運命の赤い糸
お使いのため、東にあるという塗り薬の家へ向かって、しばらく草原に囲まれた夜道を歩いていくと、ふとエミリーが言った。
「ねぇ、ジョン、ジョンは赤白黒の中で何色が好き?」エミリーの綺麗な目に見とれながら俺は答えた。
「う~ん・・その中なら赤色かな、情熱って感じがしてやる気が出てくる色だから」
俺は真っ先に頭に浮かんだ赤色を選んだが、正直何色でもよかった気がした。
「私も赤!!!やったー!!同じ!!」とエミリーははしゃいだ。
「そんなに喜ぶことかー?」俺は呆れて質問する。
「だって!だって!運命の赤い糸の色だよ!私たちは運命で繋がってるんだよ!!」
「運命の赤い糸ねぇでもエミリーに繋がってる糸は直ぐに絡まっちゃうんじゃないか?」そういって俺が少し笑うとエミリーもすかさず
「口開けたまま真顔でずっと歩いてたジョンに言われたくないねーだ!」とエミリーがアッカンベをして笑って先を走って行った
「それは俺の黒歴史!!」と顔が熱くなりエミリーを追いかける。
そうこうしている内に目的地の家についた。家の隣には水車があり、奥には断崖絶壁の崖がある。
家には背の低いおばあちゃんがいた。エミリーとすぐに打ち解け、一緒に食事をした。エミリーはいつも明るく、周りにいる人を笑顔にしてくれる。まるで俺の太陽みたいな存在だ、エミリーとならこの長い旅も辛くはないだろう。そう思う。
そして目的の塗り薬をもらい、眠りにつく。今夜はいい夢が見れそうだ。
ガタガタ!っと物音が聞こえた気がした。少しだけ目を開けた。だけどすぐに音が止んだため、おれは気にも留めずそのまま眠りについた。
そして朝になり、下に降りると人の気配が全くしない。二人共まだ寝ているのかなと思いしばらく待ったが、一向に降りてこない。仕方がないのでエミリーが寝ていた部屋に入ってみると、そこはもぬけの殻でエミリーの姿はなかった。鼓動が高鳴る。急いで全ての部屋を確認したがどこにも二人の姿はなかった。
「エミリー!からかってるのかー?」そう叫んでも俺の声は消えていくだけ。
一時間、辺りをくまなく探したが何も手掛かりは見つからなかった。
「きっともう街に戻ったんだろう、そうに違いない・・・・」そう自分に言い聞かせ、街に戻ることにした。テーブルの上にポツンと置かれた塗り薬を持って。