エレメント能力 その2
それは紫電を纏う、紫色のバスケットボールサイズの球状の物体?であった。
突如腕時計の中から現れたそれは、そのままふわふわとカシワギ博士の頭の上あたりを数度回ったのち、ピタリと静止する。それから数秒止まったかと思いきや、今度はツカサの周囲をぐるりと回る。
まるで品定めでもするかのように、それはツカサの周囲を上から下までくるくると回り、最終的には落ち着いたようで、また腕時計の中へと戻っていった。
数秒の間。
「博士、博士。今のなんです?」
「今のが雷の精霊、ヴォルトじゃ。サラマンダーやウンディーネのエレメント能力の源である精霊と同列の存在であり、我々にとっては対ブレイヴ・エレメンツの切り札ともなり得る。なかなか気難しいというか、気に入らない相手には即電撃を浴びせる危ないヤツでな?いやぁ、ツカサ君が気に入られたようで何より何より」
カッカッカッと愉快そうに博士は笑うが、ツカサとしては事前の説明もなしにそんな危ない目に合わされかけたのかと若干不服である。
「ベルト完成前に大体の戦闘員には会わせたんじゃよ?ほとんどが威嚇するように紫電を周囲に這わせて終わったがの。電撃を浴びたのはキレッキレのポージングをしだしたカゲトラ君だけじゃ」
何だか情景が目に浮かぶようだ。きっと心底ウザかったのだろう。
「それでじゃ。これでようやく黒雷もエレメント能力に目覚めるじゃろう。ヴォルトも君の事は認めたようじゃし、ツカサ君にはこれからしばらくヴォルトと共に行動してもらう事になる」
「共に戦うパートナーとして、より絆を深める為に、ですか?」
「理解が早くて何よりじゃ」
あまりに突然の自体ではあるが、これで黒雷がブレイヴ・エレメンツ達に引けを取らなくなるのであればとても心強い。気難しいヤツなのかもしれないが、電撃も威嚇もないのであれば多少は認められてはいるのだろう。
「これからよろしくな、ヴォルト」
【■■■■■】
腕時計に向けて声を掛ければ、意味は通じなくても言葉が返ってくる。その反応が何故か嬉しくて、ついニヤけてしまうツカサであった。
「さて、ではこれより黒雷のベルトと腕時計の最終調整に入る。今までは試作品という扱いじゃったが、これからは正式に君が持ち主であり装着者じゃ。必然的に君がこの基地の最高戦力となる訳じゃから、より一層身を引きしめて欲しい」
「ハイ!」
「そして……」
博士が一瞬貯める。そしてニヤッと笑い、
「ベルトと腕時計、これらに名前を付けるのも大事な仕事じゃよなぁ?」
「行きましょう博士!目指すは会議室!みんなも集めて命名会議です!」
ここはダークエルダー支部。
ヒーロー達と戦う為の前線基地。
そして、好き者達の集う楽しい職場である──
なるべく読みやすい文章になるよう気を付けてはいるのですが、どうでしょうか。
どうしても人物の台詞で進行させる事が多くなってしまっている感覚がしますね。