今度は正々堂々と その1
古き良き(?)ナンパ共を矯正施設送りにしてから数日が経った。
その数日間は黒雷としての出撃はなく、ヒーロー共との戦闘も小規模の小競り合い程度で済んでいるため実に気軽である。
この町のブラック企業の数は活動開始当時に比べ減っているものの、まだまだダークエルダーに隠れて社員達を過度に追い詰める企業は後を絶たない。社員による密告や外部からの監査だけでは全てのブラック企業を発見・根絶やしにする事は難しいため、ダークエルダー内でも新たな手段を模索してはいるのだが、未だに成果はなく。それ故に戦闘員達は出撃もなく、日々を訓練に割り当てているのである。
そんなある日。
「そういえばツカサくん、君の得意な武器はなんじゃ?」
「武器というと……普段はスタンロッドしか使ってませんけど。もしかして黒雷用ですか?」
トレーニングルームで普段通り訓練しているツカサの下へ突然カシワギ博士がやって来て、訓練を見学したいと言い出したのだ。特に断る理由もなく、いつもの通りのメニューをこなし、模擬戦の際に訓練用のスタンロッドを手に持ったところでそう声を掛けられた。
「うむ。知っての通り、ブレイヴ・エレメンツはそれぞれ槍と刀を武器にしておる。それに加え炎と水のエレメントの力を自在に操っておるから、今まで手に負えんかったんじゃ。今の黒雷はまだエレメント能力は発現しておらんじゃろ?ならせめて武器くらい持たねば、いつまでも不利なままじゃと思ってのう」
確かに、ツカサも一度彼女達に一方的にボコられている。その際に存分に実力差を味わったのだ。
「でも武器かぁ……。俺、あんまり女の子相手に剣や銃を向けたくないんですよね。こう、怪我をさせずに制圧できて、更に防御に使えるみたいな理想論が通ればいいんですけど」
ツカサも自身で言っていて苦しいのは分かっている。そもそも相手だってこちらに対して容赦なく刃を向けているのだ。これでは舐めていると叱られても仕方がないだろう。しかし、
「そう言うかと思ってな、まずは試作品としてひとつ作ってみたんじゃ」
カシワギ博士はそう言うのも織り込み済みだと、持ち込んだアタッシュケースを開いてみせる。
「そう難しい武器でもない。武術としての知識は今度催眠学習の教材を作るとして、黒雷の身体能力であれば少なくとも邪魔にはならんじゃろう。もちろんダークエルダーとしての技術の粋を詰め込んだ作品じゃ、完成度に自信もある。一度使ってみんかね?」
皆に見せるように回したアタッシュケースの中身。そこには真紅に輝く一対のトンファーが収められていた。