表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/65

第三章 守人神たち〈16〉

挿絵(By みてみん)


「つむぎちゃん、屋敷にトラップをしかけてほしいぞよ」


「……わかった」


 ()ねた瞳でぼくをチラ見したつむぎが左手首の針刺し(ピンクッション)から緑色の糸のついた細い針をぬきだした。


 その手をさっとふりはらうと、どう云うわけかぼくの身体が緑色のヒモで簀巻(すま)きにされ、近くに生えていた松の木へミノムシよろしくつり下げられた。


「一体なんのマネだ、つむぎ?」


「トシくんがイレンカちゃんとイチャイチャしてると気が散るんだよ」


 やつあたりもよいところだと辟易(へきえき)したが、ぐるぐる巻きにされたこの状況では、まんま手も足もでない。ほかの守人神(もりひとがみ)たちも、


色難(しきなん)去ってまた一難ですじゃな」


 とか、


「色男はつらいのお、少年」


 とか、


「これはこれでかわいいぞよ。このストラップほしいぞよ」


 とか、


(あらあら大変)


 などと、無責任なことを云いあいながら、ぼくの姿をながめて笑っていた。助けてくれるつもりはないらしい。


 おおらかと云えば聞こえはよいが、どうにも守人神(もりひとがみ)たちは緊張感に欠けている気がする。


「トスプ・ラムハウケ・シタイキ・ロシヌ・セッ!」


 つむぎが針刺し(ピンクッション)から白い糸のついた針を2本たばさんでふるうと、巨大化した針が宙を舞い、屋敷のぐるりに檻のような刺繍(ししゅう)を縫い描いていった。


 屋敷をめぐる柵の上には、マンガみたいな黒くて丸い爆弾が山ほどぶら下がっていた。邪神クンネセレマクが屋敷へ足をふみ入れると、上のフタが閉まって爆弾が盛大に爆発する仕組みであるらしい。


 つむぎの刺繍(ししゅう)針がトラップを縫いあげると、描かれた刺繍(ししゅう)が透明化した。いつの間にか2本の針がつむぎの指の間におさまっていた。


「やんややんや」


「おみごとにござる」


「さすがはわらわの妹だけあるぞよ」


(まだ守人神(もりひとがみ)として日もあさいのになんとすばらしい)


「なんもなんも。ブイッ!」


 つむぎが守人神(もりひとがみ)たちの賛辞(さんじ)にエヘンとたいらな胸をはり、顔の前で横向きのピースサインをかざしてこたえた。


「……いばってないで、とっとと下ろしてくれ」


 手足の自由をうばわれて松の木へつり下げられたままのぼくがひかえ目にお願いしたのだが、


「おやおや、トシくん一体そんなところでなにをしているのかな?」


 みんなに()められてゴキゲンなつむぎは、ぼくの言葉をまるっと無視してわざとらしい小芝居をみせた。


「すなおにすごかった。だから下ろしてください、つむぎさん」


「ん~、あんまし心がこもっていないんだよ? でも、ま、いっか。つむぎは心がユーラシア大陸のようにひろいから、このへんで許してあげるんだよ」


 ユーラシア大陸のように心がひろく、モンゴル大平原のように高低差のない小さな胸の少女から恩赦(おんしゃ)がでた。


 身体に巻きついていた緑色のヒモがシュルシュルとほどけて消えて、ぼくは地面に尻餅をついた。理不尽な呪縛から解き放たれたぼくを尻目に、守人神(もりひとがみ)たちが鳩首(きゅうしゅ)してつぎの行動を確認した。


「ここで一句。〈それではと、拠点さだめん、いずくにか〉さて。では拠点をどこへ移しますかな?」


「先の話にもでた針八幡宮か瑞巌寺(ずいがんじ)でござろう。そこいらの民家ではキヤイキナスさまには手狭(てぜま)じゃからな」


「針八幡宮は? あそこは2000年前イレンカちゃんとつむぎの住んでたパワースポットだよ?」


「いやさ、つむぎちゃん。刺繍(ししゅう)地図の結界にはパワースポットとかないぞよ。それに針八幡宮は丘の上じゃから、籠城戦以外には不向きな地形ぞよ」


「すると、ここは瑞巌寺(ずいがんじ)でござるか?」


「そうじゃな。たいらかな場所に建っておるし、ここからじゃと針八幡宮よりちかい」


「よし、決まりぞよ」


 イレンカさんが手打ちして話をおえた。守人神(もりひとがみ)たちが移動の準備にとりかかる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