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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第一章 『悪の組織とご当地ヒーロー』

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作戦失敗

ブレイヴ・エレメンツに逃げられた後、ツカサ達は即座に撤退した。ブレイヴ・エレメンツの撃破、または捕獲が目的であったため、逃走を許した以上長居をする必要がないともいう。


「惜しくも、作戦は失敗に終わった。ツカサ君の変身形態が、彼女達の敵であるとバレた以上、彼女らは今後警戒を強めるだろう。じゃが、謎の怪生物が向こうの味方に付いているというのが分かったのは収穫でもある。状況は常に厳しいが、今は諸君の奮戦に期待する他ない。各員、本日の疲れを残さぬように、しっかりと休むことじゃ。では、本日の反省会はこれにて解散!」


カシワギ博士の簡単な挨拶の後、作戦参加者達はそれぞれ席を立ち三々五々に帰っていく。ツカサも長居することなく立ち去るが、やはりというか、足が重い。作戦の要であり、初見殺しの切り札に近い重要なポジションを任されていた作戦が失敗したのだ。本人が平気なつもりでも、態度には明らかに現れてしまう。

「しゃんとせんか若人。責任を感じるなとは言わんが、背負い過ぎるな」

声の主を見れば、カシワギ博士が両手に缶ジュースをぶら下げて歩いてくる。これは奢りじゃ、と笑いながらジュースを放られれば、ツカサも受け取らないワケにはいかない。

それから何処へ行くでもなく、基地の中を歩く2人。カシワギ博士の方は何も気負うことなくのんびりと歩いているのに対して、ツカサの方は未だに足取りが重い。


「のう、ツカサや。お前さんは、あの町の人々を見て何か感じたことはないか?」

「……強いて言えば、街の外の様子に対して関心が薄いことでしょうか?」

実際、この街の周辺は既にダークエルダーの支配下なのだ。なのにこの街の人々は、ヒーローがいるから自分達は大丈夫、と本気で考えているような節がある。

「そうじゃ。他のヒーローのいる町も似たような状況らしい。これはあくまで推測なんじゃが……ワシはヒーロー達の裏に何者かがいて、その何者かが住人達の思考をある程度操作しておるのではないか、と考えておる」

「まさかそんな……。すべての町を合わせたらかなりの規模ですよ?」

「じゃからまだ推測じゃ。ワシの思い過ごしであればいいのじゃが、な」


いずれの町でも、いまだヒーローの撃破例がない。それはつまり、ヒーローが撃破された場合に存在するだろう黒幕がどう動くのか分からないという事だ。相手の規模が想像できないのでは、どう戦っていいのかすら分からない。

「ま、目の前のヒーローに苦戦しとる内は何とも言えんのじゃがな。ホレ、お前さんも早く帰って休め。明日からも頑張ってもらわんとな」

低い背丈から伸びた腕は、ツカサの腰の辺りを二度叩く。そうしてヒラヒラと手を振って去っていく背中は、今のツカサのものよりも一回り大きく見えた。

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