激突! 海水浴場の決戦! その1
少々短いですが、キリのいいところまで。
開戦の合図の銅鑼が鳴り響き、両軍が遂に激突した。
雄叫びを上げ、武器を手に、前へと。
雑魚の群れと全身黒タイツが互いに距離を詰め、交差し、入り乱れる。
もはや海水浴場などという娯楽施設の面影なぞなく、あるのはただの命懸けの戦場だ。
珍妙な者達の織り成すコントラストが砂浜を染め、それを見る全ての者から容赦なく正気度を削り取ってゆく。
『うおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!』
そんな両軍の雄叫びが重なる中、ぽっかりと空く空間がある。
その空間にはたった6人……いや、少なくとも3人は人間だが、半分はまた別の種族……が立っている。
ブレイヴ・エレメンツと黒雷の3人。そしてそれに相対する呂布イカと貂蝉アンコウ、華雄ウツボである。
【誰からでも】【いい】【相対を】
「……この状況でも一騎討ちをご所望ってか」
サラマンダーは何処か嬉しそうに、その手の大槍を呂布イカへと向ける。
「アンタの相手はオレがする」
それを聞いて、呂布イカは嬉しそうに足の一本で砂を強かに打つと、自らもまた方天戟を頭上で振り回し、構えた。
【では私は……そちらの蒼い子をもらいますね】
呂布イカとは違い流暢に話す貂蝉アンコウは、ウンディーネに視線だけで着いてこいと誘導すると、空間のほぼ中央を陣取った呂布イカとサラマンダーから離れるようにして円の外周へと向かう。
「ご指名と言うならば、習いましょう?」
ウンディーネもまたそれに従い、外周へ。
【我ら】【向こう】【ついて】【参れ】
「はは、すまんな華雄殿。私は彼女らほど強くはないもので、余り物を引かせてしまったようだ」
【なに】【精霊と共に】【ある者が】【謙遜するな】
華雄ウツボと黒雷もまた、軽口の応酬をしつつ(少なくとも黒雷は割と本音)、ウンディーネとは反対側へと向かう。
3人の移動に合わせ、雑魚と黒タイツのうねりもまた形を変える。砂浜を広く満遍なく戦場とするべく、大きく縦長の楕円へと形を変えたのだ。
「ウォォォオオオ! 俺達のバカンスを返せぇぇえ!」
「まだトンテキ食えてねぇんだぞゴラァ!」
「たまには平和な作戦だなとか思ってたのにぃぃぃ!」
【知るか】【ァァァァ!?】
……何やら黒タイツ側からの怨念というか呪詛の言葉が強いが、それはそれとして。
大将が中央を陣取る以上、お互いの軍に前も後ろもありはしない。衛生兵を除く全ての兵が参戦し、その全てが一進一退の攻防を繰り広げる。
「じゃ、オレ達も始めようか」
一騎討ちの形を取ったならば、正々堂々と戦うのが当然である。精霊戦士としての名乗りは上げたが、まだ誰も個別で名乗ってはいない。
ならば名乗らねばならない!
「オレの名はサラマンダー! アンタを倒す戦士の名だ!」
【姓は呂】【名は布】【字名は烏賊】【真名は】【強敵と】【認めた】【その時に】
「私はウンディーネ。貴女を、斬ります」
【姓は貂、名は蝉。字名は鮟鱇。私も真名は後でね?】
「我が名は黒雷! お前を倒せるのはただひとり!」
【姓は華】【名は雄】【字名は鱓】【いざ】【尋常に】
それぞれがそれぞれと名乗りを交わし、己の得物を構える。そして……。
再び浜辺に響く銅鑼の音。それを合図に3人が駆け出し、激突する。
しなくてもよい決戦が、今始まる──!!
調べてみたら貂蝉は架空の人物で、称号みたいな扱いのようですね。姓名で分ける事は無さそうですが、まぁこの鮟鱇は別物という事で……。
ちなみに字名(小名?)は三国志とかでよく見るものですね。真名は恋〇無双からの、『親しいと思った者にのみ名乗る特別な名前』みたいな扱いです。
そして恋〇無双の要素を絡めると、途端に性別が怪しくなる罠。もはやフィクションでの英雄TS物はありふれている中、この魚介類は一体どちらなのか……!?