喜びと喪失
薄暗い地下の牢屋にやってきたのは筋肉質でカウボーイ姿のステインという男と短パンでカジュアルな服装のチャラついたマリアという女だ。
第一印象では関わりたくなかったがこの状況では贅沢を言ってられない。
「助けて下さい!牢屋に入れられて出られないんです!」俺は必死だった。
「お前・・・下着泥棒だろ?」とステインが顔を近づけて真顔で言う
「ちょwwwwうけるwww」横で見ていたマリアが笑う
「違いますよ」と俺は呆れた
「わかった!・・・お前が盗んだのはパンツだろ!」とまたステインが言う
「いやだから盗んでねーよ!しかもどちらにせよ下着泥棒じゃねーか!」と、おもわず突っ込んでしまった
「うwけwるwww」とまたマリアが笑う
「殺人の容疑で入れられたんです、ただ僕は全くの無実で冤罪なんです!どうかここから出していただけませんか?」俺は必死にお願いした。
「断る!誰が好き好んで犯罪者を檻から出すんだバカ!」とステインが即答する
「だから犯罪者じゃなくて冤罪なんだよ!」と反論するが
「じゃあな」と二人はそそくさと出ていったので再び座り込み落胆する。
当たり前だ、檻の中の人間がいくら無実だといったところで怪しい人物であることには変わりない、それに大抵の場合、嘘だからだ。嘘だった場合のリスクを考えたらまず囚人を逃がすなんてことはしないだろう。
そしてしばらくの間横になっていると、ブオォーーンッ!!と轟音が鳴り響いた。
驚いて飛び起きると、そこにはステインの姿があった、電動のこぎりで鉄格子をぶった切っている。
すさまじい音と火花が散っている。
「なんで?」俺は唖然としていた、てっきり二人はもう上へと行ってしまったと思っていたからだ。
鉄格子が切り取られ、電動のこぎりが床に放り投げられる。
「おい、さっさと行くぞ!地下室は埃っぽくって好きじゃねーんだよ」やれやれという感じでステインが言う。
「あの・・いいんですか?俺のこと疑ってないんですか?」俺は率直な疑問をぶつけた
「俺は心が広いからな!器もでかい、まぁ一応お前の手錠はつけたままになるけどな!」とステインはドヤ顔で言った。
「か・・軽い」と俺はまたしても呆れた
「俺の名はステインだ!お前の名前は?」と彼が手を差し出した
「ジョンです、よろしくお願いします」そういって俺は手を掴む
「・・・痛っ!いててててぇ!何してんの!」俺は悶絶した、ステインが力強い握力で握ってきたからだ
「ジョン、お前の筋肉レベルを測っていたんだ、が、こりゃダメだな、筋肉が不足している!」
「やかましいわ!離せよ!」謎のダメ出しをくらい、すっかり俺はツッコミ役になってしまった。しかし再び外に出られた喜びは大きかった。
外ではステインの彼女のマリアが待っていた、外は朝方の時間帯で、心地よい天気だった。
「目が潤んでるじゃんwシャバの空気はどう?」とマリアが話しかけてきた
「最高です・・!」俺は素直な気持ちを言葉にし、早くこの二人と別れるために会釈をしてそそくさと歩いていこうとした、その時、ガシャン!と音がした。
ハッ!と視線を首に移すと首輪が付いている。首輪は鎖になっていて頑丈だ。
「お前、今日から俺達のペットだから、よろしくなジョン」とステインがニヤニヤした表情でいう。
そして外に出られた喜びから涙目になっていた俺の目が一瞬にして濁った。