてなら熱海で出会って即興ライブも聴いていたハズなので、邪険にする事はないだろうという算段もあるのだが。


 護衛役のサングラスマッチョ達は拠点(道場)の防衛や外出時の索敵等が主な業務となる。こちらは門前に集まった者達の他にも大量に街に散会しているらしく、ツカサでも人数は把握できていない。

 構成としてはダークエルダーの黒タイツ部隊が半分、国防警察から借りた部隊が半分。

 事件からまだ二時間かそこらしか経ってないというのに、既に燕尾服の組織はテロ組織として認知され、キャロルは国の最重要護衛対象として認定されているらしい。

 青羽 翔達も動員されてはいるが、今回は遊撃隊らしく外回りが主な任務になるのだそうな。流石にこの道場に来ても過剰戦力感は否めないので、当然とも言えるが。


 とにかくこれで、キャロルの護衛と敵を迎え撃つ準備は完了した。

 後は野となれ山となれ、である。



 ◇

 


 「いやー、まさか噂に聞く貂蝉アンコウさんと出会えるとは……」

 【たまには地上の散歩でも、と思ったのだけれど。まさかこんな良き集会があったなんて、ね♡】

 「どうです、これからひとつ手合わせでも」

 【もちろん! むしろそれを楽しみにしていましたわ♡】


 「霧崎、さん? 貴方が師匠の師匠……なんですか?」

 「おう、テメェか勝手に“気功”に目覚めたっていう若ェヤツは。どうだ、いっちょ揉んでやろうか?」

 「はいっ! 是非に!」


 「椎名さん……えっと、下のお名前は?」

 『美穂(みほ)です。椎名 美穂。一応歌恋さんとは同学年になる、かと?』

 「そうなんですね。色々噂は聞いておりましたが、挨拶が遅れまして……」

 『いえいえ、こちらもお兄さんにはお世話になってばかりでして……』


 「どーもどーも、キャロラインさん? 学園教師兼情報屋の三國と申します」

 「あっはい、お世話になりますわ。……今、情報屋と申しましたか?」

 「そーですよ。世界のちょっとしたニュースから、あまり大っぴらには話せない内容まで。鮮度第一の情報屋 三國でございます」

 「……それは、国外の最新情報も取り扱っていらっしゃると?」

 「ふふふ。さぁて、その辺りは対価次第となりまして」

 「聞きたいのは山々なのですが、手持ちが……」

 「情報と情報は“交換”ができるんですよ。便利だと思いませんか?」

 「……なるほど。では少し、アチラの隅っこの方で……」



 ◇



 とまぁ、戦闘狂共は任務なぞそっちのけで早速お相手を見付けては野外の修練場へと飛び出していくし、常識人は挨拶回りで忙しいし、勝手に付いてきた情報屋は早速商売を始めているし……。

 全員で雁首揃えて待ち構える必要もないので、緩いのは大歓迎なのだが。それでも外でドンパチ派手に闘争()られては万が一の時に気付けないのではないかと不安にもなる。

 「大丈夫ですよぉ。私達が常に監視してますから~。街中の機械人形は全て接収しましたしぃ、しばらくは安泰かと?」

 とはラミィ・エーミルの談だが、確かにこの戦力感を見て初日に決戦を挑もうとする者はまずいないだろう。

 あっても暗殺か、空爆か……。その辺りを警戒さえしていれば問題ない気もする。


 「ま、なるようになるか」

 改めて専守防衛は苦手なのだなと再認識しながらも、ツカサは大鍋のカレーを焦がさぬよう、懸命にかき混ぜ続けるのであった。

 ついに椎名の名前がっ!

 ……いや、小話程度には出していたのですがね。あの後もずっと椎名呼びを続けていたのでつい………。

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