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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第六章 『悪の組織と進むべき道』
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熱戦! ジャスティス白井の双奏天使 その4

 ──機械天使と竜、天使のような男と飛竜のような男。


 この図式は先程までとはなんら変化していないのだが、組み合わせが変化している事でその形勢は逆転していた。

 まず、機械天使と竜が広い空を行く。

 天地無用と言わんばかりに、互いに光線を交差させながら。

 その点はさほど変化していないのだが、変わったのは竜の出力だ。

 ミカヅチの時は全てにおいて天使に劣っていたのだが、今では全てを以て上をいく。

 赫い閃光と緑光を纏う電撃のぶつかり合いでは、相殺するどころか閃光を貫いた電撃がライフルの銃身を貫通して破砕し。

 メイスとドリルの激突では、ドリルの回転を前にメイスは為す術なく弾かれ、その隙にパイルバンカーがメイスの柄を打って使用不能へと陥らせ。

 拳はそもそも打ち合う事すらせずに片手であしらう始末。


 「なんなんだよ……! 五花から逃げてきた雑魚のクセに……!」

 これにはバーバリアンを駆るフリースタイル三日月も、戸惑いと苛立ちを隠せずに憤る。

 先程までは自身が圧倒的強者であったはずなのに、何故中身が代わった程度でこれほど差が開くのかと。

 だが、まず前提が間違っている時点で勝ち目などないのだ。

 「逃げてきた? ……ふふっ、そうか。そう見えていたのか」

 黒雷は笑う。如何に人智を超えた機械天使などという存在を使役していようと、中に乗っているのは人間なのだ。

 既にこのダークギア・ソルジャー・ドラゴンの底を見たつもりになっていたのなら、そりゃあ弱いはずだろうと。


 「私は勝てないから逃げてきたのではない。……私が本気を出したら、あの男を消し炭にするしかなくなるから仕方なく後退したのだ」

 黒雷本人は連戦続きで疲弊しているとはいえ、エネルギー源であるルミナストーンと大精霊ノアはどちらも健在。

 やろうと思えば、あの翼の上からでもビーム一発で跡形もなく消し去る事ができただろうが、それをしなかったのは単純に後味が悪いから以外に理由はない。

 ……まぁ、能力が不明でわからん殺しをされる可能性があるので、その点で言えば逃げたとも言えるが、それはそれ。

 なので仕方なく近接戦闘で無力化しようとしたのに、アームストロング五花が無駄に投げキャラなせいで手間取ったからミカヅチと交代した方が手っ取り早いと判断した。それだけなのだ。


 「まぁ、雑魚だと侮ってくれた事には礼を言うよ。おかげでこんなにも簡単に勝てそうなのだから」

 脅威であったライフルも、単純だが恐ろしいメイスも、そのどちらも叩き折って天使は今、無手だ。

 もしかしたら何か隠された能力があるのかもしれないが、それならそれでさっさと見せて退場して欲しい。というのも……。

 『いいかねツカサくん。くれぐれも……くれぐれも壊しすぎたりせんでくれよ?』

 “そう、出来るならば鹵獲が望ましいわ。最悪はコックピットのみをバンカーで打ち貫いてもいいと思うのよ。どうツカサ、やれる?”

 と、なんだか分からないがカシワギ博士とノアにより、とにかく物凄い圧をかけられていた。


 「なんなんだよぅ、なんでそんなに詰めてくるんだよぉ……」

 ふたりのあまりの豹変ぶりに、黒雷は何がふたりをここまでさせるのか若干引きつつ恐慄いていた。

 何せ黒雷がダークギア・ソルジャー・ドラゴンに乗り込んでからずっとこの調子なのである。

 壊しすぎるな、逃がすな捕まえろ、データを取れ、最悪はドラゴンの方が全壊したって構わないから機械天使だけは逃すな……。そういう圧をずっと呪詛のように浴びせられていたら、流石の黒雷もうんざりするというもの。


 “いい、ツカサ”

 『あれの回収は重要な任務じゃ』

 “組織全体……いいえ、人類にとって必要な事なの”

 『じゃから最悪は……四肢切断(ダルマ)までは良しとしよう。最悪じゃぞ?』

 “それ以上の損壊は罰則を与えるわ。もし逃がしたら見つけ出すまで帰宅すら許さないからそのつもりで”

 『分かったら返事をしなさい。やれるかの、ツカサくん?』

 “やれるわよね、ツカサ?”


