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悪の組織とその美学  作者: 桜椛 牡丹
第一章 『悪の組織とご当地ヒーロー』

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そのベルト、実験段階につき その1

ツカサは博士の研究室を訪れた。

以前話のあった特撮によくある変身ベルト……あれの被験者になる・ならないの話を、ブレイヴ・エレメンツと戦闘した後にしようとなっていたはずだ。

コンコンコン、と三度ノックし、入室の返事が返ってから入る。中は前に来た時と大した違いはないようだったが、博士の向かう机の上には件のベルトが鎮座していた。


「おお、ツカサ君の方から来てくれるとは、呼び出す手間が省けた。これの話をしに来たのじゃろう?」

「ええ。まだ実戦で使うかどうかは分かりませんが、被験者として装着する事はできますから」

ツカサが苦笑混じりに話せば、博士も軽く頷いてからベルトを手に持ち渡してくる。

バックル部分がちょっとゴツイだけのそれは、特撮好きのツカサからすれば平成初期の頃のデザインを思い起こさせるシンプルなもの。色合いが全体的に黒いのは、悪の組織のイメージとしてだろうか。


「そのベルト自体は確かに強力なんじゃが、それで身体能力を上げると日常生活に影響があるのではないか、という懸念があってな?」

「影響とは?」

「簡単に言えばギャップじゃな。変身中は普段よりも身体能力があがり、凄まじい力で行動する事ができる。じゃが、変身を解いた後は元通りじゃ。急に身体が重くなったと感じるやもしれん。そのあたりの折合いをどう着けるかが問題なのじゃよ」

もうそこは装着者自身が気を付けるしかないのじゃがな、と博士は言葉を締めくくる。強すぎる力は身を滅ぼすというが、まさにその事だろう。人間は誰しも、便利な物に慣れたら不便な環境には戻りたがらない生き物なのだから。


「うだうだ言う前に試してみるかの。これからちょっとトレーニングルームまで付き合っとくれ」

「分かりました」


未だ実験段階の変身アイテム。これが実戦に投入できれば、各地のヒーローとの勢力争いにも終止符を打つ事ができるかもしれない。そんな期待を胸に、ツカサは受け取ったベルトを握りしめるのだった。

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