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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第一章 『悪の組織とご当地ヒーロー』
24/385

続 夕焼けと、赤・青・黒

お待たせしました。何故かやたら長くなって、改行の隙も見出しにくくなり読みづらいかもしれません。

 公園を貸し切った勝負の後、ダークエルダーの面々は全員が無事に基地へと撤収し、簡単な反省会が行われていた。


 「まずは皆、事前の打ち合わせ通りの働きに感謝する。ツカサ君は予定通りサラマンダーとの一騎討ちを行い、十分なデータを揃えてくれた。ウンディーネの足止めをお願いしたカゲトラ君も、きちんと時間を稼いでくれた。屋台の運営から撤退までを担当してくれた全員にも感謝しておる。これからしばらくは大きな作戦は予定しておらんから、各自ゆっくりと体を休めるように。報告書は後日で構わん。以上、本日は解散じゃ」


 カシワギ博士が締めを行い、反省会は即時解散。まぁ簡単な反省会と言いつつも、屋台で残った食料を参加者全員で消費しながらだった為、解散になったのは定時目前。今回一番疲労したであろうツカサとカゲトラには翌日特別有給を取らせてもらえるとの事で、二人はそれぞれのんびりと着替え基地を後にする。



 基地を出れば、外はもうすぐ日の入りといったところ。食事も今しがた取った為、特に急ぐ用事もないツカサは自然と丘の上の公園へと足を向けていた。


 「そういえば、ここ数日はここに来なかったな」

 少し前に古きよきナンパ共と一戦を繰り広げた後、この公園で出会った少女達と再会した。その時咄嗟に()()()()()を名乗ってしまった為に、なんとなく来にくかったのだ。


 今は気にしてないのかと言われれば、そうでもない。単に今日の戦闘の高揚がまだ冷めきっていないだけ。ツカサの憧れた『本物のヒーロー』と一戦を交えたのだ。特撮オタクとしては、このまま黙って帰るのは忍びない。せめて誰か、あの戦いを外野として見ていた人と話してみたい。その思いが勝ったのだ。


 ツカサが公園に足を踏み入れた時には、既に日は沈みかけていた。その僅かに出ている太陽に照らされて、伸びる影がふたつ。

 「……今日も来ないのかと思っていましたよ」

 ひとつは手すりに身体を預け、ツカサに背を向けて佇んでいる。もうひとつはその影に寄り添う様にして立ち、コチラに向き直っていた。


 「私を待っていたのか?」

 一瞬、こんな美少女二人を待たせるとは、私も罪深い男だな……なんて臭いセリフが喉まで出かかったが、我慢。この二人が求めているのはそういった答えではないのだろう。

 「今日の公園でのお祭り騒ぎの話を知っているだろう?私達の組織には事前にタレコミがあってね、数日前から動向を探っていたんだ」

 ツカサは言い訳がましく言い放って、美少女二人から少し離れた位置にあるベンチへと腰を掛ける。


 「数日前って、町中にこの貼り紙がされ始めた辺りか?」

 夕陽を眺めていた少女が振り返る。その手には一枚の貼り紙があり、そこには『春季ダークエルダー交流祭』とデカデカとした字で書かれていた。イラストもレイアウトも割としっかりしているが、描かれているのが屋台と黒タイツ達というのはなかなかシュールな絵面ではある。

 「そう。役所へと許可や申請は前日に終わらせてあって、屋台は当日の朝に急遽組み立てられていた。物品の流れも変な箇所はないし、終わってみれば本当にただの交流祭だったんじゃないかと思えてくるよ」


 実際は交流祭の裏で黒雷とブレイヴ・エレメンツのデータ収集が目的だったのだが、その情報をこの少女達に教える必要はないだろう。元々この子達は、ダークエルダーを名乗ろうとした馬鹿なナンパ共に絡まれていただけの一般人なのだ。

 「正直、今回みたいに足取りの掴みやすい動き方を毎回してくれたらと思うんだが、いつもいつも唐突に現れ唐突にいなくなるからね。我々の耳に入る前に彼らの目的が終わっているか、ブレイヴ・エレメンツと衝突して撤退しているかのどちらかだ。こちらも慎重に調査しているとはいえ、なかなか手強いよ」