 「なんなんだよ怖いよ重たいよぉぉぉぉぉ!!?」

 黒雷の絶叫はカシワギ博士とノアにしか聞こえないまま、ただただスルーされて虚空へと消える。

 形勢は絶対的優位なのに、精神面では一切の余裕がないこの戦闘の明日はどっちだ。



 ◇



 一方その頃、アームストロング五花と雷瞳ミカヅチの取っ組み合いは長期戦となっていた。

 今はオルガノートの表層を一画、丸々リングとして扱い、互いに投げ技の応酬を繰り広げており、観客がいないのが勿体ないと感じてしまうほど白熱とした試合展開となりつつある。

 「感傷に浸らせろよクソ野郎!」

 「そんな尺はないぞ天使マン!」

 「ざけんな微妙マッチョ!」

 「言ったな白髪イサド中毒!」

 互いに謎の罵倒を浴びせながらのプロレス技の掛け合いは速度をますばかりなのだが、怪人スーツを着ているミカヅチと比べ、アームストロング五花は一応生身。徐々にではあるが疲労具合に差が生まれ始めていて、15種ほどの技を互いに掛け合った時点でアームストロング五花の息は上がってきていた。


 相手の視線の先へと瞬間移動できるという権能も取っ組み合いでは意味はなく、翼による防御も逆に関節技の起点にされてしまう始末。

 黒雷相手にはすこぶる相性の良かったアームストロング五花も、対人格闘術に長けたミカヅチ相手では分が悪いという話であった。

 「しかし、頑丈なヤツだな……」

 だが、疲れてきているのはミカヅチも一緒。何せ先程まで不慣れな竜の操縦をしていたのだ。全身の筋肉に乳酸が溜まり、だんだんと腕が上がらなくなってきている。

 “……やむを得ませんねぇ。私がお手伝い致しましょう”

 そこで、ミソラと共にミカヅチのサポートをしていたラミィ・エーミルが声を上げた。

 彼女とも一体となっているおかげでミカヅチの筋肉に加護が備わり、連戦に耐えられているのだが、まだ他にもできる事があるのだろうか。


 “いいですかぁ。まずですね……”

 彼女の話す内緒話は酷く残酷なものであったが、そうせねば勝てぬと彼女が断言するほど、アームストロング五花はタフネスである事もまた事実。

 ただでさえリングとして扱っているオルガノートは上昇をし続けている為、このままプロレスを続けていたらいずれは酸素切れを起こす可能性もある。ミカヅチはある程度の高度までであれば生存できるが、アームストロング五花はそうもいかないだろう。

 空戦に持ち込むのも具合が悪いので、ここは無理を押し通すしかない。

 「……分かった。その案でいこう」

 ミカヅチはラミィ・エーミルの案を受け入れ、構えを取る。

 これが最後の技になる事を、少しだけ残念に感じながら。


 「………いい加減、倒れろ……。パチもん野郎がよォ!」

 対するアームストロング五花は、一見なんの策もなくミカヅチへと突撃をするのみ。

 もう脳に酸素が回らなくなってきているのだろう。考える余裕すら無さそうに見える。

 「……これで、終いだ!」

 ミカヅチはそう吠えると、唐突にその場に仰向けに伏せ、

 「んちゃ♡」

 虚をつかれたアームストロング五花の目の前に、ラミィ・エーミルが姿を現した。

 毎日三時間の残業をしながら頑張って書き上げました(白目)。

 繁忙期に更新速度を維持するのって大変ですね……。

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