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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第四章 『悪の組織と夏のデキゴト』 前編
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激突! 海水浴場の決戦! その3

シルバーウィーク前に、なんか物凄く筆が乗ったので連続投稿です。

こちらが連続投稿の1本目になり、1時間に1本ずつ投稿していきます。

 3組の一騎打ちも中盤へと差し掛かり、黒タイツ達と雑魚共は何故か互いに意気投合し、ビールと串焼きを片手に決闘を観戦していた。

 「え~ビールに焼き鳥、焼きそばー。ジュースもあれば各種ツマミもあるっスよ~」

 そんな中を、この間ツカサの部下となったクノイチ、スズが練り歩く。その手にはこの騒動で売れ残ってしまった屋台の商品と、よく冷えたビールがジョッキの状態で置かれ、両者を忍法を使って最適な温度を保ちつつ売り捌いているのだ。

 (こんな事してて、大丈夫なんスかねぇ……)

 スズは前回の抗争から入社した為か、上手く空気に馴染めている気がしていない。元々フリーの忍者である為か、どうもこういう集団行動というものが苦手なのも一因であるが。


 「そこだ、黒雷! 必殺のアンダースロー・トンファーだ!!」

 「ばっかお前、そこはスパイラルトンファー・ハリケーンだろうがッ!」

 「ええい、何故あやつはトンファー使いのクセして蹴り技が少ないのだ!? トンファー使いとしてなっちゃいない!」

 (いやいや、トンファーってそういう物じゃないっスよ……?)

 そう、ノリについていけないのである。

 悪の組織というのだから、もっとこう……失敗した者には重い罰を、成功者は妬まれ足を引っ張られるみたいな、殺伐とした世界を想像していたのだが、どうにも緩すぎる気がする。

 身を投げるつもりで入社したというのに、拍子抜けもいいところだ。

 【愉快】【愉快】

 「お、呑めるなアンタ! よし、俺のとっておきの呑み方を教えてやる! いいか、このビールにはな……」

 【そうか】【そういうこと】【だったのか】【トンファー】【とは】【ブレイヴ・エレメンツ】【とは】

 「衛生兵、衛生兵! コイツ飲み過ぎで目を回しているぞ! 塩水に漬ければ治るのか!?」


 もうすっかり打ち解けてしまった両軍はもはや宴会騒ぎ。決闘中の6名を除いて、もはや戦意の欠片すらも残っちゃいない。

 (まさか、これが狙い……? なわけないっスよねぇ)

 とにかく、スズに出された指示は簡単なもの。“変装し隠れていろ。もし可能なら残り物を売り捌け”だけだ。ツカサが何を思ってこの指示を出したかは分からないし、それがどんな結果になるのかはスズには想像もつかない。

 (ま、不自然でなく移動しながら戦闘を観察できるという点では悪くないっスね)

 ツカサの部下、という位置に収まりはしているが、この前まで彼は大怪我で入院していたのだ。彼がどんな上司なのかも把握せぬままこの決闘である。


 (強い……のは分かるんスけどね。……ま、気楽にやらせてもらうっスよ)

 そう自分の中でとりあえず思考を打ち切り、スズは購買ガールとしての職務に打ち込む。

 そう、彼女は知らないのだ。

 ツカサが「もったいない」の精神だけでそのような指示を出したのだと。

 深読みするだけ無意味だと彼女が悟るのは、もうちょっと先である。



 ◇



 【どうした】【そろそろ】【限界か?】

 「うるせぇ! オレはまだまだやれるぜ!」

 サラマンダー対呂布イカの決闘は、少しだけ様相が異なってきている。

 今までは槍を避けるだけの呂布イカだったが、今度はその方天戟を用いてサラマンダーの槍を弾いているのだ。

 しかしそれは、サラマンダーの攻撃精度が上がったわけではない。その証拠に、

 「うおっ……とォ!」

 今もサラマンダーの槍が大きく外へと弾かれ、彼女はそれを制御仕切れずに足元をふらつかせている。

 そう、呂布イカはわざと、サラマンダーの体力を削る為に大きく攻撃を弾くようにしているのだ。

 「ハァッ……ハァッ……んく……!」

 サラマンダーとて、それには気付いている。気づいてはいるのだが。


 【また】【手が】【止まったな】

 轟ッと風が唸り、砂が爆散するように広がる。

 呂布イカの方天戟による一撃である。

 サラマンダーが手を止めた時に、呂布イカは攻撃を開始するのだ。

 その一撃は非常に重く、鋭い。先程サラマンダーも得物である大槍で防ごうとしたのだが、槍と方天戟が接触した瞬間に足が砂の中へと埋まり、慌てて炎の噴射による脱出を試み成功したばかりなのだ。

 そのまま脱出していなければ、釘を打つようにして砂へと沈められていただろう。

 「くそっ……たれ!」

 此度の攻撃もスレスレで回避し、その爆風に乗せられるように距離をとる。そして体制を立て直す為に数度、各間接から炎を噴き出しなんとか接近される前に槍を構える事ができた。

 【まるで】【曲芸】【だな】【地上のは】【見た事は】【ないが】

 「ハァ……ハァ……! くそ、それで褒めてるつもりかよ……!?」


 サラマンダーに余裕はない。休みなく動き続ける事を強いられていたせいで体力的にも限界が近い事もあるが、先の攻撃を槍で受け止めた際のダメージが四肢へと効いてきているのだ。

 このままでは、遠からずサラマンダーは戦闘不能となるだろう。

 一か八か必殺技を試す、という道もあるにはあるが、もしもそれを受けてなお、呂布イカが戦闘続行可能であった場合、反動で精細を欠いたサラマンダーでは次の一撃を受ける事も叶わなくなる。

 (万事休す、ってヤツかなぁこれは……)

 何故海へと遊びに来ておいて、ダークエルダーを見つけ変身した状態で接触し、流されるままこうして生命の危険に晒されているのか。サラマンダーには、もうその思考に回すだけの体力も惜しい。


 (こうなりゃ、ぶっ倒れる覚悟で、全力全開を!!)

 サラマンダーは覚悟を決め、その大槍に赤を超え、青白くまでなった焔を宿す。宿そうとしたのだ。

 「え?」

 宿そうと、そう思った矢先に、横合いから何かが飛んできた。

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