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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第六章 『悪の組織と進むべき道』
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占い師の助言 その3

 ちょっとだけオブラートに包んだ胸糞悪い描写があります。ご注意ください。

 ツカサの不安が的中したかのように、モルガンは真剣な顔で話を続ける。

 「私が占ったところ、今から約二時間後にジャスティス白井と全国のダークエルダーに不満を持つ組織が手を組み一斉蜂起を起こします。この情報は既に各地のヒーローや有力組織にリーク済みなので、鎮圧自体は難しくありません。ですが……」

 そこでモルガンは一度言葉を切る。彼(もしくは彼女かもしれないが)の目はツカサの方を向き、

 「そう、北海道。あそこは広いのに土地に根付いたヒーローの数が少ないのです。だからこそ悪の組織が居着きやすく、此度の暴動に参加するその数は膨大。抑えきれない事はないはずですが、各所で鎮圧するまで時間が掛かります」

 モルガンはそう言って、タブレットに北海道の地図を表示し指を指す。

 「防衛の鍵となるのは主だった都市と空港と漁港。つまり千歳や函館、室蘭・小樽・札幌などはそれでも手厚い」

 彼の示す都市にはダークエルダーの支部もあり、常駐している戦力も一級品だ。これは本州の戦力が援護に駆けつけるまで耐えられるように、またはそれまでに敵を殲滅できるようにすべきだと幹部会で提案があったとされていたはず。国外からの侵略も考えれば合理的ではある。


 「ただ不運な事に、貴方の妹さんが午前中にいる場所だと、偶然にも敵の集団とバッタリ出会ってしまう場所でして……」

 モルガンが地図を拡大し、一点を指差す。そこは札幌市にある動物園で、空港からも大して離れていない場所だ。修学旅行最後の日にギリギリ寄れる範疇。

 つまりそこでカレン達は一斉蜂起の時間を迎え、会敵する事になるわけだ。

 「待ってくれ」

 ここで、話の途中から座りっぱなしがキツくなったのか壁際でスクワットを始めていたカゲトラが声を挟んだ。

 「そこは札幌で戦力も厚く、更に相棒の妹ならばブレイヴ・シルフィとして戦えるはずだろう? ならば何故危険とする。相棒ならこの話をされるのも納得できるが、俺が同席する意味が分からん」

 確かに、ベルトを渡すだけならばこの話に同席する理由はないはずだ。確かに話自体は重たいものだが、最重要機密用の会議室を使ってまでする内容ではないと思われる。


 「……なるほど、では掻い摘んで説明しましょうか。ツカサさんもそろそろ我慢の限界のようですしね」

 モルガンはコーヒーを口にし、ツカサもまた大きく息を吐く。

 そう。可愛い妹がピンチだと聞いて、ずっと黙っていられるほどツカサだって理性的ではないのだ。

 本当は今すぐにでもカシワギ博士の首根っこを引っ付かみ、二時間で現場に到着する方法を聞き出したい。だけれどもこの話が始まった時点でノアがツカサの後ろへと回り、淡く抱きしめられていては何もできないではないか。

 何か考えがあるだろうと無理やり自身を納得させて、今はただ状況の把握に務める。これが最善だと信じなければ、ツカサは抑え込もうとしてくれているノアすらも殴ってしまうかもしれない。そんな危うい精神状態なのだ。

 「ではでは……じゃん!」

 そんなツカサの心境なぞ知ったことかと、モルガンは何故かちょっとテンション高めに紙芝居の用意を始める。

 「実は力作、今回の事件の本来の物語。始まり始まり~!」

 「堪えなさいツカサ。ステイ、ステイ、ステイ」

 ノアに押さえられてさえいなければ、ツカサは何をしていたか分からない。そのくらいイラついたのだが、モルガンはやり方を変えないようだ。

 紙芝居という名のツカサに対する謎の拷問が始まった。



 ◇



 げんだ~い、現代。

 これから二時間後くらいに起こるはずのお話です。

 ジャスティス白井とその他大勢。彼らはつい先日に幹部がやられた事で大いに焦り、とある作戦を今日、遂行する事に決めました。

 それはなんと、この日本という国を実質支配している悪の組織ダークエルダーに対する反撃作戦。日本各地で一斉蜂起し、戦力を分散させた後で一気に本丸を落としてしまおうという、後先考えない作戦でした。

