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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第一章 『悪の組織とご当地ヒーロー』
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今度は正々堂々と その2

 カシワギ博士より一対のトンファーを受け取ってから数日後の休日。前回ブレイヴ・エレメンツと交戦した公園に、黒雷達の姿があった。そこには大勢の黒タイツ達もいて、皆が忙しそうに動き回っている。

 「はい、たこ焼き3つね!青のりと鰹節はどうします?」

 「こっちの牛串は美味いよ!是非食べていって!」

 「さあさあウチの射的は他では味わえないよー!50m先の的に当てたら豪華景品だ!本物そっくりのライフルで挑戦できるよー!」

 そう、忙しそうに屋台のあんちゃんをやっている。

 ブレイヴ・エレメンツを誘き寄せる為とはいえ、無闇に街中で暴れるのはダークエルダーとしての美学に反する。そこで出された案が、この『騒ぎであれば寄ってくるのだからいっそ屋台を出してしまえ作戦』である。


 いくらダークエルダーが恐るべき悪の組織であったとしても、人は何故か祭りの雰囲気には抗い難い。後はサクラを用意して、そのサクラが満喫するかのように買い食いをしていれば、人は自然と集まりだすのだ。きっとそうだ。

 「おじさんはどうしてマックロなのー?」

 「それはね、おじさん達はとっても恥ずかしがり屋だからさ。でもこんなおじさんにも話しかけてくれた可愛い嬢ちゃんには、たこ焼き1個サービスしちゃおう」

 「やったー!」


 母親に手を繋がれた幼女ですら、テキ屋と化した黒タイツ達を怖がろうとしない。普段は人に恐れられ恨まれるのが仕事のはずの彼らは本当にそれでいいのか。楽しそうだからいいのか。

 それはさておき。黒雷が怪人スーツを着たカゲトラとの演武を終えたちょうどその時、公園の入り口にふたつの影が差した。その影はゆっくりと公園へ足を踏み入れ、まっすぐに黒雷達の元へと向かってくる。


 「なかなか遅い到着じゃないか。悪いが演武の再演は2時間後だぞ?」

 「ハッ!そんなもん興味ないっての。オレ達が興味があるのはお前達の目的だぜ、ダークエルダー。一体何のつもりでこんな所で屋台なんか出してるんだ?」

 ついにふたつの影、ブレイヴ・エレメンツは黒雷達のすぐ目の前まで迫った。紅き槍と蒼き刀を携え、お互いの間合いの一歩外で立ち止まる。

 「目的?はて、地域密着型悪の組織である我々が、きちんと市に許可を貰った上で屋台を出す事に、何か問題があるのかね?」

 黒雷も惚けた口調で話しながら、ようやく手に馴染み始めた一対の相棒を構える。隣の花見怪人バショートリ(inカゲトラ)も、両手に一升瓶型スタンロッドを構え既に臨戦態勢だ。


 4人を囲うように、大きく輪を作って人々が集まる。元々黒雷達が演武をする用にと広めに場所をとってあり、屋台もそれに沿うように配置されているため、さながら4人の衝突は見世物かのように周囲の期待と視線を集めている。

 「くっくっく、この人混みでは正義の味方は大技を使えまい?」

 「……そういう事ですか。流石は悪の組織、姑息なマネしかできないのね」

 見世物扱いになるという事は、それだけ周囲に人が多いという事。もし前回のサラマンダーのように爆熱の火柱を上げた場合、民間人に文字通り飛び火する可能性があるのだ。


 「安心しろ。別に人質をとって降伏を迫るような事はしない。ただ今日の君達は、余興のひとつとして我らと戦ってくれればいい。簡単だろ?」

 ツカサは分かっている。これで大技を封じたとて、現状は未だに劣勢なのだ。例え黒雷のスペックがサラマンダーやウンディーネ、どちらかと同等だとしても、怪人スーツの方は実力不足感が否めない。改良しようにも、現在は訳あって同スペックまで出力を上げられないのだ。

 つまり、今回の戦闘はあくまで勝つ事ではなく戦闘データの収集が目的。データが揃えばいずれは勝ち筋が見えると言うもの。


 「そういえば、前回は名乗る名は無いと言ったな。奇襲を含め、色々と失礼をした」

 「なんだ、卑怯だという自覚はあったのか?」

 「もちろんだ。改めて名乗ろう。我が名は黒雷!ブレイヴ・エレメンツよ、いざ尋常に!」

 「何が尋常に、だ鎧野郎。だがまぁ、ここまできたら乗ってやらんでもない!さぁ……」

 「「勝負!」」


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