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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第四章 『悪の組織と夏のデキゴト』 前編
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別れと神社と出会いと その2

投稿遅れてごめんなさい。

仕事が忙しくて書き上がったのがこの時間になってしまいました。

 熱海温泉への移動日を終え、旅館でゆったり温泉でのんびりした翌日。

 ツカサ達は四人揃って、スズおすすめの神社へと足を運んでいた。

 「広い境内に観光客もそこそこ。参道の売店はこの暑さの中でも賑わっている、と。なかなかいい場所じゃないか」

 「なんだ、詳しいのか?」

 「いや、言ってみただけだ」

 「なんだそれ……」

 いくらダークエルダーの系列とはいえ、流石に大浴場へは入れなかった霧崎はここぞとばかりに楽しむ気満々である。椎名とスズも昨晩同室で過ごす間に仲良くなったのか、ふたり揃って御朱印を貰いに並んでいる。

 「はは、楽しそうだなヴォル……」

 そう呼びかけようとして、ツカサは口を噤む。

 ここしばらくは相方として、一緒に死線を潜り抜けた相手である。急に会えなくなっても、こういう時についつい話しかけようとしてしまうものだ。

 その喪失感の埋め合わせの旅行だが、まだまだ慣れないものである。

 「どうしたツカサ、ボーッとして。綺麗な巫女さんでもいたのか?」

 「……あんた、出会った当初からかなり砕けたな? まぁ、そんなんじゃないよ」

 「そうか。ならさっさとお祓いに行ってこい。今受付すれば、十分後には受けられそうだ」

 「おっと、了解。行ってくる」

 本来の目的であるお祓いをやってしまわねばと、ツカサは急ぎ受付へと向かう。幸いにも並んでいる人はおらず、このまますんなりと終えられるんじゃないかと、この時はまだそう思っていた。



 ◇



 「あ、ごめんなさいそこのお兄さん。ちょっと写真撮ってもらえませんか?」

 無事に10分ほどでお祓いを終え、3人と合流しようと、歩き出そうとしたツカサへとそう声がかかる。

 見れば、恐らくは観光客であろう、首に一眼レフカメラを提げた金髪ポニテの少女がひとり、御神木の傍でツカサに対し手を挙げている。

 「ええ、構いませんよ」

 ツカサも特に断る理由は無いため、カメラを受け取り構える。少女は一言ありがとうと言って、御神木の横へと立つと、カメラに対して笑顔を向けた。

 「じゃあ撮りますよ……はい、チーズ」

 今はどういった掛け声が主流なのかは分からないが、ツカサの中ではこれが正解である。

 スマホの物とはまた違う、どこか懐かしい感じのするシャッター音と共にレンズが一度開閉する。

 「ありがとうございました~」

 少女はカメラをツカサから受け取り、軽い会釈と共にお礼をいってくる。その際に揺れる金髪がさらりと靡き、少女の笑顔と相まって、こちらの方が絵になるなと、ツカサは一瞬だけ見とれてしまった。

 「……あの、ボクの顔に何か付いてます?」

 「ああいや、申し訳ない。一瞬見蕩れてしまって」

 「えー、何ですかお兄さん。そのセリフ、ナンパにしては古臭いですよ?」

 「いやいや、そういうつもりじゃないんだけど……」

 確かに初対面の相手に見蕩れたなんて、ナンパと取られても仕方がないセリフだろう。ツカサにはそんなつもりはなかったが、油断していて口から零れたセリフなのは事実。

 古臭いナンパと聞いて、とある5人組を思い出したりもしたが、それは置いとくとして。

 「気に触ったなら謝ります。決して他意はないので……」

 「……んー、お兄さんが相手なら、お茶くらいお付き合いしますけど?」

 「はは、からかわないでくださいよ」

 ツカサは自他ともに認める生粋のオタクである。その性質は社会人になったとはいえ相変わらず陰湿向きで、ナンパとか見ず知らずの女性とお茶とか、そういう物に一切の耐性がないのだ。

 彼女いない歴と年齢がイコールなのは伊達じゃない。


 それではこれで、なんて言って、ツカサが逃げるように踵を返そうとすると、何故か少女は一瞬だけムッとした表情をし、ツカサの後を追うように付いてくる。

 「ボク、土浦 楓(つちうら かえで)って言います。お兄さんも観光で?」

 「まあ観光というか、羽休めというか……」

 ツカサには何故着いてこられているのかさっぱり分からないのだが、当たり障りのない質問ならば返さない理由もない。

 そこで、お互いに関東住まいなことや金髪少女……土浦の趣味が各地の大樹を写真に収めること、この辺りの観光名所についてなどの話をしばらく続ける事になった。

 異性との会話に慣れていないツカサでも会話を途切れさせることなく話せたのは、ひとえに土浦の話術が巧みだったということだ。

 そんな他愛の無い話を続けながら歩くことしばらく。決して広いとはいえない境内で、3人の誰とも遭遇しない事を不思議に思い始めた頃、それは起こった。

 キャーッという、金切り声のような悲鳴。それに続くように、

 「か、怪人だぁぁぁぁあ!?」

 「イカと……焼酎!? ビールではないのか!?」

 なんて騒ぐ声がそこかしこから湧く。多くはなかったとはいえ、それなりの参拝客がいた中の騒ぎ。誰もがパニックに陥り、一般人のほとんどが一斉に外へと向けて走り出した。

 「怪人!? なんで今ここに……!」

 その騒ぎに対し、何故か土浦は人の波に逆らうように走り出す。

 恐らくは元凶のもとへ。

 「あ、おい危ないぞ!?」

 本当に多少の縁とはいえ、ツカサとしては追わない選択肢はない。しかし初動が遅れたせいか、2人の距離は離れるばかりで。

 そうして、ようやく追いついたその場所では。


 「オイテメェら、椎名を連れ去ってどうするつもりだァ!!」

 大量の怪人に囲まれて動けずにいる霧崎とスズ、そしてリーダー格と思わしき男に羽交い締めにされている椎名の姿があった。

ツカサ「おい、お祓いしたのにまた面倒事かよ!?」

神様(?)「でもヒーローに会いたいんでしょう? なら騒ぎはいい事だよね!(善意)」

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