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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第四章 『悪の組織と夏のデキゴト』 前編
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不思議な頼み事 その2

 夢の中で神様(?)から、ちょっと不思議な頼み事をされたツカサは、今度は見慣れた天井の下で目を覚ました。

 「あら、ようやくお目覚め? 目が覚めたのなら早速だけれど、その枕元に現れた怪しいものの説明をお願い出来るかしら」

 【怪しいとはなんだ!? 俺様には『白鶴八相』って立派な名前があるんだぜ!?】

 ちょこんとツカサの胸元付近で、ツカサの顔を覗くように座っていたヴォルトの問いに対し、ツカサの枕元で吠える白鶴。夢の中でもそうだったが、やはり現実でも喋るキーホルダーにしか見えない。

 というか夢だけれど夢じゃなかった状態なのだなと、改めて思うツカサ。

 今時の転生願望のある子供ですら見ないような夢を見たために、若干自己嫌悪に陥りそうになっていたのだが、現物があるならば話は別だ。

 「白鶴、お前がいるって事は、今日の夕方には例の事件が起こるって考えていいんだな?」

 【ん、おうよ。まだ時間はあるから急がなくても大丈夫だぜ?】

 という事は、あの夢での会話はきちんと存在したという事だ。夢とはいえきちんと意識もあったので、会話の内容はツカサも覚えている。

 「ちょっとツカサ?」

 「ああ、悪いヴォルト。説明するのはカシワギ博士も交えてにしてくれないか?」

 こうしてツカサは、神様(?)からのお願いゴト、もとい陰謀に巻き込まれる事になったのだが、それを自覚するのはもう少し後のお話。



 ◇



 「……ふむ、話はよー分からんが、とりあえず神を名乗る者から接触を受け、その『白鶴八相』という聖剣を渡してくれと頼まれた……ということじゃな?」

 「そんな感じです」

 ツカサはまず、ヴォルトとカシワギ博士に此度の夢の話を伝えた。個人的な依頼だったとはいえ、ツカサが関わる以上は何かしら組織にとってもかかわり合いが出てくる可能性もある。その辺りの判断を仰ぐためだ。

 「……まぁ問題ないのではないか? むしろ約束をした以上、ここで反故にする方が問題になりそうでな。それに報酬も貰っておるのじゃろ?」

 「あっはい」

 そしてツカサは、白鶴と共に枕元に置かれていた物を取り出す。

 「これは……鉱石かのぅ?」

 ゴトリ、という音と共に机へと置かれたそれは、黄緑色をしたバスケットボールサイズの鉱物であった。ヴォルトに確認したところ、白鶴と同時に枕元へと現れたそうだからこれが報酬で間違いないのだろう。

 ただツカサとしては売る以外に用途が思いつかないのだが。


 「白鶴、あの神様はこれについて何か言ってたか?」

 分からない物は聞いてみようと、とりあえず神様と一緒にいた白鶴へと訊ねる。

 【あー……なんだっけな。確か何とかストーンとかいう、今では発掘できないような貴重品だって話を……】

 「なんじゃって、それは本当かね!?」

 【お、おう】

 白鶴の曖昧な話を聞いて、何故か博士が興奮したように立ち上がる。

 「もしそれが本当ならばこうしちゃおれん。ツカサくん、これはワシが買い取ろう。早速解析とベルトへの組込みを視野にいれねば。ああ、悪いがコクライベルトと白狐剣はメンテの為にしばらく預かるからな。それとワシはしばらく忙しくなりそうなので、今日はもう帰って休みなさい。ではの!」

 と、言いたいだけ宣って博士は何とかストーンを引っ付かみ研究室へと入っていった。

 残ったのは静寂と、ツカサとヴォルトとキーホルダー。


 「………え、もしかして黒タイツしか残ってない?」

 ツカサの戦闘手段と言えば、悪の組織として活動する際に使用する黒雷と、ヒーローっぽい活動をする時用の白狐剣ハクの二通りであったが、今はその両方を持っていかれた形となる。

