作家のおしごと
ぼくはSF作家のところに取材に行った。
「SF作家なんて、自分が思いついたことをそのまま書いていればいいんじゃないんですか?」ぼくは質問した。
「だれがそんなことをいうのですか」そう言って、彼は大量のFAXの束を指さした。「毎日30本は学術論文を読みます。たとえばこれ、これは超光速航法の不可能性を証明したものです。こっちは弱いエネルギー条件の破れが近似的にエントロピー増大の法則と似た特性を持っていることからタイムマシンの実現可能性に疑問を投げかけるもの。これが透明人間の不可能性をコテンパンに論証したものです。」
「もうやめてください!」ぼくは、泣きながら逃げ帰った。