そしてそれは、勇気の証 その4
少女の叫びに呼応し、馳せ参じた戦士は5人。
流星装甲アベル、火事場のダンホー、銀騎士アウルナイト、巫女の騎士である泉 星矢、そして自称アレックス。
これほどの戦士達が一堂に会したのは、互いの誤算の結果であった。
ジャスティス白井側は今回の反乱について外部に一切の情報を洩らしていない。流石に予期くらいはされると覚悟はしていたが、まさか自称占い師が開始時刻まで完璧に読んでくるとは思いもしなかったのだ。
そしてヒーローやダークエルダーはジャスティス白井が最終手段として浮遊戦艦を大量投入するとは思いもしていなかった。
自称占い師がこの事態まで読んでいたかは不明だが、少なくとも北海道の一隻を除き、ほか全てに対応できるだけの巨大ロボ持ちの戦隊ヒーロー達を分散させる事に成功していた。
そして、予想以上の早さで地上部隊を壊滅に追いやったヒーロー達は、もちろん余力で残党狩りを始める。
そこで女性が悲鳴なんて上げようものなら、勇み足で敵陣のど真ん中にすら飛び込んでいくのが彼らなのだ。
一人だけは別の理由で駆け付けたのだが、結末に違いは無い。
かくして、圧倒的不利な立場であったサラマンダー達が、たった数人の投入で戦力差をひっくり返すという盤面が出来上がったのである。
◇
「よーし! じゃあどいつもこいつもワンマンアーミーだから俺が仕切るぞ。護衛対象なしで撃破対象だけなんだ、さっさと割り振って逃がさん方がいいだろ?」
一番最後にやってきて、早速仕切ろうとするアレックスを前にしても、サラマンダー達に異論はなかった。
何せ、一人だけ威圧感が別格なのだ。デブリヘイム『マザー』や邪神とも相対してきたサラマンダー達ですら、気圧されるほどに。
「そこの銀甲冑とダンホーは雑魚処理と逃走防止。俺が赤いのと黄色いのを狩る。後は……アベルだっけ? お前と白鶴八相のキミが紫だ。残りは女性陣に任せる。異論がなけりゃあ、行動開始だ」
はい散開! と、アレックスが一度柏手を打った瞬間。様子見の状態で膠着していた戦場が一気に動いた。
まず、アウルナイトとダンホーによるゲニニン共の薙ぎ払いが起きた。一瞬で足を凍らされたゲニニン達に容赦なく訪れる双剣ビーム。デブリヘイム『姫』すらも砕くその光線を前に、ゲニニン達に生存の道は無い。
次に、逃げようとでもしたのか後ろを振り向いた赤帽子と黄マント
がアレックスに捕まり、即座に物陰へと連れ込まれて消息を絶った。……いや、そこに居るのはそうなのだが、一切の物音すら立てないという事はおそらく気絶しているのであろう。
気絶ですめばいいが。
そしてアベルと泉 星矢が同時に攻め入った事により、紫手袋は押されながらも戦場を離れていく。散り散りとなったゲニニン達を追ってアウルナイト達も離れていき、この境内に残ったのはサラマンダー達と青帯とクソ影のみとなった。
「……さぁて、と。助けてもらった分、残りはきちんと働かないとな?」
あれだけの戦力差を、結果だけ見れば4対2まで戻してくれたヒーロー達に感謝しつつ、サラマンダーは再び槍を突き付ける。
「小癪な……。だが、我らがその程度の忍びだと侮って貰っては困るな」
余裕……とはいかないようだが、それでも自信たっぷりのクソ影が笑う。
既に二人ほど見せ場もなくやられているのだが、その自信はどこからくるのであろうか。
「後輩、シャドー・ゴブリンは譲ったるわ。そん代わり負けたら承知せぇへんで?」
「ありがとう先輩。そっちもお気を付けて」
「助太刀、欲しかったら……。いつでも~、呼んでぇ?」
「ふふふ、ありがとうございますほむら先輩。でも私達はもう、負けませんよ」
軽い挨拶を済ませ、サラマンダー達は同時に得物を構える。
クソ影共もようやく腹を括ったのか、足場にしていた高台から降り、同じ目線へと立った。
「村剥ぎが無かろうと、実力の差は埋まらぬ。今日を貴様らが最後に見るお天道様だと思うがいい」
そう言ってクソ影が構えたのは背負っていた忍者刀。華美な装束も一切ない、シンプルなものだ。
「抜かせ。今度こそお前は牢獄行きだ!」
一度は負けたその雪辱を晴らすため、サラマンダーは一直線に地を駆ける。
◇
「お前さんには特に恨みとかないんやけど、まぁ賞金首やし。さっさと投降して貰えると楽になるんやけど?」
忍びのクセに大仰な鎧を身に纏うブルーベルトに対し、セルシウスは油断なく大槌を構えて牽制する。
「ふん……。我が『陰逸』初代首領の鎧を試すのに丁度良い相手よ」
ブルーベルトは怯むことも無く。構える得物は無数に浮かぶ大量のクナイと分銅付きの鎖鎌。
「うわぁ……。あれ、面倒な、タイプ~……」
ほむらもまた小型の飛行ビットを扱う戦法だからこそ、ブルーベルトが口先だけの小物でないとよくわかる。
要するにめちゃくちゃ面倒な相手だ。
「強い相手かて、後輩がリベンジに燃えてる中でウチらだけ負けるワケにはいかん。初っ端から本気でいくでぇ!!」
臆する事なく、セルシウスは大槌を振りかぶり突進した。