 元々白狐剣はこの間の戦闘で折れてしまった為、こちらは修理に出すつもりではいたのだが、コクライベルトまで持っていかれるのは予想外である。

 【おうアンちゃん。よく状況が分からねぇんだが、さっきの幼女が預かるって言ってたのは、もしかしてアンちゃんの武器かい?】

 「……まぁ武器と言えば武器か。アレなしで戦闘するのは不安なくらい大事なものだったんだが……」

 それでも、今のツカサには気功のチカラとヴォルトがついている。博士もそれを加味して装備を取り上げたのかもしれないが、不安なことに変わりはない。

 「今日は珍しく、人様の戦闘に巻き込まれに行くのだものね。意気揚々と割り込んでおいて足でまといじゃ、カッコ悪くて仕方ないわねぇ」

 クスクスとヴォルトは笑い、ふわりと舞ってからヴォルト・ギアへと戻っていく。

 確かに、聖剣を届けるのが役割とはいえ、それで自分まで守ってもらっていては小っ恥ずかしい。


 【オイオイ、大丈夫なのか? 少年の方に聖剣を使わせられれば状況を打破できるという実績があるとはいえ、説得に失敗したら世界は破滅なんだからな?】

 「まぁ……なんとかなるでしょ。今度余ってる怪人スーツでも貰うとするさ」

 若干の不安を感じながらも、ツカサはともかく行かねばならぬと席を立つ。帰宅途中の河原で立ち止まれば見つかると言うのだから、まずはそれを信じて動くところから始めよう。

 「逆に黒タイツの方が、今後個人を特定されずに済むからいいんじゃないか?」

 「そうね、死なずにすむならそれが一番ね」

 「……せいぜい頑張らせていただきます」

 目指せハッピーエンド。邪神の復活しない明るい未来へ。



 ◇



 「キャー!」

 「な、なんだお前ら!?」

 ツカサが言われた通りの場所まで来て、ゆっくり辺りを見回したところ、普段は人目にも着きにくい場所でソレは起こっていた。

 「うわ、ホントに襲われてるよ。てかあんな人目に着きにくい橋の下でカップルとか、あれ絶対何かやってんでしょ。なぁもう無視して帰っていいか?」

 【なんでリア充だと見せつけられた瞬間にやる気無くしてんだよアンちゃん! 助けなきゃ邪神復活で人類全てがSANチェックだって言ってんだろォがよ!】

 まだ日の高い夏場でも若干薄暗く見えるような、そんな橋の下で一組の男女が10匹ほどのモンスターに襲われてる。

 モンスターと表現しているのは、単純にそうとしか表現できないからだ。具体的に言うなれば、『2mを超す夜の如き黒き体躯に一対の蝙蝠の翼を持つ、赤い眼光が特徴的な牙の生えた生物』という表現が近い。

 それが今、カップルを囲み壁際へと追い詰めるようにして並んでいる。

 酷く日常から乖離した光景故に、本来ならば誰も近寄りたくはないような空間。

 その中にツカサは、これから飛び込まなければならない。


 「いや、キツイでしょこれ……」

 今のツカサがいる位置はまだ両者から見つかっていない様子ではあるが、こういう場面では躊躇すればするほど危険度が増すのがセオリー。

 覚悟を決めて飛び込まねばならない。とはいえ、ツカサとしてはすこぶる面倒くさいという意思が強いのであるが。

 【早くしろアンちゃん! 間に合わなくなっても知らんぞ!】

 「はいはい分かった分かった」

 白鶴に急かされながら、ツカサはとりあえず黒タイツを装備し、一般的なダークエルダーの戦闘員へと成り代わる。

 これでとりあえず防御面と、ある程度の身バレ防止にはなるだろう。

 「もうちゃっちゃと片付けて帰ろう」

 ツカサはそう考えると、とりあえず気功のチカラを解放し、渦中へと飛び込んだ。

 主人公の雑なパワーアップの布石。

 なんとかストーン、適当な名前でも充ててやろうかと思いましたが、不便でないようならこのままで行くかもしれません。

 キラ〇イストーンっぽい物にしようかと思いましたが、どうしても脳内のイメージはゲ〇ター炉心です。なのでいつかゲッ〇ーロボっぽいことやり始めるかもしれません。

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