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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第八章 『悪の組織とお嬢と歌と』
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日常は秋模様 その1


 ジャスティス白井の騒動も一段落し、喧騒に包まれていた街もようやく静けさを取り戻し始めていた。

 季節は本格的な秋頃を迎え、色付いた落ち葉が簡素な道路を色とりどりに染め上げている。

 そんな中、我らの主人公ツカサはというと……?


 「幹部会……ですか?」


 と、寝耳に水のような情報を聞いて目が点になっていた。

 「そうじゃ。これもまた急に決まったことでな。何せジャスティス白井とその他悪の組織をまとめて壊滅に追い込んでしまったからのう。本部としても計画の変更を余儀なくされとるんじゃよ」

 ツカサの上司であるカシワギ博士ですら弱った表情を見せているのだからそれなりの大事なのだろう。

 ……なのだろうが、ツカサにはひとつ問題点がある。


 「でも俺、まだ幹部に成り立てで何の説明とか受けてないんですけど……?」

 そう、北海道へと文字通り弾丸旅行をしてきたツカサであるが、幹部となったのはミサイルに詰め込まれたそのタイミングである。

 そこから戻ってきて妹といざこざがあってそこから初出勤でこれだ。

 幹部就任に関する書類すら手元に来てないどころか、口頭による説明すら簡単なものしか受けていない。

 幹部とはなんなのか、というレベルで何も分からないのが現状である。


 「まぁその辺はあまり気にせんでもいいわい。君の成った『六星大将』というのは戦闘員の上位みたいなもんじゃし、事務仕事とかは増える業務に含まれとらん。強いだけのボンクラでもなれる職じゃ」

 カシワギ博士は気軽に言うが、ツカサとしては複雑な気持ちになるお言葉だ。

 言うに事欠いてボンクラでもとは……。戦闘職の強さの指標としてある地位ならばそう言われても仕方ないのかもしれないが、少しもにょる。


 「ちなみに君含めてまだ四人しかおらん」

 「それこそ何故!?」

 六星といいつつ四人とは、ヒーローに負けて欠番にでもなったのだろうか。しかし幹部クラスの人物が負けたとあれば、社内でニュースくらいにはなりそうなものだが。

 「そもそも後から増える事を想定しての六枠じゃからなぁ。ほら、全国規模なのに早々に四天王とか決めてしまって、後から総とっかえとかなっても示しがつかんじゃろ?」

 「ああ、そういう……」

 単純に採用人数が六人のところにツカサが合格しただけらしい。人数に応じていちいち役職名を変えると混乱するので、そういう仕様にしたのだろう。


 「今回は今いる幹部全員を招集し、組織としての全体的なプランの話し合いとなる予定なんじゃ。今後の活動にも影響が出るから、議会の生配信やアーカイブ配信、議事録の公表等も行われる。あまり変な事を言うでないぞ?」

 そうカシワギ博士に脅され、ツカサは喋らない事を決意。

 絶対ろくな事にならない。

 基本は首領と内政系の幹部が進行してくれるそうなので、ツカサはどうやら居ることをアピールすればいいだけのようだ。

 居眠りだけはしないように注意しなければ。


 「まぁ、急に決まったものじゃから開催は明後日となっておる。ワシらは朝礼の後に支部を出ても間に合うが、遠方の幹部はリモートになりそうじゃな。久々に楓原(かえではら)くんにも会いたかったんじゃが、間に合うかのう……」

 何やら知らぬ男……女? の名前を呟くカシワギ博士であったが、ツカサとしては上司の交友関係なんて深掘りする気はない。

 何せこの人、ツカサの知る限りでもノアとモルガンと瀧宮 帝とも知り合いなのだ。

 既に厄介さだけならスリーアウトクラス。これ以上深く関わって抜け出せなくなるのは遠慮したい所である。


 「ともかくじゃ、明後日の朝礼後には本部へと出発するから、寝坊するんじゃあないぞぉ?」

ノアもいる手前でそう易々と二度寝なぞできんだろうがな、とカシワギ博士は笑いながらツカサの脇腹をつつく。

 痛くはないがこそばゆいので気功でガードを固めつつ、肝心な事を聞き忘れていたのを思い出した。

 「そういえば博士、ウチの本部って東京のどこにあるんですか?」

 と。


 「え?」

 「え?」

 しばしの沈黙。

 『あれ、そういえば俺(私)も知らない』

 『六本木じゃなかった?』

 『五反田って聞いたけど』

 『新宿だった気がした』

 『違うよ秋葉原の雑居ビルだよ』

 『上野の地下を占領しているんじゃなかったか?』

 『俺が筋肉だ』

 『確か鴻巣のステーキ屋であるメニューを焼き方まで細かく注文すると入れるって話では?』

 『台場から海に行くと入口があるってワ○ップに……』

 『海上施設にヘリで行くのではないのか!?』


 部署内でも情報が錯綜していて、カシワギ博士が不思議そうな顔をしたが、ツカサ以外にも知らない人は多い……というか、なんか部署の大半が知らない感じになっていた。

 日本全国に支部がある会社は大体そうなるとは思うのだが、本社なんて立ち寄る事すらなく、用事もないから住所を調べる理由すらない、というのも珍しくない筈だ。


 「あー……あー、そう。まぁそうじゃよな。ワシだって幹部会以外は出向かんから、他の面子が知らんでも当然なのか……」

 結局正解はどこなのかと皆が固唾を呑んで見守る中、カシワギ博士がモニターへと表示した住所は……。

 「正解は池袋じゃ」

 全員ハズレであった。



 ◇



 とにかく、明後日までは通常業務という事で、ツカサは一日を北海道で起きた一連の出来事についての報告書作りに専念していた。

 あまりにも色んな出来事があって、ノアに手伝って貰いながらようやく仕上がった時には既に定時間際。ラミィ・エーミルの紹介や飛竜鎧装の性能チェックなど色々とやりたい事もあったが、残業する程ではない。

 定時のチャイムと同時にタイムカードを切り、外に出てみればもうすぐ夕焼けの時間となる。


 「そういや、白井の反乱の時に日向さん達も戦ったのかな?」

 夕焼けの公園で会う少女達の正体はブレイヴ・エレメンツであるとツカサは察しているが、それを誰かに報告したりはしていないし、頻繁に連絡を取り合うような仲でもない。

 故に公園へと出向かなければ、彼女達の安否を知ることもできないのがちょっとした難点なのだが、まぁツカサに心配されずとも彼女達ならば何とか潜り抜けているのだろう。

 「心配だったら行ってみればいいじゃない」

 そうノアに促され、反対する理由もないツカサは早速公園へと足を向ける。


 途中、鴉がツカサの方を見て鳴いた気がしたが、見なかった事にした。

 ハプニングなんて歩いてなくても向こうからやってくるのだ。ツカサは既に、諦めの境地に達している。


 ──街の様子は、まだ平和だ。

なろうの仕様が変更され、ちょっと使い難くなった気がします今日この頃。

個人的に一番の難点は書いている時に「原稿用紙○枚分」って表示されなくなった事ですね。あれの6~8枚を毎回の目標にしていたので。

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