 だがしかし、その作戦に参加するのは全国各地よりすぐりの悪の組織達。町の壊滅なんて朝飯前のような怪人達がわんさかいます。なので彼らは、負けるとは到底思っておりませんでした。


 彼らは予定通りに作戦を開始し、全国各地で暴れ回ります。もちろんダークエルダーも、そしてヒーロー達も黙ってやられるわけにはいきません。

 ヒーロー達は最初こそ後手に回りましたが、一時間もすれば戦況はほぼ互角となり、更に一時間が経過した時にはほぼ鎮圧を終えてしまいます。

 大規模な反抗作戦の割には呆気ない、そんな終わり方を迎える。そのハズでした。

 ああいや、大局的には間違いなくそうなったんですよ?

 私の介入がなかったとしても、さほど苦労するような危機的状況ではありません。

 ただ、これから話す事が誤算のひとつ。即ちブレイヴ・エレメンツであるふたりの少女が敗北する未来のお話です。


 彼女達は偶然にも修学旅行の真っ最中。慣れない土地で、しかし楽しい時間を過ごせておりました。

 ああ、もう今日で帰りなのか。残念だなーなんて、友達とワイワイ話しながら。彼女達は動物園を満喫しています。

 そんな、時でした。

 ジャスティス白井の人間達を筆頭に、湧くわ湧くわ怪人軍団。彼らは目につく全てを破壊しながら、彼女達に迫ります。

 もちろん彼女達は黙って見ているワケにはいきません。緊急事態ゆえ、正体がバレるのを覚悟でふたりは変身します。


 驚き立ち竦む同級生達に避難を呼び掛け、彼女達はたったふたりで怪人軍団へと立ち向かいます。この場で戦える者はふたりしかいないからです。

 彼女達は必死に戦いました。向かってくる者を全てなぎ倒し、前へ前へ。戦闘経験の少なさをカバーして有り余る圧倒的戦力で。

 これならば何とかなるんじゃないかと、そう思った時です。

 動くなっ! という怒声と銃声。そちらを見れば、一人だけ逃げ遅れたふたりの友人が、コメカミに拳銃を押し付けられておりました。

 不幸な事にその友人は、襲撃の少し前にトイレに行くと言って集団から離れていたのです。


 拳銃を持った男が言います。

 変身を解いて、その場で全裸になり土下座しろと。

 もちろん彼女達は素直に同意する気はありません。なんとか友人を助け出そうと思案します。

 しかし、その間ですら男は待ちませんでした。

 パンっと乾いた音。友人の太ももからは血が流れ、絶叫が木霊します。

 ふたりに選択肢はなくなりました。


 男の言う通り、ふたりは変身を解いて服を脱ぎます。

 もうその時点で周囲の……まぁジャスティス白井の面々ですね。彼らからの下卑た視線が容赦なく突き刺さります。

 友人は涙ながらに止めてくれと訴えますが、若い彼女達には最適解なんて分かるはずもなく。

 それからの描写は……はい。私が殺されそうなんで割愛しますね。

 ですがこれだけ。彼女達はこの後散々嬲り物にされますし、他のヒーローが到着するまでに多くの犠牲も出ます。人質となった友人は用済みと判断されて、ふたりの目の前で息絶えました。


 絶望に染まる彼女達の顔を見て、彼らは高らかに笑うのです。

 俺達は正義だ、逆らったお前らが悪なのだ、とね。

 許せませんか? まぁ、聞くまでもないですよね。

 カゲトラさんも、ミソラさんも。やる気になってくれたようで何よりです。

 では私の視た、“有り得たはずの未来”の話はここでおしまいです。


 今からは、“変わるはずの未来”について話しましょうか。

 あんまり頑張りすぎるとそっち系の描写ばかりが目立ってしまうので簡潔にまとめる他ありませんでした。

 まだR15の範囲のはず……。

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