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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第四章 『悪の組織と夏のデキゴト』 前編
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町は今、燃えている その3

 男は燃える町を見て笑っていた。

 「いいぞ……! もっと、もっと恐怖を捧げろ!」

 男は己の欲望の為に、信仰する神への供物として恐怖を選んだ。この日の為に、あらゆる再生怪人達を準備し、周到に計画を立ててようやく掴んだ悲願。

 本来ならば、最後の巫女を攫うのに日本最大の悪の組織を相手にしなければならぬ状況であったのだが、何故か向こうからホイホイと本拠地へ、それも少ない護衛で遊びに来るという暴挙にでてくれたのだから笑いが止まらない。

 「はははは……はははははははは!」

 巫女は六人。その全てが男の後ろで磔にされ、そのチカラを神へと捧げている。偉大なる神へと供物として捧げられるのだから、この娘達もさぞ嬉しい事だろう。

 「はははは……うん?」

 全てが順調だと思われていた、その時。一条の流星? が天より落下し、男の眼前……最後の守りにと置いた、大量の再生怪人達の中心部へと突き刺さった。

 轟音と共に砂を巻き上げ、ついでとばかりに再生怪人達の爆発音が重なり響く。

 「……存外早いご到着だな」

 男はあと少しというところで現れた、五人の戦士達を睨めつける。

 「よう……ゲホッ煙いなこれ……」

 敵地のど真ん中だというのに、気安い口調の男が砂煙の中から歩み出る。それは純白の鎧と剣を携えた、最後の巫女の護衛だったはずの男、ハク。

 次いで巫女の保護者の金獅子に、精霊戦士と名乗る赤と青のふたりの少女。その後に男のデータにはないローブの女。

 町中にあれだけのヒーローが集まっておいて、男の野望を阻止すべく向かって来たのがたったの五人。

 舐められているのかは分からないが、男にとっては御しやすい人数で逆に有難い。

 「取り返しに来たぜ。お前が奪ったもの、全て!」

 砂煙がようやく収まり、五人は改めて男と対峙した。



 ◇



 「くっくっくっ……。奪還屋にでもなったつもりか? 生憎だが、貴様らに返すものなぞ何もないわぁ!」

 ハク達と対峙したその男はそう叫ぶと、懐より奇妙な形をした仮面を取り出す。それを装着した男の身体はみるみる変化し、蟹と蝙蝠を足したような怪人へと変貌を遂げた。

 「き、貴様はクルートゥフ神官のクラバットル! 全ては貴様の策略だったのか!!」

 磔にされた少女達の中に明らかな妹の姿を認め、内心腸が煮えくり返る思いのハクだが、こういうお約束のノリは外せない。

 「くっくっくっ……そうとも。我が全てを成した! ここで邪魔はさせんぞヒーロー共!」

 男……クラバットルがカニバサミとなった腕を振るうと、今まで棒立ちだった再生怪人達が一斉に、ハク達を取り囲み押し潰すように動き出す。

 「「行くぞ!」」

 対するハク達は、ハクとサラマンダーの号令でお互いに逆方向へと走り出す。ブレイヴ・エレメンツとハク・霧崎の二人ずつで別れる形で、お互いの背を預けるように。


 「「雑兵がワラワラと……」」

 「「しゃらくさいんだよ!」」

 サラマンダーの炎槍とウンディーネの水刃が敵陣を切り裂き、ハクのパワー・ブレイドと霧崎のマシンガンが敵陣を薙ぎ払う。デブリヘイムの群れを一匹ずつ相手にしていた数ヶ月前から、誰もが成長している。建築物を気にする必要のない場所では、最早再生怪人達なぞ相手にもならない。

 「ぐぬぬ……! ならば、いでよ信徒よ! こ奴らを叩き潰せ!」

 ようやく切り札というか、リーダー格を召喚するクラバットル。粗方再生怪人をやっつけたハク達の前に立ったのは、四つの異形の者達。

 ひとつは、巨大なヘビのような胴体に蝙蝠の羽根が生えたような、空飛ぶ大蛇。

 ひとつは、全身を鱗で覆われた蛇人間。

 ひとつは、白い全身に幾つもの触手を生やした頭部の槍を持った巨人。

 ひとつは、手のひらに口をもつ、頭部のない巨躯。

 神話生物の出来損ないのような者達がそれぞれ、ハク達の前へと立ち塞がった。

 「なんだよ、再生怪人以外にもちゃんといるんだな」

 「ですが、悪いですけど通してもらいます。あそこには私達にとっても大事な人が居るもので」

 サラマンダーは改めて大槍を構え、ウンディーネも切っ先を眼前の敵へと向ける。

 「これを見た貴方はSAN値チェックです。成功で0、失敗で1d20の減少をどうぞ、ってか……?」

 「お、懐かしいゲームのよく聞く文言だな。夜襲の前の暇つぶしに丁度いいんだよなあれ」

 ハクはベルトのデッキケースを“対幹部用”に差し替え、霧崎はマシンガンを放り投げて気功を纏った拳を構える。


 それぞれが磔にされている少女達を前に憤りを覚えつつも、冷静さと慎重さは失っていない。むしろ誰もが、成長した己の技量を試すいい場面だと、内心で思っている。

 そんな目立つ彼らだからこそ、ヤミに沈むように存在感が掻き消える、とある少女は忘れられやすい。

 それはそれで少女の独壇場となるので有難いとの事だが。

 とにかくここが決戦の舞台。邪神降臨を目の前に、スズ達の救出は間に合うのか。


 事態は、この場の誰もが予期しない方向へと転がり出す。

 少々短いですが、キリのいい所まで。

 信徒達の容姿は、クトゥ〇フ神話に登場する生物がモチーフになっております。あくまでモチーフですし、特撮色の方が強い見た目になっているでしょうが。

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― 新着の感想 ―
[一言] ウルトラマンはクトゥルフがモデルのやつがいるからやっぱクトゥルフは特撮とは相性いいんだろうな。
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