 「ブレイヴ・エレメンツねぇ……」

 手摺に身体を預けていた茶髪の少女はそう呟くと、くるりとこちらを振り返る。未だに沈みきらぬ夕陽に照らされ風に靡くその髪は、見覚えのある緋色を連想させ……。

 「あんた達のその何とか組織って所は、ヒーローについてどう考えているんだ?」

 「ん?ああ……そうだなぁ」


 一瞬の幻影がイメージとして固まる前にツカサは現実へと引き戻される。本来なら正直に答える道理もないのだろうが、今のツカサは激戦の余韻で口が軽くなっている。自覚もある。

 「我々としては協力者というか、敵の敵であって味方ではないという認識の方が強いかな?今はまだダークエルダーを前に共闘しているけれど、それが倒されればその力はどこへと向けられるのか。それが分からない内は迂闊に信用できないって」

 「そっか……」

 少女はそう呟くと、また夕陽の方を向いてしまう。ツカサから見えた、一瞬だけ伏せられた瞳にはどことなく寂しさが滲んでいるようにも見えた。


 「……そういえば二人は、今日の騒ぎを見ていたのかい?」

 「ええ。……と言っても、ブレイヴ・エレメンツが登場して戦闘を始めた辺りから、ですけど」

 「なるほど。私はこの街に来て日が浅いのだが、ヒーローと怪人の戦いという物を初めて生で見させてもらったよ。いやー、迫力があるものだね?」

 ツカサはこれが本題とばかりに楽しそうに語る。語ると言っても当事者としてではなく、あくまで客観的な見方をしていたように言い方に気を付ける必要はあったが。二人とも黙ってしまってはいるが、黒髪の少女は少なくとも相槌は打ってくれる。誰かに聞いてもらえるというのはツカサにとっては新鮮な事で、ついつい一方的な早口で捲し立てるような喋り方になってしまうのもオタクの悲しいサガなのだろう。


 「あの怪人の攻撃を悉くさばいたウンディーネも凄かったけれど、黒雷と高速で戦闘していたサラマンダーもカッコよかったね。特にあの最後の蹴り技!黒雷の蹴り技とは違ってかっこよくってさぁ」

 「……いや、あの鎧や…黒雷の技も、悔しいがカッコよかった」

 「……ほう?」

気付けばツカサは立ち上がっていた。だが鎧野郎、という言葉に反応したわけではない。

 「ちなみにあの足に付いた赤いシールドの由来は想像が付くかい?」

 「おそらく、仮〇ライダー5〇5のリスペクト」

 「君も同士か!」

 「アンタもそうか!」


 ただのオタクの悲しいサガである。だが肩身の狭い(少なくとも周りに語れるオタクがいない)環境下で、特オタというのは貴重なのだ。そしてそれが出会って、どちらからも遠慮が無くなれば……、

 「いやー、最初はトンファーを足にセットするのかとも思ったけど、それにしてはベルトの再現が……」

 「しかも本体が黒いしラインも金だからどっちかというとカ〇ザの方なんだよな!」

 こういう化学反応を起こす事もある。

 「……こほん」

 これは語り尽くさねば、と居住まいを正そうとした所で、黒髪の少女から待ったが掛かる。少女が空を指差すので見てみれば、空は既に夜へと差し掛かる所であった。


 「はは、夕陽を見に来たつもりが、つい長話になってしまったようだ。ごめんねお二人さん」

 「いや、オレはようやく同士を見つけられて嬉しいよ。町の人はみんなブレイヴ・エレメンツの事ばかりで、特撮ヒーローについて話す人はいなかったからさ」

 「その辺の話もまた今度にしてください。ほら、私達は帰りますよ」

 「はいはい。じゃあ司さん、また夕陽の見れる日に!」

 黒髪の少女はツカサに一礼し、茶髪の少女の手を引いて公園から出ていく。

 ツカサは程よい満足感を得ながら、次に会ったらどの作品について語ろうか等考えつつ、のんびりと帰宅するのであった。

ラブコメ要素が全くありませんが、主人公とヒロインなんです!

まだ名前すら出ませんがヒロインなんです!

本当なんです信じてください!

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