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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第五章 『悪の組織と夏のデキゴト』 後編
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決戦!『王子』と『姫』を討伐せよ! その1

 「やべぇやべぇやべぇやべぇやべぇ……!」

 二体の巨大な化け物を前に、黒雷達はただただ右往左往しつつその化け物共の猛攻を避ける他なかった。

 一体目、『プリンセス』と呼称したのはジョロウグモ。

 蜘蛛の胴体にゴリラの上半身がくっつき、その背中にはワイバーンの物と思わしき羽根がくっ付いている。そして頭部は蛇だ。伸びる首と合わさってどこまでもコチラを睥睨するコラージュモンスターの見た目は、あまりの統一感の無さから『マザー』よりも醜悪で、正気度(SAN値)がガリガリと削られる。

 二体目、『プリンス』ととりあえず呼称するは亀。

 重機のような四足が支える甲羅から伸びるのは三本の首長竜と思わしき頭部。それぞれが独立して動き、四方八方に焔を撒き散らす厄介な性質を持っている。また、尻尾はなんとクジラの尾ビレだ。その巨体に見合うサイズのそれは絶えず地面を打ち据え、黒雷達に敵意を持っている事を知らせている。

 黒雷達はそんな化け物共と共に地下へと押し込められ、広いとはいえ窮屈感を感じてしまう空間での決戦を強いられているのだった。


 「き、キモイですぅぅぅ~! 生物学的に何一つ理に適っていなさそうなのにキチッと役割を果たしている個々のパーツがホントにキモイですぅぅぅぅぅぅ!」

 「泣き言ばかり言ってないで倒し方を考えてください! 例によって再生能力もあるので厄介なんですよ!」

 「ははっ! コイツが噂に聞いたデブリヘイムの親玉って事か! こりゃ椎名の魔砲が欲しくなるわけだ!」

 三者三様。強がりも含めてギャーギャーと喚きながら、それでも打開策はあるかと探りながら戦闘を繰り広げている。

 その中で黒雷はと言うと……。

 「座標送信! 博士、何かいい手はありませんか!?」

 『いやぁ、困ったもんじゃのう』

 「博士ェ!」

 とにかく攻撃を回避しながら、何かよい方法はないかとカシワギ博士を頼っていた。

 『轟雷(切り札)はあれど一発限り。分厚いコンクリの地下室に二体のマザークラスじゃろ? ははは、まさに八方塞がりじゃなぁ! 何もかもを犠牲に、その場に巡航ミサイルを数本叩き込む事も可能じゃが、どうする?』

 「ちょっと考えさせてください!」

 物騒な話だが、人類の天敵を前には致し方なしとなりかねないのが現状だ。

 黒雷達はワープ装置を使用して帰ればいいが、眠らせたアクワラジの面々と秩父の森は綺麗さっぱり無くなるだろう。

 できれば、避けたい。


 「おう黒いの! 状況伝えたなら加勢しろや! ひとりじゃ三本首は抑えられねぇ!」

 「黒雷だって前に言ったし言えただろう!? アンタはどうしてそう名前を覚えるのが苦手なんだ」

 「うるせぇ名前がみっつもよっつもある奴が面倒なんだよ!」

 「それはすまん」

 口喧嘩をしながらも、ふたりは気功のチカラを使い奮戦を続ける。

 惜しむべきはそのダメージが全く蓄積されない事だが。

 (とにかく、状況が変わるまで時間を稼ぐしかないか)

