第三章 守人神たち〈18〉
「そう云えば、未来の世界からやってきた蒼い猫型耳なし寸胴2頭身ロボットは初期設定だと原子力で動いていたことになっていたそうですじゃ」
「なんと! 街中でヘタに故障でもした日には、周囲を放射能汚染してしまうかもしれんと云うことじゃな!? 偉大なる藤子センセイはなんと云うキケンなものを世に放たれてしまったことか!」
「心配めさるな宗重どの。今その設定はなかったことになっておる。それに万が一の時は4次元ポケットがはずれるでの、その中へ放りこんでしまえばよいのですじゃ」
「しかし、それでは根本的な解決にはなっておらぬぞ」
「どこでもドアで宇宙へ捨てるとかはどうですじゃ?」
「それは妙案じゃ!」
はじめのうちはもう少しマトモな会話をしていたはずなのだが、いつの間にか国民的幼年マンガの話題へと脱線したふたりの男性守人神がしょうもない結論に呵々大笑した。
しかし、そんなアホな会話には耳も貸さず、歩きながら沈思黙考していたイレンカさんが足をとめた。
ちなみに、イレンカさんは半そでにミニスカート丈の着物のような衣装の上から、ひざ下まであるざっくりとした冠頭衣をまとって赤い腰帯でむすんでいた。
背中へまわした幅広の鞘には七支刀がおさめられていた。鞘をかつぐための皮ヒモが胸の谷間を交差し、円錐形の見事なシルエットを強調している。
頭には金のティアラ、首には勾玉と小さな円鏡のついたネックレスをつけ、手首足首には金のブレスレットやアンクレットが光る。弥生時代の巫女としての正装であるらしい(生地がシルクであることを除けば)。
しかし、足元はサンダル仕様のジョギングシューズだった。かかとのクッションがブ厚くて足への負担が少なく走りやすそうだ。
「わぬしら、すまぬが先へいってくれぞよ。ちょっと調べたいことがあるぞよ」
「……しからば、それがしもお供いたそうか?」
心配する酔笑さんにイレンカさんが首をふった。
「なに、わらわひとりで大丈夫じゃ。わぬしらはキヤイキナスさまとトシくんの護衛を頼む」
「わかりもうした」
「猫丸!」
イレンカさんが宙へ向かって叫ぶと、遠くから白くて小さなかたまりが猛スピードでやってきた。猫又の式神・猫丸である。
「にゃんですかにゃん?」
「調べたいところがあるぞよ。のせてたも」
そう云ってイレンカさんが猫丸の背中へぽんと軽く手を触れると、今度は猫丸が大きくなった。もっとも、犬丸ほど大きくはない。猫丸あらためライオン丸と云ったところだ。……特撮ヒーローものの話ではなく。
イレンカさんが猫丸へまたがると、猫丸が矢のように走り去った。
ぼくらを包囲している〈奴さん〉のしめ縄結界から飛びだすと、あたかもコピペされたかのような〈奴さん〉のしめ縄結界その2がイレンカさんと猫丸に追従した。
とりあえず、邪神クンネセレマクに察知されることはなさそうだ。




