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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第一章 『悪の組織とご当地ヒーロー』
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日常にはそんなにない光景 その1

平和の続く日本。土曜日。快晴。温かな春の日差し。

ここまで条件が揃っている休日は、たまにはのんびり散歩でもしてみようかと思ってしまうものである。

現にツカサはそうだった。土日祝日は基本的にお休み。またブラック企業撲滅の為の作戦がある場合は、後日代休の申請が可能なホワイト悪の組織に所属する者の余裕である。


とはいえ引っ越してから最低限の場所は巡り、趣味もインドアが中心の者からすればあまり面白味のないのがこの町である。都心からやや離れ、数年前にアニメの聖地とされた程度の『何もなさ』というのは、いざ目的もなく散策となると少々辛いところがある。

それでも何かないかと、駅前を中心にあっち行ったりこっち行ったりたまたま見つけたラーメン屋でお昼にしたりいい感じに隠れた喫茶店を見つけてそこのパンケーキの美味さに感激したりしたが、どれも何だか求めていた散歩とは違う気がして未だに歩き続けている。


しかし、数度目の駅前を歩いていると若者が多く見られるようになり、そうなれば普段なら滅多に出会わないであろう、

「おっ、お嬢さん達可愛いねぇ~。ね、ね、お兄さん達とこれからお茶でもどう?」

今どき探しても見つからない、典型的なナンパを見つけてしまう事もありうるわけだ。

男達は五人組で、二人の女性を囲む様にして道を塞いでいる。

しかし傍から見ても手口が古い。そして自称お兄さん達は見た目からしてチャラい。しかも囲っている奴は「へっへっへっ」なんて冗談みたいな笑い方をしている始末。こんな面白味のないナンパなんて一世代前の初心なお嬢様位しか引っかからないだろう。


「手口が古い。そしてあんた達は見た目からしてチャラい。しかも囲っているお前、「へっへっへっ」なんて笑い方今どき流行らないぞ。こんな面白味のないナンパなんて一世代前の初心なお嬢様位しか引っかからないだろうよ」

「ブッ!」

余りにも同じ事を思ってしまったため、ツカサは思わず吹いてしまった。なんとも男勝りな女の子だ。是非にも助けに入ってやりたい所だが、生憎と今はオフのためベルトも黒タイツも持ってきていない。

「……オイオイオイいい度胸だなお嬢ちゃん。俺らが何者だか分かってねェな?」

取り巻きの内の一人が声をあげる。そしてその台詞の後に続く言葉は想像できてしまうため、ツカサは仕方なく手持ちのサングラスとマスクだけで参戦を決めた。




「へへ、もう分かるだろ?俺達の言うことをちゃんと聞かないと、どうなるか分かんねぇぞ?」

「いや分からないし、聞く耳も持たないけど」

数人の男達に囲まれてもなお強気な姿勢を崩さない短髪の少女。隣の黒髪ロングの少女はずっと黙ってはいるが、怯えた様子など一切なく、それどころか暇そうにスマホを弄っている時点で男達は完全に舐められているのだろう。

「耳かっぽじってよーく聞け!俺達ゃ泣く子も黙るダークエルダーのメンぶぇえ!?」

「「「かっ、かっちゃあああん!」」」


名乗りを上げ損ねて倒れる男。その背後に立つのはサングラスとマスクを付けて手に警棒のような何かを持つ不審者。

「な、何者だテメェ!」

少し遅れて、残った男達が不審者を取り囲む。それぞれが手にスタンガンやらナイフやらを取り出して臨戦態勢だ。

「なぁに、ただの通りすがりのモンだが。ダークエルダーって聞こえたもんでね、ちょっとお灸を据えに来たのさ」

対する不審者は不敵に、取り囲まれるままに立ち尽くす。

明らかに多勢に無勢だが、休日真昼間のそんな様子にも誰かが加勢に入ったりはしない。みな遠巻きに動画を撮るだけだ。当事者であった少女達も特に何するでもなく現状を見守っている。


ちょっとした喧嘩が始まった。

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