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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第四章 『悪の組織と夏のデキゴト』 前編
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激突! 海水浴場の決戦! その2

 「うおぉぉぉお!」

 突然発生した浜辺での決戦、その中で、紅き大槍使いサラマンダーは果敢に己の得物を振るっていた。

 【……】【スジは】【悪くない】【が】【練度が】【足りない】【しかも】【我流】【故にか】【技の】【ムラが】【多すぎる】

 しかしサラマンダーと相対する呂布イカは飄々としたもので、その八本足と柔軟な身体を巧みに使い、するりするりと避けてしまう。その手(触手?)の方天戟を使用するのは、たまにサラマンダーの攻撃が呂布イカの芯を捉えそうになる時だけ。

 苛烈に攻め立てているというのに、剣戟の音はほんの僅か。相手からは一切の攻撃が飛んでこず、所々指南のような口を挟まれる。

 その状況で、サラマンダーのプライドに傷が付かぬはずはない。


 「クソッ……クソッ……クソッ!」

 舐めていたのはどちらなのかと、サラマンダーだって理解している。むしろそんなに自信過剰だった自身にこそ更なる怒りが沸き、結果として更に攻撃は荒く、直線的になってゆく。

 【……】【……】

 呂布イカの表情は変わらない。そもそも人の身で、交流の浅い彼らの表情を読み取れるものでもないが。しかしサラマンダーにはそれが、不甲斐ない自分を哀れんでいるようにも見えて。

 「うおおおおおおお!!」

 今まで正義として振舞っていた己すらも自己否定してしまいそうになり、より苛烈に槍を振るう。

 例えそれが、負のスパイラルの入口だと知った上でも。



 ◇



 【あちらも遊んでいるようですねぇ】

 「くっ……余所見をするなんて、余裕ですね……!」

 【実際に余裕ですからね……?】

 一方こちらはウンディーネ対貂蝉アンコウ。

 ウンディーネがその手に握る刀を縦横無尽に振るうのに対し、貂蝉アンコウはその手に持つ二振りの鉄扇と、硬い尾ヒレで形成された両足、そして自由自在に動かせる提灯を振り回し、ウンディーネのおよそ5倍の手数で迎え撃つ。

 ヒーローとして人を超えた力を振るう事のできるウンディーネでも、風に揺れる柳のように緩く淡く受け流す貂蝉アンコウに対しては攻めあぐねてしまっていて、攻撃を振るえばそれの回避に合わせて何かしらの攻撃が飛んでくる現状は、非常にやりにくく思っていた。


 「水刃時雨!」

 【フフフ……水遊びであれば、私達にもできますよ?】

 ウンディーネ十八番(おはこ)の多彩な水技も、水生生物の前では遊びと呼ばれるほど。全く同質同量の技をもって返され、戦況を変えることができない。

 「くっ……!」

 【少しだけ……理解ができましたよ】

 貂蝉アンコウは話すタイミングでも立ち止まらず、常に踊るような仕草を続けている。それでいてどの場面で攻撃しても華麗に避けてしまうのだからタチが悪い。

 【あの赤い子は、力に振り回されている。素人上がりの、愚直なパワータイプ】

 貂蝉アンコウは歌うように、笑うように言葉を紡ぐ。


 【貴女は剣術を収めている。だけれど、それは殺す剣ではなく生かす剣。人を守る剣にして……】

 一拍。

 【戦いを長く長く楽しむ為の剣。ここでは敢えて、挑発を含めてこう揶揄しましょうか】

 手数だけは多い器用貧乏、と。暗い笑い声がした。

 「よりによって私の剣を、流派を、愚弄しますか……!!」

 冷静沈着が常のウンディーネとて、こればかりは許せるものではなかった。相手を分析するのを後回しとし、愚直にも距離を詰めていく。

 【まぁ……。貴女は守るべきモノを見誤っているのですね……?】

 クスクスと。妖艶たる美女はその鉄扇で口元を隠し、嘲笑う。

 甲高い金属音を響かせ、2人は踊る。

 それは正しく武というより舞。舞闘であった。



 ◇



 「雷散弾! ラービィ・リング! サンダー・バスター! 」

 【くぅ……!】

 一方で黒雷対華雄ウツボは、黒雷が一方的に押していた。

 ……いや、押しているというよりは、黒雷が常に一定の距離を空けながら遠距離攻撃を連打しているだけである。

 それぞれの得物のリーチ差を考え、早々に近付く事を諦めた黒雷の苦肉の策であった。

 「すまんなぁ華雄殿! 私は戦士ではあるが武人ではない! 卑怯で悪いが手数で圧倒させてもらうぞ!」

 【……】【何】【腹は立つ】【が】【これはこれで】【正しい】【在り方】【である】【勉強に】【なるな】

 華雄ウツボも何故か理解を示してくれたので、黒雷も心苦しいと思いつつ手を休めたりはしない。

 そもそも黒雷は悪の組織の一員。勝つ為なら何でもするのがお約束である。それこそが美学であり、数の暴力こそが悪の組織の真骨頂ではないか。


 「八つ裂き電ノ光輪! ライトニング・ニードル! トンファー・ブーメラン!」

 黒雷の手は止まらない。名を変え品を変え、延々と雷属性の遠距離攻撃を繰り返す。

 【だが】【受け方も】【分かってきた】【ネタ切れが】【お前の】【最後だ】

 華雄ウツボとて、天下に名を轟かす武人である。ただ黙って避けるばかりでなく、徐々にではあるが間合いを詰め、回避の精度も上がっていく。

 この膠着状態もあと僅かしか保たなそうであり、黒雷は焦る事しかできない。

 戦況が傾くのも、もうすぐである。

 ちなみに背景の黒タイツVS雑魚達の激突は、お互い一歩も譲らず膠着状態に陥り、双方諦めてこの3組の一騎打ちを観戦する方向にシフトしています。

 どこぞのクノイチは屋台の売れ残りをかき集めて「ビールに焼きそば、豚串はいかがっスか~!」って言いながら両軍の間を縫って歩き、勝手に倍率等々を設けて掛け金を集めたりしています。完全に忍〇まのき〇丸ポジションですね。

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