 黒雷は虎視眈々と、轟雷を使う機会を狙い続ける。

 どちらか一方を倒しても、残った方に逃げられては本末転倒なのだ。デブリヘイムは進化し続ける生き物。時間が経てば、また『マザー』の時のような悪夢が再来するだろう。

 それを避ける為に今できることは、ただ無意味とも思える交戦を続ける他なかった。



 ◇



 ところ変わってこちらはアクワラジ正門前。

 ふたつの施設を探索し終えた瀧宮・ストローグ班が合流したところであった。

 「さて、黒雷班はどうやら状況が切迫しておるようじゃな。最後に通信があったのは「二体のデブリヘイムと交戦中」という一言。おそらく『プリンセス』と、……とりあえず『プリンス』でよいか。その二体との戦闘じゃろうな。音が聞こえんところを鑑みるに、おそらく地下深くにおびき寄せられたのじゃろう。なんで、加勢が必要なわけじゃが……」

 瀧宮はそこまで捲し立ててから、ストローグを見やる。

 「先にストローグよ、正体を見せてもらおうかのう?」

 『うなぁ~』

 四匹の猫達は既にストローグを取り囲み、鋭い眼光で彼を睨めている。

 他の面々もまた遠巻きながらそれを眺めるばかりだ。まだ武器は抜いていないものの、ストローグを擁護しようとする気配はない。

 それを見てストローグは諦めたように首を振ると、

 「やれやれ、人間ってのはどうにも勘がいい」

 と、言って、ゆっくりとマスクを掴み、その()()()()()()()()


 「──ぬぅっ!? お主まさか!?」

 『ふしゃーっ!』

 その顔を見た瞬間、その場の誰もが瞬時に距離を取り武器を構える。だが、

 「おいおい、()る気だったら見せる前に殺しているよ。ビビるのは分かるがちっとは落ち着け」

 渦中のストローグを名乗った何者かだけは気にした様子もなく、地面に胡座をかいて座ってしまった。

 「……おいおいマジかよ」

 「アタシ、コイツらが日本語を話すのって知らなかったんだけどさ、都会ではこれが普通なのかい?」

 「初も初っスよ。意思の疎通すらできないから『人類の天敵』なんて呼ばれてたんスから……」

 誰もが驚き様子を伺う中で、瀧宮だけが最初に動いた。

 呵呵と笑い、袖口から干し肉と一升瓶を取り出して、真正面へと座ったのだ。

 「お主の誠意は見た。ならばワシとて瀧宮の巫女たる者、人外とて邪険にはせぬ。こんな状況でなんじゃが、必要なのは事実。話を聞かせてもらえるかの? なぁ……」

 一息。

 「デブリヘイムさんや」


 ストローグを騙る者はニヤリと笑う。とは言っても顔は昆虫……バッタと瓜二つなので、笑ったかどうかの判断は難しいが、とにかく笑ったのだ。

 「酒と肴を前に、腹を割って話そうってか。人間のコミュニケーションってのは面倒なもんだが、合わせてやるのも乙ってもんかね」

 ストローグを騙る者は盃を手にし、瀧宮にお酌されたそれをクイと一気飲み。

 かぁ~っ、キッツ! なんて言いながら、ワイバーンの干し肉を摘む。

 その様子はほとんど人間のサラリーマンと変わらない。上品さとかはなく、ただ己が酒を楽しむ為の飲み方だ。

 「さて、酒も入ったし、舌も回る。……おい、ここは『そんな顔なのに舌なんてあるのか?』ってツッコむ場面だぞ? まぁいいけどさ」

 その者は敵意に囲まれた中でも気にした様子もなく、それすら肴にするかのように酒を煽った。


 「ストローグ……いや、ストローグの顔を借りた何者かよ。まずはふたつ教えておくれ。お主の名はあるか? 我らと行動する理由はなんじゃ?」

 瀧宮は問う。その周りを四匹の猫達が囲んでいるが、どれも緊張した面持ちだ。決して干し肉を虎視眈々と狙っているわけではないはず。

 「そうさな、俺はクオンと呼ばれていた。と言っても、ある人間に付けられた名前だがな。んで理由ってのだが──」

 また酒を一口。


 「遅めの反抗期ってやつさ」

 この子だけ何一つ設定が定まっていなかったのでストーリーに落とし込んだらすごい方向に走って行きましたが、まぁヨシ!

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