表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第四章 『悪の組織と夏のデキゴト』 前編
118/385

激突! 海水浴場の決戦! その6

シルバーウィーク連続投稿の4本目デス。

読まれる際はご注意くださいデス。

 華雄ウツボと黒雷の、互いに必殺と思しき技の激突は黒雷の勝利に終わった。

 余りにも大規模な衝突だった為に、誰もがその余韻に浸り、動けずにいる、そんな中で。

 【まだだ!】【まだ】【終わっては】【いない!】

 一時は恐怖に駆られ飛び退いた華雄ウツボだったが、五体が無事で槍もあり、戦う意思もまだ健在であればそれはまだ戦いの最中(さなか)である。

 しかも津波を相殺されたとしても、それを利用して高所は取った。先程の一撃以外は全てその槍で弾けるのも実証済みであり、己が有利だと、そう結論付けるには十分である。

 【覚悟せよ!】

 もう技の用意などさせない。

 次がホントの最後だと決めた華雄ウツボは、己の全身全霊を込めた一撃を放つため大槍を構える。だが、

 「もうダメよ。アナタはすでに、私達の手のひらの上なんだもの」

 不意に女の声がして、華雄ウツボの身体が抗えない力によって引っ張られる。

 それが磁力による物だと、彼には知る由もないだろう。あれだけ攻撃を受けている中でなら、悟られぬように帯電させるタイミングが幾らでもあったという事だ。


 【うおっ】

 それは時間にすれば一瞬。だが、攻撃のタイミングを測っていた華雄ウツボにとってそれは、全てを台無しにされる最悪の一手であった。

 その手の大槍を突き出す前に、すでに己の眼前に黒雷がいる。

 「トンファーブースト……」

 そして黒雷はすでに構えており、その一連の動きに何の澱みもない。

 もはや迎撃は間に合わず。その身体は敵の攻撃に対し無防備である。

 (【嗚呼……】)

 そして華雄ウツボは、己の敗北を悟った。

 「電撃・鉄山靠(てつざんこう)!!」

 雷を纏い、トンファーによる加速を行った鉄山靠。それは華雄ウツボ程の巨躯が空中より落下してきた相対速度を含め、破壊力となって華雄ウツボを襲う。

 【見事!】

 最後に賞賛の一言を掛けられた事に満足しつつ、華雄ウツボは吹き飛ばされ、その身を海面へと叩きつけられた所で気を失った。


 黒雷の勝利である。



 ◇



 「……ふぅ……」

 華雄ウツボが海へと沈み、数秒の後に黒雷はようやく一息をついた。

 正直に言えば、ずっと遠距離攻撃をしていた時からずっと頭は「近付かれたらどうしよう」という思考でいっぱいであったのだ。

 サラマンダーも大槍使いだが、彼女の技はまだまだ荒削りである為受けるのは容易い。だが歴戦の勇士である華雄ウツボの槍さばきは、年季とその長身も合わせて次元が違うのだと感覚で理解していた為、ずっと被弾覚悟で突進された場合のシミュレーションで忙しかったのだ。

 というか、「懐潜ったら鉄山靠やってみたい」しか頭に無かったとも言える。

 【素晴らしい! 見事な戦いぶりでした!】

 パチパチと拍手の音に振り向けば、満面の笑みで黒雷へと歩み寄る貂蝉アンコウの姿。

 それを見て本能的に嫌な予感がした黒雷は、即座にトンファーを仕舞って両手を上に。もう戦う気は無いというアピールである。

 【あらあらあら………ねぇ、ちょーっとだけ、お姉さんと、イイコトしない?】

 「ン断固として拒否するゥ!!」

 今回は奇跡的に怪我なく勝利したが、精神的な疲労はピークに近い。

 そもそもレジャー目的で神奈川まで来て、何が悲しくて二連戦もせねばならないのか。


 【ねぇってば~! ちょっとだけだから、いいでしょう? 私も欲求不満なのよ~♡】

 「断固拒否! 断固拒否である! そもそも私はブレイヴ・エレメンツに負け続けの身! あの二人を軽く足らうような相手に連戦などできるものか!」

 ウンディーネを呂布イカに譲ってしまい、手持ち無沙汰になった貂蝉アンコウは食い下がる。

 彼女の中では、華雄ウツボが負けたら黒雷が自分の相手をしてくれる算段だったのだろうが、黒雷はそんなバトルジャンキーではなく、中身はただの特撮オタクである。

 絶対に戦闘()りたくはないし、他種族とはいえ痛烈なまでの美貌を持つ相手とタイマンなぞ、目移りして集中しきれずに負けるだけなのは分かりきっているのだ。

 【ねぇねぇねぇ~♪】

 「ええい執拗いな!? そんなに戦いたければ丁度いいバトルジャンキーが来ているから、そちらとやればいい!」

 「呼んだか我が弟子ィィィィィ!!」

 あまりのしつこさに黒雷がとある人物を売るのと、その人物が待ってましたとばかりに文字通り飛んでくるのはほぼ同時。


 そいつは短パンにアロハシャツ姿で、全身の生傷と筋肉を惜しげも無く見せ付け、その強面の風貌に良く似合う黒いサングラスをキラリと光らせ登場する。

 それはツカサと同じマンションに住み、かつて師事を仰いだあの男。

 「紹介しよう……んー……彼はミスターK!ミスターKだ!」

 「どうも、ミスターKだ。ヤり足りないなら俺が相手をしよう」

 そう、ミスターK! またの名を、霧崎 龍馬である!

 ダークエルダーのみんなで海に行くよと話をしたら、何故か椎名と一緒になって着いてきた漢である!!

 ちなみにミスターKというのは、ここで本名を呼ぶのもなぁとなった黒雷が付けたものだ。深い意味はない。

 【ふーん……アナタ、強そうね。いいわ、アナタで我慢してあげる】

 「はっは! おやつのつもりで摘む気のままでいたら、その腹食い破ってやるから覚悟しとけ!」

 【あら怖い。……じゃあ、楽しませてもらおうかしら】


 バトルジャンキー同士気が合ったのか、挨拶もそこそこにバトり始めるふたり。気を纏った拳と鉄扇がぶつかり合い、甲高い音を響かせながら徐々に戦場を移動させてゆく。

 彼らはこのまま放って置いても大丈夫だろう。問題は、

 「これが初の敗北になる、のか? ……さて、ブレイヴ・エレメンツよ。貴様らはこれからどうする?」

 タイマンとはいえ、圧倒的な実力差で実質的に負けたふたり。彼女らが今何を思うのかによって、黒雷達の侵略作戦にも大きく影響が出る。

 「組織としては彼女らの心が折れて、戦いから身を引いてくれたら嬉しい。けど、個人としては乗り越えて強くなって欲しいって所かしら?」

 「はっはっは。ヴォルトには筒抜けだな」

 「当然よ。だって……私も同じ気持ちだもの」

 ヴォルト・ギアの中から、声だけを黒雷へと届けるヴォルト。顔を見せたくない理由が何かあるのか、今日は一度もギアから出てこないが。

 まぁ、何かしらあるのだろうと、黒雷は深く考えない事にする。

 ただ、何故か分からないが。姿を見せない彼女の視線が、謎のマスコットであるエルゥ・エルに向けられているような、そんな気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