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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第一章 『悪の組織とご当地ヒーロー』
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日常業務

ツカサの変身形態が『黒雷』の名を受けた次の日。

ブレイヴ・エレメンツ奇襲作戦も失敗に終わった今は、彼らにとっては忙しい時期となる。黒雷は見た目のインパクトはあれど、実績が何一つないのだ。そして戦闘以外での実績と言えば、ブラック企業への強制立入りからの粛清行為こそが最も売名との兼ね合いができる業務である。

つまりはダークエルダーとしての日常業務。


「社畜はいねーがぁぁぁ!」

「な、なんじゃぁぁぁ!?」

とあるビルのオフィス。事前の調査で強制立入りの要ありと判断されたこの会社は、突然の黒タイツによる襲撃を受けていた。

「御用改めである!我らダークエルダー、ブラック企業とそれに従う社畜には容赦せん!かかれ!」

オフィス唯一の扉の前に黒雷姿のツカサが陣取り、逃げ場を失った憐れな社畜達が次々と黒タイツ達により捕縛されていく。


「やめろ!離せ!明日の会議の資料が!資料作りの途中なんだァァァァ!」

「ヤダ!やめてよ私まだ働けるッ!働けるのォ!」

「あの、私従うんで頭だけは触らないで……触らないで!ヤメテ!あああああああ!」

黒タイツに捕まった者達は有無を言わさずにその場に設置されたワープ装置へと投げ込まれる。その先はダークエルダーの経営する更生施設へと繋がっており、『脱・社畜』を目指して様々な更生メニューを叩き込まれるのだ。


「よし、このフロアはこれで片付いたな。……先輩方、次に行きましょう」

「……いや誰もいないからいいけど、その姿で後輩らしさを出されても調子狂うわ」

「あ、あー……すいません」

なんとも締まらない感じの御一行は、次の獲物を求めてその場を後にした。残ったのはしっかりと内容の保存されたPC達と、誰かのカツラのみ……。





「では、本日の業務はこれまで。ツカサくんは後日報告書をまとめて提出するように。以上、解散!」

『お疲れ様でしたー』


夕方5時前には終礼を行い、5時ピッタリにはほぼ全員が帰り支度を済ませている。昨今の日本の企業には見られない九時五時業務こそ、悪の組織をストレスなく続けられる所以である。

ヒーローの襲撃に遭うなどのイレギュラーさえ無ければ、夜間の警備隊を除いてほぼ全ての社員が帰宅できるのだ。


「お疲れツカサ。今日はいいリーダーっぷりだったそうじゃないか」

「はは、まだまだ。もっと黒雷を強くカッコよく見せるには経験が足りないよ」


帰り道、同じアパートに住むカゲトラと共に歩く。

今回は平日昼間の作戦であったので、ブレイヴ・エレメンツと遭遇する可能性が低いために戦闘員を2班に分けての同時作戦であった。ツカサと別の班のリーダーであるカゲトラも無事に作戦が完了し、また今日も社会に蔓延るブラック企業の一部を叩く事に成功したのである。


「しかし、あの『宣戦布告の日』から毎日のようにブラック企業へと襲撃を掛けているのに、まだ全然無くなる気がしないなぁ」

「まぁ今までの日本にホワイト企業なんて数える程しかなかったわけだし、全国規模で言えば目に見えて減ってるはずだから。地道に頑張るしかないさ」


日本の7割を占領下へと置いた悪の組織ダークエルダー。しかしその強力無比な力を民間に向けて使ってしまっては、今は静観している世界各国すら敵に回すであろう。現状はまだ国内での内乱という形に抑え、ここ数ヶ月で国民の生活水準を安定させているからこそ、大きな争いにはなっていないのだ。


「だな。出来ることを、地道に。明日も。頑張ろう」

「外でポージング決めるのやめーや」

二人でのほほんと笑いながら、それぞれの部屋へと戻る。相手を倒す事に全力を注いでくるヒーローを相手に、普段からボコボコにされている二人の笑顔に曇りはない。日に日に良くなる日本の為、危険手当の付いた高給な部類の給料の為、二人は今日も英気を養うのだ。

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