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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第四章 『悪の組織と夏のデキゴト』 前編
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邪神VSヒーロー その3

 「決して揺るがぬ大地の如く! 並み居る悪を殴り飛ばす! 怒涛なる大地の戦士! ブレイヴ・ノーム!!」

 ハクと並び立つその者は、親友を目の前で攫い暴挙の限りを尽くした怨敵を前に、腹の底から怒気を発して名乗りを挙げた。

 彼女の名はブレイヴ・ノーム。ココ最近までは二人しか確認されておらず、つい最近になってようやく三人目が現れた、ダークエルダーに敵対する精霊戦士、その四人目となる存在である。

 (ええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!?)

 これにはハクも内心でびっくり仰天である。

 親友……ツカサの妹である歌恋(カレン)を助ける為に単身熱海までやってきたという話であったから、正体はヒーローではないかと薄々感じてはいた。いたのだが、まさか誰も本来の姿を知ることの無いという噂のブレイヴ・エレメンツの追加戦士が、まさかの目の前で生変身である。ハクとしては嬉しさ半分と、その辺は気を付けるべきではないかという要らぬ心配が綯い交ぜとなっているのだが、そういえばここにはハクを含めてヒーローしかいないのだと改めて認識し、その行為もやむなしと納得してしまうのであった。

 実際はハクもコッペルナもダークエルダーの所属だし、ついでに素性の知れない霧崎と椎名もいるのだが……まぁ敵の前で大見得切って変身したい気持ちはハクにも十分理解できるので仕方がないだろう。


 「えぇ!? 貴女も……ブレイヴ・エレメンツ!?」

 驚いたのはハクだけではない。同じ精霊戦士であるサラマンダーとウンディーネも、今初めて知りましたといった様子である。

 「実はそうだったんだ……。これからよろしくね?」

 驚く二人に対するノームの反応は淡白というか素っ気ない。まぁ敵が目の前なので落ち着いて話している場合じゃないのも確かなのだが。

 「くっくっくっ……今更ヒーローがひとりふたりと増えたところで、神の威光はかすれもしません。徹底的に蹂躙してやりましょうか!」

 クラバットルは邪神の眷属に囲まれ、御満悦の表情でヒーロー達を見据える。クラバットルからすれば、己が今後支配する世界において多数に散らばっているはずのゴミをまとめて掃除するいい機会なのだから臆する理由もない。ヒーローだなんだと祭り上げられようが、所詮はヒトの子。神に抗えるはずがないのである。

 「まーだいってら、あのカニコウモリ。オレ達を甘く見すぎてるっての」

 「ふふ、そうね。……相手が邪神でも、神話生物でも関係ない。三人になりより磐石となったブレイヴ・エレメンツの底力、見せてやりましょう」

 「おー!」

 ただでさえ突破力というか、火力としてはハクが把握しているヒーローの中でも上位の存在であるブレイヴ・エレメンツ。そこに新たなるメンバーが加わったのだ、その強さは無類のものとなっているだろう。


 だが、ハクにはひとつだけ気になっている事がある。

 「なぁ、ブレイヴ・シルフィは一緒じゃないのか?」

 そう、それはつい先日ハク達のピンチに駆け付けてくれたもうひとりの精霊戦士。彼女もまた精霊シルフのチカラを借りて戦う戦士の一員であったはずだが、生憎とまだ姿を見ていない。

 「え、シルフィ……って誰だ?」

 「もうひとり、風の戦士ですか? 私達はまだ出会ってませんが……」

 「ボク、実戦はこれが初めてだから。会ったこともないね」

 帰ってきたのは、三者三様に『知らない』の一言。

 なるほどそういえば、シルフィとはブレイヴ・エレメンツのふたりやハク達が活動する町とは幾分と離れた場所で出会ったのだと思い出す。別の拠点で活動しているのならば、出会う機会の方が稀なのだろう。

 特オタとしたら四人同時名乗りを見てみたかったが、ダークエルダーとしたら痛手どころか大打撃必須の脅威となるので、合流しないでいてくれた方が有難い。

 「話し合いは済みましたか? 時間稼ぎをする意味も分かりませんが、律儀に待ってやるほどコチラも暇ではないのですよ?」

 ヒーロー側の先頭に立っていながら、いつまでも戦闘準備を終えないハク達に嫌気が指したか、遂にクラバットルからお小言が入る。敵なのに律儀な奴だ。

 「ああ、悪いな。そろそろ始めようか」

 ハク達側からすれば、邪神が復活して間も無い内に叩きのめして海底に再封印するのが最善手。無駄話は、その後でも問題ないだろう。

 神様相手に生きて帰れたら、の話だが。


 「呵呵(カカ)、ヒーロー達よ。私と椎名でどうにか光明を見出すでな、しばらく耐えておるとよい」

 瀧宮 帝は初対面であるはずの椎名を軽く抱き寄せ、だから何も心配はいらんと豪語する。

 正直なところ、椎名の魔砲は邪神に対しても切札足り得るとハクは考えていたので、何か策があるならば彼女に任せてもいいだろう。アイコンタクトだけで霧崎に合図すれば、暴れてやろうと意気込んでいた漢は明らかに肩を落として、しぶしぶと椎名達の護衛に就いた。

 これでようやく双方共に準備万端。

 浜辺に並ぶ邪神の眷属とヒーロー達が睨み合い、それを見下ろすように巨大マシンと邪神が対立する。

 あまりにも壮観な、その光景。その情景と戦闘を、肉眼で観ることができた少年少女が居たならば、きっと瞼に焼き付いて二度と離れないだろう。

 「いっくぞぉぉぉぉ!」


 そんな一大決戦の火蓋が今、切って落とされた。

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