第四章 邪神退治〈15〉
酔笑さんは空高く舞い上がり七支刀の斬撃をかわすと〈勾玉籠目神法陣〉を飛び越えてむこうがわへ着地した。
「イレンカさん!?」
「イレンカどの!?」
「イレンカちゃん!?」
突如、酔笑さんへ斬りつけたイレンカさんの暴挙にぼくらは仰天した。
しかし、イレンカさんはぼくらの言葉に耳も貸さず、酔笑さんを追って〈勾玉籠目神法陣〉を飛びこえた。
ぼくらもあわてて本堂を飛びだし、ふたりのあとを追う。
ぼくらがイレンカさんの背中へ追いつくと、寺の門をうしろに立つ酔笑さんがすこし首をかしげてイレンカさんへたずねた。
「……いつから気づいてございましたじゃ?」
「宗重どのの屋敷を調べなおしたあとでうたがったぞよ。結界の〈やっこさん〉が手でやぶり捨てられた形跡があったでの」
「……?」
「ぬかったの、酔笑どの。屋敷を襲撃した有翼の黒蛇に手はなかったぞよ。喰いちぎる、燃やす、尾でつらぬくなど〈やっこさん〉をこわす方法はいろいろあったはずじゃが、手で引き裂くと云う選択肢はない」
「……イレンカどの。わが屋敷の結界をやぶり、有翼の黒蛇をひき入れたのは酔笑どのともうすか!?」
突然のことにとまどう宗重さんへイレンカさんがこたえた。
「すこしちがうぞよ。有翼の黒蛇を解き放ったのちに、戦闘のどさくさにまぎれてこっそり屋敷の結界をやぶりすてたのじゃ」
「さすがはイレンカどの。慧眼じゃ」
「酔笑どの!?」
「わらわが単独調査へおもむきしとき、わらわについてくると云ったのも、ひとりになったわらわを亡き者とする魂胆じゃったな?」
酔笑さんはこたえるかわりに口元をゆがめて笑った。
「わらわに同行を断られたわぬしは、みなの隙をついて、もっともか弱きキヤイキナスさまを襲わせたぞよ」
「そんな……、どうやって!?」
つむぎの疑問にイレンカさんがこたえた。
「邪神クンネセレマクは酔笑どののなかにひそんでおる。守人神をかくれみのにしておったから、わらわたちは邪神クンネセレマクや有翼の黒蛇の気配に気づかなかったぞよ」
邪神クンネセレマクは守人神たちと一緒にさいしょから結界のなかにいたというのか?
さっき、酔笑さんが寺の外にいたのは、白蛇神キヤイキナスさまのそばにいると、自分のなかから〈勾玉籠目神法陣〉で霊魄の吸い上げられていることがバレてしまうかもしれなかったからであるらしい。
ここまで話をきいていたぼくは最悪の可能性におもいいたった。
「……それじゃ、邪神クンネセレマクにつむぎの霊魄を吸わせて殺したのも〈さかさ五芒〉のお膳立てをしたのも酔笑さんなんですか!?」
ぼくの言葉に傷ついたような表情をかいま見せた酔笑さんがあいまいに首をふった。
「酔笑さん!?」
つむぎの問いかけにイレンカさんもうなづいた。
「そこぞよ、酔笑どの。カラクリは読めたが動機が読めぬ。なぜじゃ? なにゆえこのようなマネをいたした?」
「酔笑どの! 儂らはここ数百年、守人神として仲ようつとめてきたではないか!? 儂らになにか落ち度があったと云うのか!?」




