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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第三章 『悪の組織ととある抗争』
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漢達のその後 その1

 霧崎との決着にて、此度の傭兵事業は大成功という形で収まった。

 途中から傭兵事業そっちのけで霧崎達とバトってた気もするが、それは些細な事である。結果良ければ全て良し。

 「ああ、港での作戦は完了した。そちらも撤収作業急げ! 支部に戻した機材の後片付けは後日でもいいから、今は一刻でも早く布団に潜る事だけを考えろ!」

 メジャー・スミスが中心となって指示を飛ばし、本日行われた全方面の作戦がようやく完了しようとしている。

 日中から交代しながらも働き通しだった戦闘員達……特に港で死闘を繰り広げた者達は、支部に着くなり即刻帰宅か通院か支部の仮眠室で寝るかのどれかの選択肢を迫られ、誰も彼もが重たい足を引きずってそれぞれの道を歩いていた。


 「いやー、まさに死屍累々って感じだなー」

 「ツカサ、アナタ平気そうな顔してるけど、ソレは私が貴方の神経を麻痺させてるだけよ? 解除したら真っ先に泡吹いて倒れるのはアナタ。だから今はとりあえず眠ってなさいな?」

 「そうしたいのは山々なんだけど、ストレッチャーで運ばれてると緊張して眠れないじゃない?」

 「あら、アナタがツカサの担当者ね? この子、至る所が“レア”程度に焼けているはずだから、培養液とかあったらそちらに突っ込んだ方が早いと思うわ。……え、今回は用意していない? そう、残念ね」

 ツカサに言っても無駄と判断したヴォルトは、担当の医師がストレッチャーと並走するのに合わせて会話をそちらへと移し、言うだけ言ったらさっと離れてしまった。

 確かに精密機器のただ中に、電力の権化が居座るのも都合が悪いのだろう。


 「はい、じゃあちょっと麻酔効果のあるスタンプ押しますねー。カシワギ博士の新作だからコワクナイデスヨー」

 深夜になろうと働く人はいる。それはこの悪の組織ダークエルダーも例外ではない。

 現在はあらゆる医療部門の専門スタッフが一同に会し、患者を次々と応急処置しては病室へ送り付けるという動作を繰り返していた。

 主に気功使いにやられた者の怪我人が多く、彼らは黒タイツの上からでも平然と内臓へとダメージを通してくる為、最も厄介な敵だったと言えるだろう。

 その中でも特に重体なのがツカサなのだが、半分以上が自傷ダメージみたいなものなのでなんとも言えない雰囲気となっている。

 ツカサは今回も頑張ったはずなのだが、外見としては右腕がへし折れているだけのため怪我を評価されにくいのだ。

 骨折自体も重症なのだが。無理に気を張って痛がらないというのも損なものである。


 「あ、そうだ。椎名ちゃんは大丈夫でしたか?」

 ストレッチャーで手術室一直線のツカサは、何を思ってか傍にいる看護婦へと問い掛ける。

 「彼女なら大丈夫ですよ。まだ目覚めてはいませんが、薬も抜けるものでしたし、外傷もほとんどありません。時間を掛けて治療すれば、間違いなく健康になるでしょう」

 「そうですか。……よかったぁー……」

 そう言ってツカサはようやく眠る。麻酔が打たれたというのもあるが、一番の心配事がとりあえず一段落着いたというのが大きいのだろう。

 そのままストレッチャーは手術室の扉を叩いて開き、その奥へと消えていった。

 ここからは、医療従事者達の戦場である。



 ◇



 そして、三日の時が過ぎた。

 「──ハッ……! 見慣れぬ、天井……!」

 オタクは病室で目覚めたらこれを言わねばならないジンクスでもあるのか。

 三日振りに目覚めたツカサは、恐る恐る両手両足を動かしながら、何か後遺症が残ったりしていないかを念入りに確認する。

 目が覚めた瞬間目に入った、通知だらけのスマホを手に取るのは非常に怖かったが、連絡をくれた全員に無事だというメッセージを返してとりあえず一心地。

 「あら、ようやくお目覚め?」

 そんな事をしていたら、大人姿のヴォルトが入室してきた。手術前に一度別れて、彼女はその足で(飛んでいるが)カシワギ博士の元へと行ったと思っていたのだが。

 「たまたま様子を見に来た日にアナタが起きたのよ。博士が『麻酔スタンプが強力過ぎたんじゃな。改良せねばのぅ……』なんて落ち込んでたわ」

 「ああ、症状のせいじゃなくて麻酔の効果なのね……」


 その後もツカサとヴォルトは、何をするでもなくのんびりと語らう。

 毎日が目まぐるしいというか、ツカサが大人しくしているのは入院している時くらいしかないのだ。

 ヴォルトはヴォルトでそんな日々も楽しく観察しているが、落ち着いた日常も嫌いではないという。

 「ああ、そういえばアナタが寝ている間に、事後処理が大方済んだみたいよ。聞きたい?」

 「そりゃあね。3日も空いてると、何が変わってるのかさえ分からないから」

 「それもそうね。いいわ、私が特別に教えて差し上げましょう」


 ヴォルトはくすくすと笑いながら、出来る女のような所作で懐から書類を引き出し、わざわざ必要としない赤縁メガネを装備し、芝居がかった動作で脚を組んだ。

 「まずは、そうね。誰の報告から教えようかしら──?」

どこかで近々投稿すると言っていた短編(連載)小説、『オワリの前の恋話』という物を投稿し始めました。

「死ぬ間際にようやくくっ付くカップルとか可愛いんじゃね?」とかいう歪んだコンセプトの下で書き始めた作品です。

とはいえ、そちらは息抜きにちょっとずつ進める程度に留めるつもりなので、更新速度はお察しの通りです。


こちらもそろそろ新章間近ですし、どうぞこれからも末永くお付き合いのほどを。

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