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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第六章 『悪の組織と進むべき道』
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ジャスティス白井の反乱、決着 その4

 ツカサと三國による過去語りも終わり、一息ついたところ。

 今回は三國が土浦 楓に対しツカサ達の正体をバラした(すでに勘づいていたかどうかは置いておくとして)件があり、本部の方で処罰を下そうかどうかとの話にまでなりかけたのだが。

 三國はツカサやカレンの幼馴染であり、元々情報屋として協力的であったという点を考慮され不問となった。

 次の問題は現役ヒーローであるブレイヴ・ノーム、土浦 楓の処遇である。



 ◇



 「さて、と。次は土浦さんをどう扱うかなんだけど……」

 なんとか持ち直したツカサは備え付けのお茶を一口呑み(カレンは不機嫌なので入れてくれなかった)、さてどうするとばかりに頭を抱えた。

 何せ、ブレイヴ・エレメンツはダークエルダーと絶賛敵対中のヒーローなのだ。

 構成メンバーであるブレイヴ・サラマンダー、ウンディーネのペアとは幾度も戦闘をし、また幾度も共闘を繰り返してきた。

 時には黒雷として。時にはダークヒーロー:ハクとして。

 ここ半年ほどそのような関係を続けてきたが、未だにツカサの正体がバレていない……ハズだ。


 しかしここに来て、追加メンバーであるノームに正体がバレてしまったというのが現状である。

 実際は誰かさんが口を滑らせたせいなのだが、そこは不問になったので置いておく事にして。

 同じくブレイヴ・エレメンツの追加メンバーであるシルフィはまぁ……正体がカレンなのと、今日の今日までシルフィとしてマトモに活動していないのでノーカンとして。

 「あの~……」

 ここでおずおずと、土浦が手を上げる。

 「バレてなにか……問題が、あるん……です、か?」

 その声は少しの困惑と戸惑いが混じっていながらも、ちょっとだけ「いい考えでは?」という自信が見え隠れしている。

 隠しておくからバレるのだ、だからいっそバラしてしまえばいいのでは、と。

 その声に対しツカサ達三人は、揃って溜息をついて首を振った。


 「え、なんで三人とも!?」

 土浦は驚き、まずカレンの方を向くが、

 「まず、悪の組織とは裏稼業。ヤのつく自由業と似たようなものです。そんな人と付き合いたいとは誰も思わないでしょう?」

 と、謎のお茶を啜りながら嘆息した。

 ついでツカサが、

 「正体バレとは大事なイベントだ。そう簡単な話ではないのだ」

 という見当違いな話をし、最後に三國が、

 「仮面の人物の正体ほど高値が付く。その秘匿性が高ければ高いほどね。それを無料(タダ)で扱おうなどというのは情報屋に対する侮辱に等しいよ?」

 そういう三者三葉の言葉ながら、三人とも反対という結論に至った。


 「なんか納得いかない……」

 それでも不貞腐れるようにしている土浦。

 まぁ、自身の正体バレも気にせず人前で変身した彼女の事だ、互いに正々堂々とすればいいとすら思っていそうだが、そうできない事情だってちゃんとあるのだ。

 「正体バレというのは、今まで有った匿名性が失われるということだ。それはつまり、今後は報復や突然の襲撃に怯え続けなければならず、ましてや今のネット社会では“晒される”という事も危惧し続けなければならない」

 ツカサは部屋に置いてあったホワイトボードに、考えられるメリット・デメリットを書き連ねていく。

 「また家族を危険に晒す可能性も増えるし、いわゆる“有名税”だと言い張って好き勝手やる連中の標的にだってなりかねない。この辺りの『何をされるか分かったもんじゃない』というストレスはヒーローでも悪の組織でも似たようなものだ。迷惑系なんちゃらとかの現状とかたまにニュースになるでしょ。ヤバいよ?」


 ツカサが書き上げたメリットの欄には『話し合いが成立するかも?』や『正々堂々とした勝負になるかもね?』といった疑問符が連なっているのに対し、デメリットの欄には今挙げた問題点な加え、ツカサが特オタとして妄想し続けていた不利益が大量に並べられていく。

 あまりの文量に、土浦が「も、もういいです! 分かりました! 分かりましたから!」と音を上げた程だ。

 

 閑話休題。


 ひとまずお茶でも呑んで落ち着いて、会議は続く。

 「何はともあれ、土浦さんなぁ……」

 そう呟くツカサが眺めるのは、ダークエルダーの組織員専用のアプリ内チャット画面だ。

 そこではコードネームか匿名かを選ぶ形でチャットに参加でき、互いの立場を気にせず会話をできるという売り文句の上で運用されている。

 実際は匿名だらけで某匿名掲示板のような扱いをされているのだが、まぁそれも意図した設計であるのだろう。

 ツカサはそこに『【朗報?】ブレイヴ・ノームが投降してきた【助言求む】』というタイトルでスレッドを立て、隠すところは隠して事のあらましを書き、「対処に困っています。どう対応すれば良いですか?」という文章で〆たのだが。


 「……兄さん、今立てたスレッドに幹部クラスのコードネームが大量に並んでいるようなのですが、これが最初の報告で大丈夫だったのですか?」

 「……俺にはもうどうしようもにい」

 おそらく先程まで『秋の味覚・天ぷらにホタテ醤油 78皿目』というスレッドに居たであろう猛者達が、今度は己の立場を明確にしつつ議論を重ねている。しかも即座にスレッドを幹部権限でクローズドにし、一般員には見せないようにする徹底ぶりだ。

 ……一応、この部屋を借りる際にここの支部長に相談したり、カシワギ博士に連絡を取ったりもしたのだが。

 『もう幹部なんだから自分で考え、自分で決めろ』という答えが返ってくるのみであった。

 誰も彼も異常事態に対し責任を負いたくない一心であろう事がよく分かる。

 スレッドの方の結論も同様になったので、全てはツカサに一任となった、らしい……。


 「どうしろってんだ!」

 ツカサは頭を掻き毟り、乱暴に煎餅を噛み砕く。

 ダークエルダーの今後を左右しかねない問題だというのに、「そうじゃツカサくん。キミの黒雷なんじゃが、今回の事件から幹部として“六星大将”と“双竜”の二つ名を名乗ってヨシとなったので、とりあえず華々しい初陣を飾ってくれい」という一言と辞令のみで送り出されたなんちゃって幹部に背負わせるとは。

 悪を名乗るに相応しい酷い組織である。


 「えっと……。もしかして、ボクが投降したのってかなり迷惑だった?」

 ツカサの苦悩する姿を見て、薄々感じていたであろう疑問を投げてくる土浦。

 「もちろん!」

 と、ツカサが元気よく返事をしてカレンからキツいボディブローを受けたが、そう答えたくなる気持ちも分かって欲しい。

 「ツカサはね、アンタの待遇と今後の扱いについて苦悩しているのさ」

 三國が代弁してくれた通り、問題点はそこなのだ。


 サラマンダーとウンディーネがヒーローとしてダークエルダーと敵対している関係上、表立ってノームとシルフィをこちらの構成員として運用するワケにはいかない。

 かといってそのままヒーロー側として活動されると、ダークエルダーには不利益しかもたらされない。

 スパイのように扱うにしても、カレンほど割り切っていればよいが、今の土浦ではどこかできっとボロを出すだろう。

 そうなったら真っ先に矛先が向くのは、間違いなくツカサだ。

 せっかく美少女達と知り合いになれたというのに、嫌われるのは一瞬である。

 信頼関係は積み上げ難く、崩すに易し。いずれはバレるにしても、それは()()()()()()()


 どうしようかどうしようかと悩んでいても答えは出ず。

 せっかくの北海道だというのに、滞在時間が延びる一方で何一つ遊べていないのはどういう事だ。

 「よぉっし!」

 ツカサはようやく決心をつけ、椅子を蹴飛ばすように立ち上がると、スマホを操作し電話をかける。


 「あ、もしもし? オレオレ。……はいはい、詐欺だよ詐欺。それでスズさんよ、カシワギ博士から話は聞いてる? ………そうそう、ノームの件。その件で折り入って頼みがあって。…………分かった分かった、今度ケーキバイキングの無料券あげるからさ。……おう、ありがと。で、誓約書のテンプレートを手直ししてPDF化したのを送って欲しいんだ。内容は……」

 と、ツカサ唯一の部下であるスズへと丸投げする形で誓約書を準備させ、今日のところは保留にするという結論に至ったのだ。

 度重なる戦闘の後で、外は既に夕方である。


 このまま彼女達を束縛しておくのも酷だろう……というか、ツカサが既に辛いので。今日はもう“仕事”はお終いとする。

 そうしたらあとは。

 「俺の奢りで呑みに行くぞー!」

 「「「おー!」」」

 ストレス発散の為、夜の街へと繰り出すことにした。

 細かい話を長々やっても、文字数は増えますが物語は停滞する一方なので。さっさと切って話を進める事にしまぁす!!

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